837 / 911
35 準備 side 渡
2
しおりを挟む
里山までは、車で直接行けへんからな。
舗装されてへん道路のギリギリ行けそうなきわっきわのところまでは車。
そこからは、森とか川の脇を徒歩になんねん。
まずはきわっきわを目指して、道路から外れた森の中を走ってたら、その先にジープが一台停まってるんが見えた。
他にも行ってる人がおるんやぁって思ってたら、停まってた車の運転席から降りて出迎えてくれる人がいてん。
男の人には珍しい、腰まで伸びた髪をゆるーく三つ編みにしてるその人は。
写真では見ててんけど、初めて会う陸のお父さんに間違いなかった。
髪色が陸と一緒やし、近付くにつれてハッキリ見えてきた顔も写真で見るよりよぉ似てるっ
俺、挨拶に行かなって張り切ってな。
エンジンが止まってすぐに車から出ようと、内側のドアハンドルを掴んだんやけど。
パシッ
いつの間にか背後に移動してた陸に、手首を掴まれて思考停止。
動きも停止。
抱きしめられてるみたいなシチュエーションに、心臓バックバクで俺の人生も止まりそうやぁっっ
せやけど、陸にとってはこんなん意識するようなことやなかったみたい。
俺の前、助手席に座っていた千里さんにそのままの態勢で呼びかけてん。
「あっぶねぇっ
千里さん、頼む」
「よし。
あ、道成さんも、ここで待っていて下さい」
おとんににこやかに言葉を残してな。
一人で降りた千里さんは、車の外で鋼さんにお説教を始めてん。
でもな。
話してる声は聞こえるけど、陸が俺の後ろからどいてくれへんから俺は内容を聞くどころやなかった。
うわぁ、うわぁ、陸の手ぇやぁっ
水泳教えて貰ってたときなんか、溺れかけてしがみついたり、抱きかかえてもろたりもあったし。
Ωになったんわかってからは、意識し過ぎて練習にならへんって切り上げられたこともあったんやけど。
違うねん。
その時もいっぱいいっぱいやってんけど、今と比べたら全然違うっ
あのときは、まだ余裕があったみたいやっ
この手が、俺の身体の今まで触ってないとこまで触るんかとか・・・掌から伝わってくる熱とか、耳の後ろに感じる息遣いとか。
妄想が止まらへーんっっ
沈黙してても、内心パニック。
耳からプスプス煙が出そおやぁあああっ
陸は、外の様子をこっち側の窓から確かめてるみたいで。
時間が経てば経つほど、話を聞くのに夢中になってきてな。
ギュウギュウ身体が密着して来てるっ
限界突破しそうな俺に勘付いてくれたんは、運転席のおとんやった。
「あの、陸君?」
「あ、はい?」
おとんに名前を呼ばれて、ギクッと陸の身体が強張ったんを背中で感じた。
陸がそのまま身体を起こして、俺から離れていったからな。
俺、バックンバックン弾けそうな心臓に手を当ててすかさず深呼吸したわ。
わぁ、もぉ、触れただけでこんなんなってしもてたら、本番、俺、どうなってしまうんやろおぉぉっ
「うちの子、余裕がないみたいだから、気をつけてやってね」
「余裕・・・?
おまっ、顔が真っ赤じゃねぇか?!
熱が出て・・・」
「熱やないから、大丈夫やでっ」
頭ん中の妄想のせいで、意識してキリッと表情を作らな陸の顔をよぅ見れへん。
こっちを振り返ってたおとんには、俺の頭ん中まで見抜かれてるんやろなぁ。
苦笑いされてた。
舗装されてへん道路のギリギリ行けそうなきわっきわのところまでは車。
そこからは、森とか川の脇を徒歩になんねん。
まずはきわっきわを目指して、道路から外れた森の中を走ってたら、その先にジープが一台停まってるんが見えた。
他にも行ってる人がおるんやぁって思ってたら、停まってた車の運転席から降りて出迎えてくれる人がいてん。
男の人には珍しい、腰まで伸びた髪をゆるーく三つ編みにしてるその人は。
写真では見ててんけど、初めて会う陸のお父さんに間違いなかった。
髪色が陸と一緒やし、近付くにつれてハッキリ見えてきた顔も写真で見るよりよぉ似てるっ
俺、挨拶に行かなって張り切ってな。
エンジンが止まってすぐに車から出ようと、内側のドアハンドルを掴んだんやけど。
パシッ
いつの間にか背後に移動してた陸に、手首を掴まれて思考停止。
動きも停止。
抱きしめられてるみたいなシチュエーションに、心臓バックバクで俺の人生も止まりそうやぁっっ
せやけど、陸にとってはこんなん意識するようなことやなかったみたい。
俺の前、助手席に座っていた千里さんにそのままの態勢で呼びかけてん。
「あっぶねぇっ
千里さん、頼む」
「よし。
あ、道成さんも、ここで待っていて下さい」
おとんににこやかに言葉を残してな。
一人で降りた千里さんは、車の外で鋼さんにお説教を始めてん。
でもな。
話してる声は聞こえるけど、陸が俺の後ろからどいてくれへんから俺は内容を聞くどころやなかった。
うわぁ、うわぁ、陸の手ぇやぁっ
水泳教えて貰ってたときなんか、溺れかけてしがみついたり、抱きかかえてもろたりもあったし。
Ωになったんわかってからは、意識し過ぎて練習にならへんって切り上げられたこともあったんやけど。
違うねん。
その時もいっぱいいっぱいやってんけど、今と比べたら全然違うっ
あのときは、まだ余裕があったみたいやっ
この手が、俺の身体の今まで触ってないとこまで触るんかとか・・・掌から伝わってくる熱とか、耳の後ろに感じる息遣いとか。
妄想が止まらへーんっっ
沈黙してても、内心パニック。
耳からプスプス煙が出そおやぁあああっ
陸は、外の様子をこっち側の窓から確かめてるみたいで。
時間が経てば経つほど、話を聞くのに夢中になってきてな。
ギュウギュウ身体が密着して来てるっ
限界突破しそうな俺に勘付いてくれたんは、運転席のおとんやった。
「あの、陸君?」
「あ、はい?」
おとんに名前を呼ばれて、ギクッと陸の身体が強張ったんを背中で感じた。
陸がそのまま身体を起こして、俺から離れていったからな。
俺、バックンバックン弾けそうな心臓に手を当ててすかさず深呼吸したわ。
わぁ、もぉ、触れただけでこんなんなってしもてたら、本番、俺、どうなってしまうんやろおぉぉっ
「うちの子、余裕がないみたいだから、気をつけてやってね」
「余裕・・・?
おまっ、顔が真っ赤じゃねぇか?!
熱が出て・・・」
「熱やないから、大丈夫やでっ」
頭ん中の妄想のせいで、意識してキリッと表情を作らな陸の顔をよぅ見れへん。
こっちを振り返ってたおとんには、俺の頭ん中まで見抜かれてるんやろなぁ。
苦笑いされてた。
応援ありがとうございます!
5
お気に入りに追加
1,430
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる