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23 新生徒会

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だが、万人が田栗に魅力されるわけでもないらしい。
三枝の隣で檜山先輩も胸を押さえ、αの杉本先輩も樟葉先輩も田栗の顔を見上げたまま頬を赤く染め目を離すことすら惜しんでいるが。


「田栗の目は節穴か?
こいつらの野獣でしかない目がそんな良いもんかよ。
うわー、鳥肌立つっっ」

「こらっ、兄ぃ!
乙女に野獣はヒドイッ」

「野獣は兄ぃだけっ」

「笹部先輩、こんなに美しく気高い双璧を前に、身内だからといって謙遜しすぎるのは罪ですよ」

「おっまえ、マジで喋んなっ」


笹部は腕を擦って眉をひそめているし、ヤマに至っては聞き流しているらしい。
一人、離れた生徒会長の机に来月の学園祭資料を並べ顔もあげない。
きっと、興味がないんだろうな。
来月からの新生徒会を円滑に運ぶための引き継ぎなんだから、少しくらい気にしてもいいと思うぞ?


「田栗のそれって、一種の才能だよな。
引き継ぎ始まって一週間だけどさ。
毎回、毎回、海と空相手に言葉も褒める場所も変えて返り討ちにしてるもんな」


ケラケラと面白がっているのは竹居で、俺の隣に座っている松野は、聞いているだけで気恥ずかしいのか手で額を抑えて赤らんだ表情を隠そうとしている。
もしかすると、男性よりも女性に有効なのかもしれない。


「私は、感じたことを素直に話しているだけですよ?」


なぜ、顔をしかめられるのか、笑われるのかもわからないと田栗は本気で思っているらしい。
急にキョトンとした表情をされると、大人びていた雰囲気が消えて年相応のあどけなさが見えてくる。
そのギャップに、ついに女性陣はその場で突っ伏した。

まぁ、三枝もなぜかこの中に入って「美人さんで可愛ぃのも罪やぁ」と心の声を漏らしている。

番持ちのΩとわかっている相手に魅了されてしまうなんて、α女子ならプライドをかなり傷つけられることだと思うんだが。
ここにいる四人だけでなく、高等部の中にもこれだけ目立つΩの田栗に表だって敵意をちらつかせるαの生徒はいない。
背後に田栗養護教諭がいるからなんだろうか?

もしも田栗がαだったら、α女子の間で恋人の座を巡り争奪戦が繰り広げられてそうだな。
だが、αと思い込まれていた中等部でいさかいが起こったという噂もなかったし、田栗は対処に慣れているのか?

俺自身、同じ副生徒会長になり田栗と間近に接しているが。
知れば知るほど同じΩとは思えない。
警戒心もなければ、虚栄心もなく、かといって自分を卑下もしないし余裕が常にある。
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