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33 挨拶
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笹部は、隣に移動してきた三枝から笑いかけられ多少目元の表情を和らげたが。
眉間のシワは消えることなく、片方の肘をついたままの姿勢で苛立ちを隠す気がないらしい。
今、この状態の笹部と目が合えば、意識していないと身体が萎縮してしまう。
もしかすると、ヤマが俺の異変を勘違いして笹部に何かするかもしれない。
そうしないためにも、グッと腹に力を込め座り直した。
俺は、αの攻撃性や敵意を含むフェロモンに耐性が全くない。
どの家に行くことになったとしても、桜宮家からの預かり物として大切にその家の中で保護されるだろうと、親族会議でその点に関しての対策をたてて来なかったからだ。
寧ろ、両親のフェロモンに守られ、事前に萩野が動いて守られてきたからな。
余波とはいえ、笹部から受けたあの凍てつくフェロモンは完全にトラウマになっている。
あの、やたらと絡んで鬱陶しいαでしかなかった笹部相手に怯える日が来るとはっ
萩野からは、ヤマと同じ大学に進み外での生活を続けるつもりなら今から慣れるしかないとハッキリ言われてしまった。
体育祭が終わったあとで萩野と顔を合わせたとき、「良い機会だったでしょう」とわざと手を出さなかったのだとニッコリ狐目を細めて告げられた。
茅野学園は、比較的Ωに対して優しい環境だが、これから先はそうも行かない。
Ωへの偏見や、ヤマを狙うαと直接接触する機会は必ず出てくる。
つまり、自分へのフェロモン攻撃は避けて通れない。
それを完璧に避ける簡単な方法もある。
ヤマの所有フェロモンを、萩野のそれで上書きすることだ。
そうすれば、手を出してくるαは居ないだろうし、例え現れても、萩野がその場で動けば表沙汰になる前に対処することも可能だろう。
が、この方法だと、ヤマのプライドはズタズタだ。
俺としても、萩野にこのままずっと守られ続けるわけには行かないと理解しているし、ヤマの番として一緒に幸せになるのだと決めたんだ。
守られるなら、ヤマのフェロモンが良い。
「間接的に、本気のフェロモンを知ることができるなんて良かったですね」と言いながら、萩野の目は明らかに「命令に沿って甘やかしてきたのに、今さらそれを覆せと言われるとはね」と桜宮家の方針転換に呆れていたんだよな。
外れてしまった桜宮家の予想の帳尻合わせを強いられるんだから無理もない。
「・・・なんだよ?」
目が合ってしまった笹部が、睨まれていると勘違いしたのか目を細めて尋ねてくる。
俺は、負けじと目を細め言い返した。
「やっとお前がΩにした相手が三枝だとわかったわりに、その態度はなんだ?」
三枝がお前に何度傷付けられても耐えきたからこそ、両想いになれているんだ。
それに感謝し、喜ぶのは当たり前。
そんな不機嫌な態度を三枝の前でとるなんてどういうつもりだ。
眉間のシワは消えることなく、片方の肘をついたままの姿勢で苛立ちを隠す気がないらしい。
今、この状態の笹部と目が合えば、意識していないと身体が萎縮してしまう。
もしかすると、ヤマが俺の異変を勘違いして笹部に何かするかもしれない。
そうしないためにも、グッと腹に力を込め座り直した。
俺は、αの攻撃性や敵意を含むフェロモンに耐性が全くない。
どの家に行くことになったとしても、桜宮家からの預かり物として大切にその家の中で保護されるだろうと、親族会議でその点に関しての対策をたてて来なかったからだ。
寧ろ、両親のフェロモンに守られ、事前に萩野が動いて守られてきたからな。
余波とはいえ、笹部から受けたあの凍てつくフェロモンは完全にトラウマになっている。
あの、やたらと絡んで鬱陶しいαでしかなかった笹部相手に怯える日が来るとはっ
萩野からは、ヤマと同じ大学に進み外での生活を続けるつもりなら今から慣れるしかないとハッキリ言われてしまった。
体育祭が終わったあとで萩野と顔を合わせたとき、「良い機会だったでしょう」とわざと手を出さなかったのだとニッコリ狐目を細めて告げられた。
茅野学園は、比較的Ωに対して優しい環境だが、これから先はそうも行かない。
Ωへの偏見や、ヤマを狙うαと直接接触する機会は必ず出てくる。
つまり、自分へのフェロモン攻撃は避けて通れない。
それを完璧に避ける簡単な方法もある。
ヤマの所有フェロモンを、萩野のそれで上書きすることだ。
そうすれば、手を出してくるαは居ないだろうし、例え現れても、萩野がその場で動けば表沙汰になる前に対処することも可能だろう。
が、この方法だと、ヤマのプライドはズタズタだ。
俺としても、萩野にこのままずっと守られ続けるわけには行かないと理解しているし、ヤマの番として一緒に幸せになるのだと決めたんだ。
守られるなら、ヤマのフェロモンが良い。
「間接的に、本気のフェロモンを知ることができるなんて良かったですね」と言いながら、萩野の目は明らかに「命令に沿って甘やかしてきたのに、今さらそれを覆せと言われるとはね」と桜宮家の方針転換に呆れていたんだよな。
外れてしまった桜宮家の予想の帳尻合わせを強いられるんだから無理もない。
「・・・なんだよ?」
目が合ってしまった笹部が、睨まれていると勘違いしたのか目を細めて尋ねてくる。
俺は、負けじと目を細め言い返した。
「やっとお前がΩにした相手が三枝だとわかったわりに、その態度はなんだ?」
三枝がお前に何度傷付けられても耐えきたからこそ、両想いになれているんだ。
それに感謝し、喜ぶのは当たり前。
そんな不機嫌な態度を三枝の前でとるなんてどういうつもりだ。
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