ヘタレαにつかまりまして

三日月

文字の大きさ
543 / 1,039
21 カナ side 倭人

56

しおりを挟む
ドクドクドクドク・・・

固く瞼を閉じた暗闇の中。
カナに深々突き刺した牙から、溢れるように。
カナを番にしたあの日からの出来事が、目まぐるしく頭の中を駆け抜けていく。

カナの発情フェロモンに酔ったまま、夢中で身体を重ねた時間。
食事をする間さえ惜しくて、手掴みで喰い散らかし。
言葉を無くして、脱水状態になりそうな身体にペットボトルの水をぶちまけて、互いの身体を舐めて喉の乾きを潤したあの時間。

まともな思考を取り戻しても、目の前の番への飢餓が果てしなくて。
いつもどこか触れてないと、不安で叫びそうなくらいに求めてた。

即席麺が出来上がる時間さえ待てなくて、作り直しても切りがないとわかってからは伸びきった麺を苦笑いで二人で食べたりもした。
一緒に風呂に入っても、喋っていても。
また欲しくなって、何度も何度も番を得た喜びを確かめた。

カナを中心に回り出した世界が楽しくて。
周りにどう思われようが関係なくて。
カナにしか興味が無くなっていて。
あの日、自分がフェロモンレイプに合う可能性を予測出来ず。
他のΩの発情フェロモンに抗い、一番大切にしていたカナの記憶を失ってしまった。

でも、今は。
腕の中に、カナを抱き締め。
カナの身体に包み込まれてる。
記憶の奔流を受け止めていた間、こわばっていた身体から。
解き放った熱と同様に、力が抜けていく。
乱れた呼吸を整えながら、無くした全てを取り戻した俺はゆっくりと目を開けた。


「・・・ん、わ・・・」


うわぁぁっ

視界に飛び込んできた、震える小さな頭からうなじへのなだらかであるべきライン。
その惨状に、思わず息をのんだ。
すでに牙は失せ、もとの平らな歯に戻っているけど・・・この傷なら、間違いなく俺の歯も血で染まってる・・・

ひくん、ひくんと。
細かく痙攣してるカナのうなじには、ポッカリ開いた孔が二ヵ所。
犬歯二本が深々突き刺さっていた場所からは、血がタラリと流れていて。
その周囲の歯形は、肉が盛り上がるほど強く跡を残していた。


「あ、ご、ごめんっ、カナ・・・」


俺、何てことをっ
後ろ抱きにして、間近に見てしまった自分が噛んだ跡に我を忘れて。
嫉妬に駆られ、力任せに荒らした身体。

記憶を無くした自分が何をしたかも覚えてる・・・

大切にしたい番なのに。
どっちも俺だと受け止めてくれたカナなのに。

カナに謝りたくて、顔も見たくて。
ズルズルとまだ余力を残しているぺニスをその身体から抜き、力を無くしてクタリと身を任せるカナをそっとソファーに寝かせた。

あぁ、首だけじゃない。
肩にまでこんな・・・強く握りしめた赤い指の跡と爪痕がくっきり残っていた。
身体中、傷と痣だらけ。

酷すぎる・・・なにやってるんだよ、俺。
しおりを挟む
感想 205

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

処理中です...