スパイラル・ワープ!

森野ゆら

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1章

3 むつ子さんのお家

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 学校からの帰り道。木陰も建物の陰もない歩道は、歩くのも苦行だ。

「「あ~つ~い~」」

 紫央ちゃんと一緒に照りつける太陽に文句を言って、汗ばむ額にパタパタと手で仰ぐ。

「もうっ。まだ四月の中旬だよ。この前まで寒かったのに! 春を通り越してるよ。春でこんなに暑かったら夏は溶けちゃうよ!」

「ひなり、暑がりだもんねぇ。そうそう。ひなりはもう部活決めた?」

「うーん。まだ。紫央ちゃんは?」

「私は美術部かなぁ」

「そっか。紫央ちゃん、絵を描くの大好きだもんね」

 入学してから一週間。中学校生活はあわただしくて、あっという間に過ぎていく。
 授業が始まって宿題もしっかり出始めて、小学校より忙しい。
 でも、部活が始まったら、今よりもっと忙しくなっちゃうのかな。
 はあっと大きなため息をついたら、紫央ちゃんがクスッと笑った。

「ひなりもどこに入部するか、そろそろ考えた方がいいよ。それとさぁ。算数……じゃなかった。数学の問題集ってさ……」

 明日の授業のこと、友達のこと、先生のこと、紫央ちゃんと話しながら帰ってたら、すぐに四つ角まで来ちゃった。
 私の家はすぐそこ。
 もっと話してたいけど、ここで紫央ちゃんとはバイバイだ。

「あ、むつ子さん家の花壇、きれいになってる」

 紫央ちゃんが目を向けたのは、角に建ってる古い木造のお家。
ポピーの花がゆれてる軒先の花壇は、今朝まで雑草が生えてたのに、きれいになってる。

「ほんとだ。娘さんが来たのかなぁ」

 むつ子さんは、この家に住んでたおばあちゃん。
 一年前に亡くなって、今、この家は空き家。
 だけど、時々、娘さんが来て家の中を掃除したり、近所の人が庭をきれいにしてる。
 私も気がついたら、庭の雑草を取ったり、落ち葉を集めたりしてるんだ。
 むつ子さんがいなくなっても、みんな、この家を大切にしてる。
 そのうち、誰かちがう人が住むようになるかもしれないけど……
 それまでは「むつ子さんの家」をとどめておきたい気がするんだ。
 そして、むつ子さん家の向かい側。「園原」って白い表札があるのが私の家。
 そのとなり、黒と白の現代風でおしゃれな家が……瑞希の家。
 ご近所ってこともあって、私と瑞希は小さな頃からむつ子さんに遊んでもらってた。
 小学校でイヤなことがあったら、いつもむつ子さんに相談して、宿題の分からないところも教えてもらって。
 むつ子さんが焼いたケーキをごちそうになったり、庭の花を教えてもらったり……。
 私も瑞希も大好きなおばあちゃんだった。

「むつ子さんがいなくなって、もう一年かぁ」

 ボソリとつぶやいたらちょうど風が吹いて、むつ子さん家の庭木がサワサワ揺れた。
 去年の四月。むつ子さんは天国に行っちゃった。
 すっごくショックで悲しかったけど、そんな時に限って、瑞希と大ゲンカしたんだ。
 
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