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25 体育祭

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俺の両肩に手を乗せ、首を伸ばして「笹部君、頑張れっ」と応援する三枝。
ちょうどそのタイミングで笹部の投げたボールがヒット。
また相手を外野に送った。
偶然だろうが、このあと戻ってきたボールを手にした笹部がこちらを振り返った。
三枝は慌てて背中に隠れ、笹部は一瞬顔をしかめたがそのまま試合に戻る。

俺から見ると、笹部の方が悪いことをして謝りたそうにしていると見えないこともないぞ。
あの笹部が謝るなんて、三枝以外では見た記憶もないが。

前半戦も残り僅かだが、これは間違いなく笹部のクラスの圧勝だな。
内野には、残り一人だ。
開始の時点では六人配置されていたが、笹部が次々当てて外野に送っている。

笹部の活躍に、三枝は背後で拍手。
「笹部君、ほんまにすごいなぁ」と声も弾んでいた。


「三枝、謝って許されないこととか、直しようがないこととか・・・それこそ、本人に確認せずに悩んでいても始まらないだろう」


周りに人がいるので、声のトーンは最小限。
後ろを振り返らずに尋ねる。
好かれたいのに、挨拶もろくにしていないこの膠着状態を望んでいるとは思えない。


「うぅ、かなちゃん厳しいなぁ」

「俺も一緒に行ってやるから、直接聞いた方が良い。
時間が経てば経つほど、タイミングを逃すぞ?」


この二人に関しては、春休みに笹部が俺の付き添い役と称してついてきて、結果三枝との橋渡しをさせられている。
そのときは、笹部の馬鹿が言葉を選ばないから三枝を泣かせていた。
どうせ今回も、あの馬鹿の方が悪いに決まっている。


「そうやねん。
食堂でもな、毎日話し掛けようと思ってんのに、怖い気持ちがどんどん大きゅうなってきてしもて。
横を向くのも緊張して、出来ひんなってんねん。
かなちゃんの言う通り、どんなこと言われても、ちゃんと聞いて、許してもらえるまで謝るしかないやんなっ」


前向きなのに、後ろ向き。
なんで、謝ることが前提になるんだ?
それでも、話してみようという気にはなったみたいだから前進はしているんだろう。
ギュッと肩を掴んだ手から三枝なりの決心が伝わってきたのでホッとした。
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