例えβに生まれても

29 空港の王子様

17

清人様には、トイレから一旦出て貰うのを渋々承諾して貰えてやっと個室を出ることが出来た。
扉を開けたら、清人様がつけられている香水の香りが流れてきて。
本当に、本当に、目の前に清人様がいたんだって実感が重なって、ね。
ドキッて、心臓が跳ねたよ！

ふわぁ～、香りでこんな風になっちゃったら、至近距離の清人様なんて、心臓がいくつあっても足りないよ。
あぁ、これからどうしたらいいんだろう。
トイレから出たら、清人様が待っているんだよね。
大丈夫かな、俺。
心臓発作とか、起こさないかな。


｢ハルちゃん、急に走るから驚いたよ。
足、早いんだな｣

｢いえ、あの、ご心配かけてすみません・・・｣


洗面台の前で陽太様はニコニコ笑っておられた。
俺の安全のために動いてくださってるのに、自分が一番に逃亡とか酷すぎる。
恐縮する俺に、陽太様は｢何で走ったか｣を優しく聞いてくださったんだけど。


｢ブフゥッッ
ヒィ～、腹が、腹がいてぇーーーーーっ｣


もじもじ恥ずかしさを一生懸命乗り越えて答えたら、過剰反応ぶりに大爆笑されました。
清人様が驚いて中に入って来ようとされたのを、「何でもねぇよ」と止めてくださったんだけど。
そ、そんなに笑わなくても.....

このあと、他の人がトイレを使いに来られなかったのは清人様が誰も入らないよう人払いをしてくださっていたんだってわかってね。
申し訳無さすぎて、出来るだけ、出来るだけ、逃げるのは止めなくちゃって決心したよ！