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24 体育祭 side 陸

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午前の授業が終われば昼休みがやってくる。
今日の日替わりは肉がいいな。
早朝バイトんときは、握り飯しか食べてねぇからこの時間は空きっ腹だ。

教科書を片付けている間に、窓越しに廊下を歩いていく菊川達の姿が見えた。
相変わらず、菊川のフェロモンが「俺の」「大好き」「宝物」と煩くて目立つ。
かなちゃんは慣れたのか、そんなフェロモン背負わされても前より堂々と歩いているけどな。

α女子の中には、未だに露骨に顔をしかめるヤツもいる。
自分が手に入れたかった菊川を、かっさらわれた上に侍らしてるようにしか見えないからな。
かといって、去年のフェロモンレイプに告白の全拒否、かなちゃんへのベタぼれっぷりを見せつけられてまだ諦めない身の程知らずはいねぇ。
菊川も、煽る気もねぇんならこんな強力なフェロモンつけんなよ。

もう出てきてるなんて、4組終わるのはぇーな。
ぼーっとしていたら間に合わねぇ。
急いで机に突っ込み席を立つ。

別に、一緒に行く必要もねぇし。
こんな、急ぐ必要もねぇし。
だいたい、いつもならぼーっとしてても、だ。
空いた扉から三枝がひょこっと顔を出して、「さーさーべー君っ、ご飯行こっ」と笑顔で誘ってきてたんだ。

けど。

先頭を歩いていた三枝が、チラッと窓越しにこっちを向いて、そんときに目まで合ったのにな。
ビクッと明らかに怯えた目を逸らして、足早に教室の前を通り過ぎていく。
それに気付いたかなちゃんからは、ジロリと睨まれるし。
菊川からは、なにしてんだ?と疑いの目を向けられるし。

・・・先週、俺がフェロモンぶつけたせいだよな。

廊下に出ると、三枝は松野と竹居に合流して笑顔で話しながら先を歩いていた。
わざわざ追いかける気もねぇーし、最後尾の柴田の隣を歩く。

・・・違うな、正直どうしていいのか自分でもわかってねぇから近寄れねぇ。

周りに怯えられるのは慣れている。
喧嘩を売られれば、囲んできた相手が敗北を認めるまで散々痛みつけてきた。
緩い縛りしかしない菊川の群れを侮り、絡んでくるヤツラを徹底的に潰してきた。

相手をしたαや目撃したβ、噂を聞いただけのヤツラからもずっと怯えた目を向けられてきたんだ。
中等部で俺とまともに話していたのは、幼馴染みの3人くらいだ。
媚びてくるα女子を除けば、キャンキャン突っかかってきたのもかなちゃんくらいだったしな。

高等部に上がるまで。
いや、三枝に話しかけられるまで。
俺にβが近寄ってくることも無かったんだ。
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