例えβに生まれても

34 反則の王子様

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唇で挟んじゃった清人様の指はね。
長くてスラっとしていてね。
細く見えてたんだけど、でも、大きな大人の指だから俺のよりも太いんだ。
その先に、吸ったりかじったら甘い密の味がするんじゃないかなって思っちゃうくらい透明で整えられた爪がついていて。

それが、今、俺の口の中に。
どうしようっ
思わず、パクンってしちゃったけど。
い、いい、言い訳も出てこない！
あ、謝るのも何か違うよね？
清人様の見開かれた目と見つめあったまま、固まっていたら、ね。


グニッ


清人様はうっすらと笑みを浮かべると、口から抜いた指で俺の唇を摘まんだ。


｢ハァルゥ、こんなにやらしぃ答え方、誰に習ったの？｣


ひぇええーーーーーっ
なんかわかんないけど、清人様が怒り出したよぉぉっ
お腹の底から振り絞ったような重低音。
清人様の背後からどろどろ吹き出てくるフェロモンも俺に迫ってくる！
身体中の毛穴が開いて、冷や汗が吹き出しちゃうくらい怖いっ

俺が畏縮して固まったままでいたらね。
焦れた清人様が、俺の唇を上下一度に摘まんだ指に力を込めて、自分の方に向けて引っ張られたんだよ！
痛さも追加されて、じわりと涙が滲んでくる。

こんな、乱暴なことされたことなかったから、怒られてる以上にショックッ

清人様が、他の人に怒っているのは見たことがあっても。
俺、今まで一度も清人様から面と向かってこんなに怖い雰囲気で怒られたこと無いんだよ。
飲み物をこぼしたり、グラスを割ってしまったり、色々しちゃっているけど。

やっぱり、お役にたてませんって断るにしても話されてる途中でパクンは失礼だったよねっ