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1章
4 瑞希とのカクシツ
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一年前のあの日。
むつ子さんが体調を崩して入院したって聞いた私と瑞希は、お見舞いに行こうって約束した。
私のお母さんが車で連れて行ってくれる予定だったけど、約束した日に私は熱を出して寝込んでしまった。
「熱が下がって元気になったら、瑞希くんと一緒にお見舞いに行けばいいじゃない」
お母さんにそうなだめられて、しぶしぶ寝てたんだけど……
その翌日、むつ子さんが天国に行ってしまった。
熱が下がって縁側で座ってたら、瑞希が勢いよく庭の柵を乗り越えてきた。
私の前に来た瑞希は、真っ赤な顔で突然怒り出した。
「きのう、お見舞いに行ってたら、むつ子さんに会えたのに……なんでこんな時に限って熱出したんだよ」
いつもの瑞希らしくない荒ぶった声。
にらみつけてくる瑞希に一瞬ひるんだけど、私はぎゅっとひざのズボンを握りしめた。
「わ、私だって好きで熱出したわけじゃないよ!」
「でも、ひなり、前の日に紫央と遊びに行ってたじゃないか! 風邪気味なら遊びにいくのやめなさいっておばさんに言われてたのに」
「それは……そうだけど……熱が出るなんて思わなかったし! 私だってむつ子さんに会いたかったよ。なのに、どうしてそんなこと言うのよ!」
涙声で言い返すと、瑞希がハッと我に返った。
「……ごめん」
あわてて瑞希が謝ってくれたけど、あの時私は……絶対許すもんかって思った。
それから、一か月。瑞希としゃべらなかったっけ。
むつ子さんが天国から心配してるよって、お母さんに言われて、無理やり仲直りしたけど。
私はまだ覚えてるからね。あの時、瑞希に言われたこと!
「……―い。おーい、ひなりさーん。また回想中ですか~? 戻ってきて~」
その声にハッとすると、半目の紫央ちゃんが私の顔の前で手をパタパタ振っていた。
「ご、ごめん。つい、一年前のこと思い出しちゃって」
謝ると、紫央ちゃんも思い出したのか、はーっと息をはいた。
「あの時ね。ひなりと瑞希くんが大ゲンカしちゃって大変だったよねぇ」
「だって、しょうがないじゃん。瑞希がひどいこと言ったんだから」
「まぁ、瑞希くんの気持ちも分からなくないよ。でも、ひなりに対してちょっと不器用なところがあるよねぇ」
紫央ちゃんがあごに手をあてて、ふふっと笑う。
「もうっ。瑞希の話はいいってば!」
「あはは。ごめん。じゃあね、ひなり。また明日!」
「うん。バイバイ」
ニヤニヤしながら、手を振って歩いてく紫央ちゃん。
……もう。紫央ちゃんは何かと瑞希の話に絡めたがるんだから。
紫央ちゃんを見送ってから、ふと、花壇に咲いてるオレンジの花に目を留めた。
「……マリーゴールド……だっけ」
花が大好きなむつ子さんは、花壇の手入れをしながら、いろんな名前を教えてくれたっけ。
むつ子さんは病院の中庭で倒れてた時、桜の花びらをにぎってたらしい。
病院の敷地内には桜の木なんてないのに、むつ子さんは桜の花びらをどこで拾ったんだろうって、みんな不思議そうに首をかしげてた。
だけど、私は思ったんだ。花の好きなむつ子さんらしいなって。
「むつ子さーん、また春が来たね。私、中学生になったよ。今年も桜いっぱい咲いたよ~」
家の方に呼びかけるけど、しんとしたまま。
当たり前だけど、玄関のドアは開くこともないし、庭の奥からむつ子さんが出てくることもない。
(やっぱり、一年経ってもまださみしいなぁ)
胸の奥がきゅぅとつまって、くちびるを引き結んだ。
むつ子さんが体調を崩して入院したって聞いた私と瑞希は、お見舞いに行こうって約束した。
私のお母さんが車で連れて行ってくれる予定だったけど、約束した日に私は熱を出して寝込んでしまった。
「熱が下がって元気になったら、瑞希くんと一緒にお見舞いに行けばいいじゃない」
お母さんにそうなだめられて、しぶしぶ寝てたんだけど……
その翌日、むつ子さんが天国に行ってしまった。
熱が下がって縁側で座ってたら、瑞希が勢いよく庭の柵を乗り越えてきた。
私の前に来た瑞希は、真っ赤な顔で突然怒り出した。
「きのう、お見舞いに行ってたら、むつ子さんに会えたのに……なんでこんな時に限って熱出したんだよ」
いつもの瑞希らしくない荒ぶった声。
にらみつけてくる瑞希に一瞬ひるんだけど、私はぎゅっとひざのズボンを握りしめた。
「わ、私だって好きで熱出したわけじゃないよ!」
「でも、ひなり、前の日に紫央と遊びに行ってたじゃないか! 風邪気味なら遊びにいくのやめなさいっておばさんに言われてたのに」
「それは……そうだけど……熱が出るなんて思わなかったし! 私だってむつ子さんに会いたかったよ。なのに、どうしてそんなこと言うのよ!」
涙声で言い返すと、瑞希がハッと我に返った。
「……ごめん」
あわてて瑞希が謝ってくれたけど、あの時私は……絶対許すもんかって思った。
それから、一か月。瑞希としゃべらなかったっけ。
むつ子さんが天国から心配してるよって、お母さんに言われて、無理やり仲直りしたけど。
私はまだ覚えてるからね。あの時、瑞希に言われたこと!
「……―い。おーい、ひなりさーん。また回想中ですか~? 戻ってきて~」
その声にハッとすると、半目の紫央ちゃんが私の顔の前で手をパタパタ振っていた。
「ご、ごめん。つい、一年前のこと思い出しちゃって」
謝ると、紫央ちゃんも思い出したのか、はーっと息をはいた。
「あの時ね。ひなりと瑞希くんが大ゲンカしちゃって大変だったよねぇ」
「だって、しょうがないじゃん。瑞希がひどいこと言ったんだから」
「まぁ、瑞希くんの気持ちも分からなくないよ。でも、ひなりに対してちょっと不器用なところがあるよねぇ」
紫央ちゃんがあごに手をあてて、ふふっと笑う。
「もうっ。瑞希の話はいいってば!」
「あはは。ごめん。じゃあね、ひなり。また明日!」
「うん。バイバイ」
ニヤニヤしながら、手を振って歩いてく紫央ちゃん。
……もう。紫央ちゃんは何かと瑞希の話に絡めたがるんだから。
紫央ちゃんを見送ってから、ふと、花壇に咲いてるオレンジの花に目を留めた。
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「むつ子さーん、また春が来たね。私、中学生になったよ。今年も桜いっぱい咲いたよ~」
家の方に呼びかけるけど、しんとしたまま。
当たり前だけど、玄関のドアは開くこともないし、庭の奥からむつ子さんが出てくることもない。
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胸の奥がきゅぅとつまって、くちびるを引き結んだ。
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