スパイラル・ワープ!

森野ゆら

文字の大きさ
1 / 46
1章

1 過保護な幼なじみ

しおりを挟む
「ひなり、あぶないっ」

 紫央しおちゃんの声が聞こえた瞬間、体がぐらりと前のめりになった。
 思わず手放してしまったホウキが宙に舞う。
 目の前はビオトープ。
 やばい。
 このままじゃ、メダカが泳いでる中にジャブン! だよ。
 目をつむった瞬間、ぐいっと腕を引っ張られた。
 重心が後ろに傾いて、体がビオトープから離れていく。
 トン、と背中に誰かがぶつかった。

「ひー。危なかった。ありがと……げっ!」

 助けてくれた救世主に、お礼を言おうとして顔が固まった。
 私の腕をつかんでいたのは、クラスメイトで幼なじみの松村瑞希まつむらみずき
 瑞希は切れ長の目を細め、あきれたように私を見つめてる。

「『げっ』ってなんだよ。せっかく助けてやったのに」

「……別に助けてなんて頼んでないけど」

「あ、そう。悪かったな」

 瑞希は私の腕をパッと離して、フキゲンそうに行ってしまった。

「大丈夫? ひなり。もー。心臓が縮こまったよ。はい、これ」

 ホウキを渡してくれたのは、クラスメイトの紫央ちゃん。
 中庭の掃除中……だったけど、ダンスしながらホウキではいてたら、足をひっかけちゃって、ビオトープにダイブするところだった。
 いや~。もう少しでメダカとカエルたちに迷惑をかけるところだったよ。
 危ない、危ない。

「ほんっと、ひなりは危なっかしいね~。それに……」

 紫央ちゃんは遠くなる瑞希の背中を見ながら、ニヤッと笑った。

「相変わらず、瑞希くんはひなりの王子様だね~」

「は⁈ 王子様? やめてよっ」

 ぞぞっとして自分を抱き込むと、紫央ちゃんが一つにまとめた髪をゆらしながらカラカラ笑った。

「これで何回目だろうねぇ。瑞希くんがひなりを助けるの。この前の鬼ごっこで、勢い余って壁に激突しそうなひなりを瑞希くんが飛び込んで止めたし、給食の時は、おかずを落としそうになったひなりを……」

「わーっ、やめてやめて!」

 両手をブンブン振って話を止めようとしたら、紫央ちゃんが私の額をツンと押した。

「大事にされてるね」

「迷惑だよ。幼なじみだからって。私、中学一年生だよ? 小さな子じゃないんだから」

 ムスリとして額をさすると、紫央ちゃんが笑う。
 別に大事にされてるとか、そんなんじゃない。
 たぶん、あのことがあってから、瑞希は私に対して心配性になってるだけ。
 ビオトープにいるアメンボが水面に波紋を作る。
 その何重もの円を見ていたら、あらためて思い出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

パンダ豚 くろ助の冒険

Eisei 5
児童書・童話
 僕が生まれたのは、雪の降る、ある寒い晩のことだった…。  僕の名前はくろ助。黒六白(くろろっぱく)の黒豚です。  富士の頂を遠くに眺め見ることのできる、盆地の高台にある農場で、ある雪の降る寒い晩、僕は生まれました。  黒い体に、鼻の先と四本の足の先、そしてくるっと丸まったしっぽの先が白い毛で覆われています。  だから ”黒六白 ” のパンダぶたと呼ばれます。  さあ、僕のお母さんの陣痛が始まりました。いよいよ、僕の生まれる時が近づいてきたみたいです…。  「パンダぶた くろ助」の成長の物語です。  宜しければ、どうぞ。  ★なお、種雄豚としてのくろ助の成長の物語ですので、後半部分に、豚肉の生産のための豚の繁殖行為として、性的な表現・記述があります。ご注意ください。  ★この作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」、「エブリスタ」でも公開しております。

雪の降る山荘で

主道 学
児童書・童話
正体は秘密です。 表紙画像はフリー素材をお借りしました。 ぱくたそ様。素敵な表紙をありがとうございました。

その付喪神、鑑定します!

陽炎氷柱
児童書・童話
【第1回きずな児童書大賞、優秀賞受賞】 『彼女の”みる目”に間違いはない』 七瀬雪乃は、骨董品が大好きな女の子。でも、生まれたときから”物”に宿る付喪神の存在を見ることができたせいで、小学校ではいじめられていた。付喪神は大好きだけど、普通の友達も欲しい雪乃は遠い私立中学校に入ることに。 今度こそ普通に生活をしようと決めたのに、入学目前でトラブルに巻き込まれて”力”を使ってしまった。しかもよりによって助けた男の子たちが御曹司で学校の有名人! 普通の生活を送りたい雪乃はこれ以上関わりたくなかったのに、彼らに学校で呼び出されてしまう。 「俺たちが信頼できるのは君しかいない」って、私の”力”で大切な物を探すの!?

はるちゃんとおばあちゃんのえほん

いぬぬっこ
絵本
はるやすみ。 はるちゃんは、おばあちゃんちにあそびにいきました。 けれど、おばあちゃんはおひるごはんをつくっていて、はるちゃんとあそんでくれません。 ーーつまんない。 そうだ! おばあちゃんちをたんけんしよう! はるちゃんは、おふろば、おトイレ、げんかんと、たんけんします。 そして、おばあちゃんのへやにはいったときーーしくしくとなきごえがきこえてきました。 「ないてるのは、だあれ?」 「ここだよ。 ぼく、おばあちゃんのかきかけのえほん。 おばあちゃん、とちゅうでかくのをやめてしまったの。 ぼく、かなしいの」 しくしくなく、えほんをみて、かわいそうにおもったはるちゃんはきめました。 「よーし! はるちゃんが、かんせいさせてあげる!」 これは、はるちゃんとおばあちゃんとえほんのおはなし。

お月さまのポケット

ほしみ
絵本
静かな夜。 小さなうさぎのミーミは、まんまるお月さまに出会いました。 お月さまのおなかには、ふしぎなポケット。 そこには、だれかの大切な「なにか」が、やさしくしまわれています。 お月さまとミーミの、小さくてあたたかな夜のお話。 ※単体のお話として完結しています ※連載中の投稿作品「人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―」の作中作の絵本

魔法使いたちへ

柏木みのり
児童書・童話
 十四歳の由は、毎日のように、魔法使いとそうでない人々がごく普通に一緒に暮らす隣の世界を姉の結花と伯母の雅代と共に訪れ、同じく十四歳の親友ジャンと魔法化学の実験に没頭する日々を送っていた。ある晩、秘密の実験中に事故が起き、由の目の前で光の炸裂と共にジャンは忽然と消え去った。  ジャンに何が起きたのか。再会は叶うのか。  「9日間」「はるのものがたり」「春の音が聴こえる」と関連した物語。 (also @なろう)

夜明けの一歩

辻堂安古市
絵本
「弱さを噛み砕き、一歩を刻もう。今の私が、私自身の誇りになるために。」

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

処理中です...