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28 学園祭準備 side 陸

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で、だ。
保健室に連れて来られた俺と桂木は、ここで説教をされるのかと思ったんだが。
手には、マグカップ。
テーブルを囲んで、インスタントコーヒーを飲んでいるところだ。
しかも、海と空が左右に座り同じく寛いでいる。
桂木は向いに座っているが、互いに目を合わせない。


「もう少し休憩してから帰れよ~?
ほとぼり冷めねぇと、あーだこーだと野次馬がうるせぇからな。
時間が経てば、クラス準備で忙しくってそれどころじゃなくなるだろーしな」


田栗は、キャスター付きの肘掛け付き椅子に座り自分の机から俺達を緩く眺めている。
コーヒーを啜りながらヘラヘラと笑い、さっきの喧嘩がまるで無かったみてぇな振る舞いだ。
その背中には、おんぶおばけよろしく誉がくっついて離れない。
コーヒーを断り、無言で田栗を抱きしめている。

保健室前に先回りしていた誉と海と空。
誉は息が乱れるくらい走ってきたらしく、俺達がタラタラ歩いて現れるとその場にしゃがみこんだ。
すぐに田栗が声をかけようとしねぇが、驚いてもない。
騒ぎを聞きつけて心配して来たのか?くらいに思ったんだけどな。


「こ、今回も見損ねました・・・」

「「ホマレン、ざーんねんだったねぇ」」

「いやいや、頑張って探し回ったんだけどねぇ、海ちゃん?」

「うんうん、空ちゃん!
一年の教室のどこかそのへん、だけじゃわかんなかったんだよねぇ」


ガックリ肩を落として項垂れる誉と、慰める海と空。
はぁ?
海と空が一緒に居て、あんだけ出してたフェロモンの場所がわかんねぇとかねぇだろう。
俺と同じくらい、鼻も目も良いんだからな。
ってか、誉は田栗の制圧を見たがってんのか?
ヤられた側にしたら、見世物じゃねぇんだ。
冗談じゃねぇ。

俺の苛つきに、田栗は肩を軽く叩いて表に出すなと牽制。
施錠していた扉を開け、全員中に入ってこいよと誘い。

で、今に繋がっている。

「いやぁ、カケルンが怪我しなくて良かったよ!
配役もあるし、クラスのまとめ役だし」

「俺にはなんの肩書も無いぞ」

「やだなぁ、実質クラス委員長じゃーん」

「海が暴走するからだろう」


桂木は、海に絡まれ迷惑そうだ。
毒気も抜かれたのか、俺への怒りも今は感じない。
海が懐いてんなら、悪いヤツじゃないんだろうけど・・・俺は、無理だな。
意味もなくムカついてくる。
なんで仲良くこんなとこでコーヒー飲んでんだなきゃならねーんだ。
田栗が絡んでなけりゃ、さっさと出て行きてぇ。
砂糖をたっぷり入れたコーヒーを嫌々飲んでたんだが。


「ところで兄ぃ、なんでカケルンと?」


それまで黙っていた空が、不意に本題をついてきた。
それまで誰も触れようとしていなかったからな。
田栗は便乗してこまけーことを聞いてくるかと思ったが、俺と目があってもニヤニヤしてるだけ。
高みの見物かよ。
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