ヘタレαにつかまりまして ２

31 学園祭 side 渡

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わーーーんっ
かなちゃん、かなちゃん、かぁーなぁーちゃーーーんっ

笹部君、全然、ぜんっぜんっっ、くたびれてへんやーーーん！！
くたびれてるって聞いたし、俺、ヘトヘトになって、なんなら顔も青白くって倒れそうなんイメージしてしもてたよぉっ

なのに、なのにっ

目に飛び込んできたんは、ソファーに横になってる気怠い色気たっぷりな笹部君。
黒のツナギのジッパーが最後まで上がってへんから、鎖骨も胸元もはだけて丸見えやでっ
疲れ切ってるんは、疲れ切ってるんやろうけど。
ドキドキ心臓が早まるわっっ

もぉ、目のやり場に困るぅって、目線おろしたら手にペットボトル持ってたわっ


「あんな、コレ、良かったら飲んで？」


もぉ、もぉ、笹部君にギャップ萌えしてしもて自分が何しに来たんかも忘れそうやった！
笹部君、起き上がれへんみたいやしな。
渡しに寄ってみてんけど、あぁ、目ぇ見て話せへんわぁ～
めっちゃ目を泳がしてもうてるっ
な、なんとか笑わなっ
怪しい人になってまうでっ、俺っっ

ぎこち無いのは自分でもわかってんけど、なんとか笑ってな。
それから、どれくらいペットボトルを差し出してたんかはわからへんねんけど。
覇気のない笹部君の目で見られることに耐えられへんなって、取って貰えるまで待てへんかった。

そうやん、そうやんっ
着替えとこ、着替えとこっ
巡回、笹部君は休んでも、俺はかなちゃんらと回ることになるかもしれへんしなっ
よし、着替えよっ

手汗まで出てきたしな。
ふうって意識して息吐かんと、気持ちが落ち着かんくて、ちゃんと話せそうになかったわ。


「えっと、机に置いとくな？
あの、巡回時間までまだ五分あるし、ここで着替えてえぇかな？」


笹部君、俺のこと怒ったまんまやろうし、同じ部屋に居るのも嫌とか。
あと、しんどい時に顔を見た無いって言われるやろか。
それが心配やってんけど、笹部君は無言で俺の顔をぼんやり見たまんま。
あぁ、視線に耐えられへんよぉっ

クルッと背中むけて、自分の席に歩いてしもてた。
なんやろぉ。
いつもの笹部君と違い過ぎて、あんなに弱ってるん見てしもたらギュッて抱き締めたくなるやん。

バフッ

んん？？
音がしたから振り返ったら、ソファーの上で笹部君の姿勢が変わってた。
ソファーから落ちそうやで？


「え、大丈夫なん？？」


手を貸そうかと思ったんやけど、首を左右に振られて断られてしもた。
ほんまに大丈夫なんかなぁ。
さっきまでより、苦しそう。
口元は手で隠してるし見えへんけど、ハァハァ、息遣いが聞こえてくる。

でも、笹部君は黙ったまんまやし。
ちょっと時間おいた方がえぇんかもしれへん。
もし今の笹部君に近寄ったらな。
心臓のドキドキが酷なって、俺の方が倒れるんちゃう？って思えてきてん。
俺、笹部君のこと心配やったけど、先に着替えることにしたわ。