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最終話
春の東京は今日もくらくらと燃え (4) ※
しおりを挟むそして櫻子と恭次郎は二人きり。
先ほど買い込んだ食糧や物産展の荷物を提げた恭次郎も櫻子の部屋に上がる。
「ね、デパートで大崎君と何を買ってたの?」
「ん?ああ、お前に似合うかと思って……髪、留めるやつとか」
これ、と玄関からすぐの応接間兼仕事部屋を抜けてキッチンがあるプライベートリビングに移動をした恭次郎は荷物の中からお洒落な包みを取り出して櫻子に手渡す。
その中には色とりどりのビジューが填まったヘアクリップと、もう一つは落ち着いた大人の女性向けのデザインが目を惹くバレッタが一つずつ。更にふわふわの可愛らしいデザインの、大崎が選んでくれたと思われるシュシュもあったのだが櫻子は一つだけ、透明の袋に包装されていた指輪を見つける。
「この指輪って」
「ああ、それも俺が……まあ、なんだ……たまには、な」
それは地金もシルバー、誰でも気軽に身に付けられるフリーサイズの物だったがライトピンクのビジューが花の形のように取り付けられていて櫻子は素直にかわいいな、と袋から取り出して手にする。
「はい、お願い」
「は……」
荷物を整理しはじめていた恭次郎に差し出された指輪と彼女の左手。
「い、や……待て、お前それはあくまでも子供だましみたいなモンで」
「でも、私に似合うと思ったから買ってくれたんでしょう?」
「そりゃそうだが、お前にはもっとちゃんとしたモンを……プ、ロポーズも、物の弾みで言っちまったが、そう言うのは」
「今、嵌めてくれないと本気で拗ねるから」
拗ねたら最後、連休中のベッドはずっと別になると脅しをかける櫻子に恭次郎は指輪を手に取り、彼女の左手を支え、持つ。
「くそ……恥ずかしいな、これ」
「私はムラムラしてる」
「お前なあ、やきもきの間違いじゃねえのか」
ふふ、と笑う櫻子は左手薬指に通されてゆく指輪をじっと見つめていた。形として残る物については遠慮をしていたのか、贈られたことが無かった。その指輪は確かにキラキラで、華やかで、可愛くて。ビジネススタイルに必要だからと自分で買って身に着けている貴金属とは違う、恭次郎の心が籠った……。
「ムラムラしてるのは本当よ」
「じゃあこのままヤるか?」
「やだ。お風呂入る。あと泣いたからお腹空いちゃった」
「だろうよ」
左手薬指に通して貰った指輪を眺める櫻子は「ありがと」と恭次郎に礼を伝える。そんな彼女の、少女のようにはにかんで笑っている表情を見た恭次郎は思わず固まってしまった。
すごく……ムラムラ、する。
冗談抜きで本当にこれはヤバいかもしれない、と。
こんな状態のまま夕飯と風呂を済まさなくてはならないと言うのか。櫻子の方は多分、場を和ませてくれたリップサービスだったにせよ自分のこの高まる欲は……本気だ。
何かしていないと本当に勃ってしまう、と恭次郎は風呂掃除をかって出たり夕飯の支度ももちろん、精力的に手伝う。途中で櫻子が疑り深そうな顔をしていたが本人はそれどころではなかった。
「恭次郎、さっきから変」
やっとの思いで夕飯を済ませ、風呂の時間。
それを済ませてしまえばあとはもう、二人で仲良くヤることは決まっていたも同然だったが一応、男としてスジは通さなくてはならない。
「なあ、さくら」
「恭次郎って派手な下着となんにもないシームレスな下着のどっちが好き?」
「は……」
「前からちょっと気になってたんだけど、でもどうせ脱がされちゃうからどっちでも」
「……派手、な方。この前、見たやつ」
「そ。じゃあそうする」
おかしそうに笑っている櫻子が「高いやつだから丁寧に扱ってね」と言う。
風呂に入る支度をし、パウダールームに行ってしまった彼女を立ちすくんだまま見送った恭次郎は眉根を寄せて大きな溜め息……ではなく、深呼吸をする。それはまだ駄目だ、と自分の下半身に集まる愛欲の熱に言い聞かせるように。
・・・
リクエストの通り、ベッドの上の櫻子は派手なレースのランジェリー姿で恭次郎と相対していた。
「ん、ん」
依然としてキスに溺れてしまいそうになる拙い唇を今夜だけは貪るように恭次郎は愛していた。前から櫻子は強く抱くことを許してくれていたが一縷の理性がそれを留めていた。何より、痛い思いはさせたくない。
でも今夜だけは特別、だから。
「気持ち良いか」
「ん……ふふ、そんなの、分かってる癖に」
派手なショーツのレースより下の、面積の広いシルクが櫻子の愛情で滲んでいるのを指先で感じとる恭次郎は少し体をずらして彼女の足の間に陣取ってしまう。
「……ちょ、っとそんなに見、ないで」
「あ?見るもんじゃねえ、ってか?俺のアレ、見た癖に」
そっくりそのまま言葉で返された櫻子はうぐ、と珍しく言い返せずに自分の両手で顔を覆ってしまった。
「あの時もまあよく出たモンだが」
ぬる、と恭次郎の指が濡れているシルクを撫でる。
「今日はもっとやべえかも、な」
「ッ、く……」
「お前と時間が合わなくて、溜まってるんだよ」
「わざとそれ、言って……っあ、んぅ」
「ああそうだ、わざとだよ。それに……」
俺、めちゃくちゃ嬉しいんだよ、と最後はぼそぼそと濁すように言った恭次郎は気恥ずかしさを誤魔化すように彼女が気持ち良くなれる小さな膨らみを見つけて指先でピンと弾く。少々強引に開かせた膝が跳ねたがどうやらまた、櫻子は喘ぐのを躊躇してしまっているらしい。
そうともなれば恭次郎の心の中にある悪戯心がうずうずと湧き、指先は何度も滑りがよくなってしまっているシルクの上を往復する。
次第に彼女の我慢はほどけ、ほだされ。小さく喘ぎだす愛しい人の声を聞いた恭次郎はにんまりと笑う。
「すげえ濡れてる」
「ひ、っあ……もう、や、あ」
「それならイっとくか?」
それもやだ、と未だ両手で顔を覆っている櫻子が首を横に振る。
「い、れ……て」
「は?お前、何言って」
無理だろ、と恭次郎は自分の下半身を下着ごしに確認した。
だってまだ彼女の大切な場所を解していないと言うのに、黒のストレッチの布を押し上げて完全に準備が整ってしまっている自分が無理やりに挿入したら。
「も、欲しい、の……っん、く」
「お前、なんでマジで泣きそうな」
「だって、なん、か……心は、嬉しいのに、ぐちゃぐちゃして」
「ぐちゃぐちゃはこの股だけにしとけよ……ったく、ほら、尻上げられるか」
できない、力が入らない、とぐずり始めた櫻子は身を捩る。
「……んじゃあもう分かった。お前の新しい勝負パンツは俺が買うから、な?」
ごそごそと手短に、スマートにスキンを着けた恭次郎は閉じかかる彼女の両足を割り開く。そしてのし掛かるように自分の体を寄せると指先が濡れてしまうほどに潤みに滲んでしまっているショーツのシルク部分を思い切り横へずらした。
「ひゃ、ッ!!」
「脱げねえなら、こうするしかないだろ?」
痛かったら言えよ、と恭次郎は彼女の太もも裏を片手で押さえ込むと淡い茂みから下の潤みへと自らの熱の先端を擦り、押し付けた。
これでも精一杯、夕飯の前から我慢をしていたのだ。なのに櫻子とくれば前戯も無しに「欲しい」なんて。
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