スパイラル・ワープ!

森野ゆら

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5章

4 スパイラルに消えたのは

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「……向こうからだ」

 音に全部の集中力を使って、かけだす。
 鳴り響いてくるのは、ぶどう園の奥だ。

「えいっ」

 柵を飛び越えて、ゆるやかな傾斜を走る。
 奥へ奥へと進むうちに、うっそうと雑草が生えてる山際まで来た。

「あっ、あれかな?」

 マンホールくらいの大きさの渦が、切り立った山肌に貼りつくようにまわってる。
 そっと近づいて見てみると、確かにスパライルだ。
 青や紫の光を放っているその部分だけ、この世のものとは思えないような異質な感じ。
 まさか、本当にあるなんて。
 やっぱり、私の耳はスパイラルを感知できるんだ!

「よしっ。リゼに報告しなきゃ!」

 ポシェットに手を入れて通信機を出そうとしたその時、
 ぱらっ。

「あっ!」

 むつ子さんとの写真がひらりと落ちて、タイミング悪くびゅうっと風が吹いた。
 写真がふわりとスパイラルの中へと落ちていく。
 思わず手を伸ばして、写真をキャッチ! ……したけど、

「うわぁっ」

 伸ばした手がぎゅんとスパイラルに吸い込まれた。

(しまった……!)

 体がすごい力で吸い寄せられる。
 ど、どうしよう。
 このままじゃ吸い込まれちゃうよ!
 腕を持ち上げようとするけど、抜けない!
 すごい吸引力の掃除機に吸い込まれるような感じ。
 だらりと変な汗が出てきた時、

「ひなり!」

 声と同時に、後ろから私の上半身に誰かが飛びついてきた。
 この声……瑞希だ!
 なんで瑞希がここに? まさか、また尾行されてた?
 ……っていうか、いつもこういう時、瑞希が現れるような……
 スパイラルから引きはがされた私は、そのまま尻もちをつく。
 その反動で前につんのめった瑞希が、スパイラルの中へ上半身から吸い込まれていく。

「瑞希っ!」

 手を伸ばしたけど、間に合わず、スパイラルは瑞希をのみ込んだ。

「瑞希! 瑞希―っ」

 叫ぶけど、瑞希の姿は渦巻く波にもう見えない。
 どうしよう。瑞希が消えちゃった。
 ……こうなったら、私もスパイラルに飛び込むしかない!
 立ち上がって、スパイラルの前で意を決した時、だんだんスパイラルが薄くなってきた。

「え? ちょっと待って。なんで?」

 渦がどんどん消えていく。まるで幻だったみたいに、ふわっと姿を消していく。

「待って! 消えないで!」

 私の叫びもむなしく、スパイラルは風にかき消されるように見えなくなってしまった。

「うそ……消えた」

 信じられない現実に、私はへたりとその場に座り込む。
 瑞希が吸い込まれちゃって……スパイラルも消えちゃった。
 心臓がバクバク鳴って、冷たい汗が額を流れてくる。
 どうしよう。どうしよう。
 瑞希が……

 ピピピッ

 急にポシェットから音が鳴った。

「あ……通信機……?」

 あわててポシェットから通信機を出して、ボタンを押す。

「ひなり? どうした? さっき連絡くれたか?」

 リゼの声を聞いたとたん、涙がぽろぽろ落ちてきた。

「リゼ、どうしよう。瑞希が。瑞希が……」
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