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26 体育祭 side 翔

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空は、それこそ、高等部に入ってから一人暮らしを始めた笹部先輩のつれなさから昔は一緒に遊んでくれたのにまで遡って愚痴っていたが。
海が話が切れたのを見計らい、ポケットから取り出した飴を口に入れてやると黙って舐め出した。
クラスが違うのに、ちゃっかり海の隣に座ってその肩に凭れている。
その態度からは、末っ子気質な子どもっぽさが透かして見える。

暫くは静かになるなと、トラックに目をやると借り物競争の準備が始まっていた。
先生が、風で飛ばないように目玉グリップがついたお題の書かれた紙を机の上に置かれた箱にばらまいている。
三枝先輩が借り物競争に出るのは昨日聞いていた。
元気がなかったから、調子が悪いのかと心配だったんだけど・・・並んで待っている走者の中に、三枝先輩を見つけた。
ちょうど目が合ったので小さく手を振ると、笑顔で振り返してくれた。
先輩も、俺を探してくれていたのかな。
こんなに早く気付いて貰えるなん・・・


「おぉっ、三枝先輩じゃーん!」

「あ、本当だ・・・ガリガリ」

「「三枝セーンパイ、頑張って~」」


空は慌てて飴を噛み砕き、二人揃って立ち上がると声を張る。
三枝先輩は、一気に注目を集めてしまい照れながら両手を振り返した。
そうだった。
俺の隣には、アクが強すぎる双子がいたんだった。
確かに、この二人が揃うと見つけやすいし、そのついでに隣にいた俺にも気付いて貰えただけかもしれないな。
うん、でも、嬉しい。
昨日は直接応援出来なかったから、今日は応援して勇姿を目に焼き付けよう!
けれど、気持ちを切り替えた俺の隣で、双子が不穏な言葉を紡ぎ始めた。


「んー、やっぱ、アレかなぁ?」

「んー、やっぱ、アレだよねぇ」


立ち上がっていた双子が互いに目配せし、ふぅと同時に溜め息をついて椅子に座り直した。
まるで申し合わせたような見事なシンクロに、双子の神秘を感じてしまう。
だが、そのあとの言葉には思わず今度は俺が腰を上げてしまった。


「「兄ぃのご機嫌が悪いのは、三枝先輩で決まりだねぇ」」

「えぇ!?」

「ほら、見て見て、カケルン。
あっちからすんごい睨んできてるから」


海が、二年生の応援席の塊を指差し、その後ニッコリ笑顔でヒラヒラ手を振る。
そこには、いつもより輪をかけて不機嫌で苛ついてるように見える笹部先輩が椅子に座っていた。
浅く腰掛け、足を組み、こちらに向かってガンを飛ばしてきている。


「カケルンもさぁ。
三枝先輩が特別でしょ?
うちの兄ぃも、それっぽいんだよねぇ」

「まぁ、本人は自覚無いみたいだけどね」

「「やはり、ここは、カケルンの出番だよ!
私達に、三枝先輩のどこに惹かれるのか、どーんと語ってみせてくれるかな??」」

いつのまにか移動してきた空に、右肩を。
隣にいた海に、左肩を。
それぞれ捕まれていた。
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