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第十一話、すりあう

(五)※

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 どんな感じなのかな、と私の手の中にある国芳さんの熱。
 足を投げ出すように座ってくれているので私はその間に座らせてもらって……男性はどういったところに触れたら感じてくれるのか、名実ともに“手探り”で優しく扱えばだんだんと硬く、芯を持ち始める。

 それでも今夜の国芳さんの熱は人間の男性と変わらない見た目をしていたのでまだ、心に余裕があるのかもしれない。

 片手をついて身を乗り出し、ちゅ、と国芳さんの首筋を吸えばあらあら、と思ってしまうくらいに手の中の熱が反応する。
 普段だったら受け入れるばかりの私。噛んでも構わないと差し出すように許していた首筋を今夜は私から、と国芳さんにそっと歯を立ててみれば身震いが一つと……ぐ、と私の手首を掴まれた。

 私がされている時、私が同じように国芳さんの手や腕を掴んでもやめてくれないのが大半なので私もそのまま続ける。
 低く喘ぐ男性の声って、と私も国芳さんとこんな事をするなんて思ってもみなかったけれど結構、良いかも知れない。

「んん、ぐ」

 少し強めに噛む。
 段々と国芳さんに直に触れている私の手が濡れて……感じてくれているその証拠に本当にやめてくれ、と言わんばかりに私の手首を掴んでいる指先に力が入って私も骨や関節の構造上、手が開いてしまって熱から手を離してしまった。

 肩で息をしている国芳さんに私はもう一つ、提案をする。
 中に押し入らなくてもこのまま太ももの間で、と。

 本当は伝えるのも、手で直接触れるのだって恥ずかしくてたまらないのを堪えて言葉にする私に三角の耳を横にへたらせて「お前は俺を甘やかし過ぎだ」と言う。

 だって国芳さん、いつも私に優しいから。
 我慢させすぎても、良くないだろうし。

 そう言った事だって、私は国芳さんなら許せるのだとちゃんと伝わっただろうか。愛情を受け入れるばかりでどうやって私から返せるのかを最近、よく考えていた。
 他にも手段はあるだろうけど、今はこのまま――私はあなたを愛したいのだと私の方から唇を寄せる。


 脱がされてしまえばいつもと変わりなく。
 ただ今日はちょっとだけいつもと違う事をしている。

 体と体が繋がる事の無い日。受け入れる私が痛くならないようにしなくていい日だからか……国芳さんは私の胸元を熱心に捏ねていた。
 黙って真剣に、仰向けになっているせいで流れてしまっている胸を脇から掬い上げるように手にしている姿はやっぱり猫さん、と思ってしまう。
 ご機嫌な癖っ毛のしっぽは私の膝を撫でて、耳は時々ぴくりと動く。

 くすぐったさと、時々赤く腫れあがっている先端を吸い、噛んでくる鋭い刺激に身を竦めて……私はなんだかとても幸せだった。

 国芳さんの事が堪らなく愛しくて、涙が滲んでしまう。

 それを悟られないように私の胸元に頭を落としていた国芳さんの三角の耳の先に触れ、優しく摘まんだり撫でたりする。そんな激しさのない淡い戯れが心地よくて、幸せで、胸がいっぱいになる。

 すん、と少し鼻を啜ってしまったら顔を上げた国芳さんと目が合い、涙がひとすじ、流れ落ちて行く。
 あの素敵な花嫁衣装を見た時からどうにも涙腺が弱くなってしまっているのか、国芳さんは驚いた表情をしたけれどすぐに仕方なさそうに笑ってくれて、涙を拭ってくれた。

「すず子」

 そのまま額を撫でてくれる。
 私は感情表現が豊かな三角の耳やしっぽを備えていないけれど――名前を呼んでくれる国芳さんの声はいつでも優しく、その匂いは華やかで……私の心を切なくさせてくれるから応えるようにその手にすりすりと猫の仕草で甘える。


 膝を立てて閉じた足の間にずり、と熱が擦りつけられる。

 いつもは押し入ろうとして少しぐりぐりと探られる事はあっても指先で擦られるだけだった私の気持ち良い所が今夜は沢山、熱い肉質に擦りつけられて私の腰は直ぐに引けてしまった。
 多分これ、お尻の下まで濡れて……と思うくらいに滑りがよく、擦られればそれだけ熱くなって、じんじんと痺れるように感じてしまう。

「ひ、ッ」

 何度も同じ場所を擦られているのに、その度に私はお腹がびくびくするし、眉根を寄せてどうにか果ててしまいそうになる気持ちよさを逃がす。
 国芳さんも未知の行為だったのか、息が荒い。

 何より、ご自身の分身を私に擦りつけるのを目の当たりにしている訳で……いつもだったら見えない熱のその行く末がまざまざと視界に入っているに違いない。

 どうやって、その熱の塊で私を攻めたてていたのかが明るみになっていた。

「んん――ッ!!」

 快楽に、足の先が丸まってしまう。
 何だかもうそのまま入ってしまいそうなくらい、互いに潤んでいるせいで水音をくちゅくちゅと私にも聞こえるくらいに立てながら、国芳さんの吐息はどんどん荒くなっていく。

 いつもと違う行為と、あまりにも滑りのいい部分が恥ずかしくて。
 私もどうにか声を我慢しているけれどさっきから本当はずっと、はしたなくもいきっぱなしと言うか、短く鋭い波に意識が白んできてしまっていた。

 繋がっている時とは違う、入り口にある腫れた浅い気持ちいい所をずっと擦り続けられている。国芳さんも分かって来たのか私の反応に「つらいか」と短く聞いてくれるけれど答える余裕が私にはもうなかった。

「そんな蕩けた顔を……」

 素直でいたいと思うけど、言われてしまうと恥ずかしい。
 いつもそう、好きと恥ずかしいがぐちゃぐちゃになってしまう。

 体は国芳さんが望むまま、向き合うように横になって、擬似的な事を続ける。
 互いに絡ませた足、もたらされる愛情に私が強く身震いをしても中に入れられていない熱は少し物足りなかったのか、もう先に果ててしまった私に気づいていながらもごしごしと擦り付けていた。

 普通にしている時よりもなんだか音も背徳感も増している。

「にゃ、あ、あ」

 強い刺激に跳ねるように体が震えた。

「あ、ぅ――んぐ……ッ!!」

 最後は、まるで食べられてしまいそうな口づけと共に……酸欠により意識が白んで、国芳さんもやっと果ててくれたのだと知る頃には私はぐったりと、動けなくなっていた。

 ただ、浅い所で果ててしまったせいで私の足の間に垂らされたとろみのある白濁は垂れ落ちることなく肌の上に留まっていた。国芳さんは身を引いて拭おうとして――その淫靡さに見開いた目が釘づけになっていたのを私は知っている。

「すず子、すまない」
「もう……あなたはいつも最後には謝ってばかりで」

 私は啼かされてばかりで。
 大丈夫ですよ、と言ってもしょげている。

「やはり暫く控える」
「本当に?」

 見上げて、じっと見つめる私に視線を泳がせている姿すら愛しくて、そしてなんだかおかしくて……私たちは夫婦なんですからあまり我慢しないで、と言葉を投げかければ少し迷ったような、しっぽと耳をぴくぴくとせわしなく動かしながらも頷く人に私は安心して「でもそろそろ拭かないと」と国芳さんの出した物が垂れ落ちそうなのだと伝えた。
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