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18 運命の人

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「なんとなくのところもありますが、話はだいたいわかりました。
笹部が変異種Ωの三枝の相手で間違いないんですよね?
さえ・・・渡君から、今すぐ笹部にここに来てもらうように連絡をとってくれ」

「へ?
なんでなん?」


本気でわからないと三枝は首を傾げる。
なんでって、決まっているだろう!


「笹部が昔変異種Ωに変えたβは、渡君だと真実を打ち明けるためだ。
もう渡君は知ってしまったんだから、頼子さんや道成さんが望んでいた展開にはならないんだ。
黙っている意味もないし、むしろ早くお互いのことを認識するメリットしかないだろう。
笹部の番になりたくても、他のαの番に成る気はないだろう?
笹部に直線話をつけて番になるのが一番早いし、フェロモンレイプや襲われる危険もなくなるし」

「うん、その方がえぇやろなぁ。
二人だけで自覚して、挨拶に来てくれるん待ってたけど・・・」


本気で残念そうだが頼子さんも賛同してくれた。
道成さんも、「自分達の早とちりのせいだしね」と苦笑いで頼子さんを慰めている。
あの笹部に、「息子さんを番に下さい」とかベタな挨拶をさせたかったのだろうか?

・・・想像すら出来ないな。
まぁ、良いさ。
反対する人もいない、三枝の希望も通る。
後は、清人さんを説得してもらって遥馬さんからロマンチックではないリアルな話を聞かせて貰って、と。
俺は、これから先どうするべきか考えていたんだが、思わぬ死角から急ブレーキを踏まれた


「嫌や」


その場に立ち上がり、キッパリと言い切る三枝。
しかも、ジロッと睨まれその反応の意味がわからない。
樟葉は驚き、頼子さんと道成さんも何を言い出すんだと三枝を心配そうに見つめる。


「そんなん言わんでも、笹部君は気ぃついてくれるもん。
わざわざ言うなんて嫌やわ」

「いや、だがな、渡君?
こちらから言うか、三枝が発情フェロモンを出し始めるかしないと気付かないだろう?
相手にとってお前は」


β男子でしかない。
つまり、わざわざ危険に身をおかなければ対象外なままだと続けたかったが、その先の言葉を奪われてしまった。


「運命の人、やで?
だから、言わんでも大丈夫っ」


自信満々で、きゅるるんとハートさえ飛ばす三枝に。

呆気に取られる俺達を尻目に、ニコニコ笑う。
眩しすぎて、二の句が告げれない。
外で、萩野は爆笑してるんじゃないだろうか。
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