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「えーっと、変異種Ωってな。
ようわかってへんし、そのなってしまう仕組み?みたいなんもな。
いろんなパターンがあって複雑らしいわ。
で、渡の場合はな、キューアイキュージトッカガタのαが関係してんねん」


頼子さんは、道成さんが母子手帳の指で押さえた場所を目で辿り、聞き慣れない単語を口にした。
キューアイキュージ・・・特化型だろうか?
すぐに頭の中で漢字変換出来なかった。
αに種類があるのも初耳だ。

両隣に座る三枝も樟葉もピンと来てない様子。
無反応で誰も相槌を打てない。
キューアイは、求愛か?
キュージは、どう書くんだ?


「その、キューアイキュージと言うのはどう書くんですか?」

「愛を求める相手に餌を給う、だよ。
もう少し言い換えると、愛する相手に食料を与えることだね」


「給う」で躓いた樟葉に、道成さんは言い直した。
この言葉を聞いて、ぼーっと力を失っていた三枝の目に光が戻ってくる。
背凭れから背中が離れ、椅子にも座り直して身を乗り出してくる。
そんな息子の姿は、頼子さんには予想通りだったらしい。
ふふっと楽しそうに笑った。


「食べ物を相手にあげるんわな。
その相手に、『αでもβでも関係無い。あなたが好きです。番になって下さい』ってお願いする意味があんねんて」

「え、なんかそれって・・・」

「ロマンチックやろぉ?」


三枝は、輝きを取り戻した瞳で「うん、うん」と頷く。
さっきのロマンチックは、聞き間違いじゃなかったのか!

いや、それよりも三枝!
これは、小説の設定じゃないんだぞ?
自分の身に起こってることなんだぞ?
わかっているのか?!
なんで、真っ白で疲れきっていた顔に赤みが戻ってるんだ!
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