和ごころシンフォニー

森野ゆら

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8章

じいちゃんの宝はどこに?

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「やぁ。おつかれさま」

 片付けも終わりに近づいた頃、わたしと桜宮さんのそばにひょいと現れたのは、ボサボサ頭の男の人。

「優礼さん!」

 呼ぶと、優礼さんは長い前髪の下でニヤッと笑った。

「優礼さんの書、すごく好評でしたよ!」

「……ありがと」

 優礼さんはガリガリと頭をかいて、ソワソワしてる。
 あれ? もしかして照れてるのかな。
 もう看板はおろしちゃったけど、本当に素敵な書だったもんね。
 優礼さんのあの字が成功を引き寄せてくれた、そんな感じがする。

「あー、優礼さんやん!」

 ミドリくんと月都くん、それに早玖もかけよってきた。
 優礼さんは、あらためてわたしたちを見てつぶやいた。

「文化祭よかったよ。演奏もよかった。……だから伝えにきた」

 伝えにきたって……。も、もしかして。じいちゃんの宝のありかの……

「ヒント。知りたかったんだろ?」

 優礼さんが一枚の紙をわたしに手渡してきた。
 紙を開けると、流れるような字がそこにあった。

(律の調べ 風にのって遠くまで)

「これ、じいちゃんの字だ」

「うん。留五郎さんの道具入れに入ってたんだけどね。この書が宝の地図だって留五郎さんが言ってたことがあった。だからもしかしたら」

「りつのしらべって、何やろう?」

 ミドリくんが言うと、桜宮さんがうーんと首を傾けた。

「それ、たぶん、『りち』って読むと思います。たしか、秋の季語だったような。秋らしい趣のことでしたっけ。それに、律は音楽の調子のことだったと思います」

「調子かぁ。箏にもあるよ。平調子とか楽調子とか」

「うーん。何のこっちゃわからへんな。地図でも書いてくれてたんかと思ったけど」

「分かる人には、分かるようにしてるとか?」

 月都くんが言うと、「余計によう分からんな」とミドリくんが頭をかかえた。
 うーん。秋らしい……。風にのって遠くまでいくもの? なんだろう?

「分かる人には……か」

 早玖は天井をぼんやり見上げた後、わたしの方を向いた。

「るり、留五郎さんがよく言ってたこと、思い出さないか?」

「よく言ってた? 口癖とか? そんなのあったっけ?」

「いや。留五郎さんがよく言ってたじゃないか。『これは、風にのって遠くまでいく』って」

「あ……それって、ケヤキの木の葉っぱ?」

 そうだ。思い出した。
 丘で三人で演奏した時、よくケヤキの葉っぱを拾って遊んでたんだ。
 種がついたケヤキの葉を探すのが楽しくて、見つけたら喜んでたっけ。
 その時にいつも言ってたんだ。

「種がついてる葉っぱは枝つきじゃろ? 風にのって種を遠くまで飛ばしやすくするためじゃ。ケヤキのうまい戦略じゃね」って。
 ハハハハッと笑うじいちゃんの声まで思い出した。

「ってことは、丘にあるケヤキの木のこと?」

「おおっ、そのケヤキの木の下に何か埋めとるとか?」

 ミドリくんが声のトーンと張り上げる。

「よし。片付けを終わらせて、丘まで行こう」

 早玖が言うと、みんながうなずいた。
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