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37 牙 side 渡

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陸と付き合いだしたり、陸の家に移ったり、番になるためにここに来たり。
怒涛の勢いでいろんなことが有り過ぎて、すっかり忘れてた!
学園祭のときに、桂木君にお菓子あげる約束してたんやったわっ

これって、どうなんやろ?
桂木君、断ったけど告白してくれた人やし、他の告白してくれた人と違ってわざわざ群れに挨拶までしてくれてる。
学園祭のお礼なんやけど、手作りのお菓子ってあげたらあかんのかな?
んー、陸が過去のことで妬いたりなんて想像つかへんしなぁ。
見てへんとこやったらえぇんやし、問題ないかな。

直ぐに立たへんかった俺に、手を差し伸べてくれた陸。
俺が陸の顔を見上げたままでいたら、「気分が悪いのか?」って心配してくれた。
それは否定して、そのまんま流れで一応話とく。
陸と番になったら、一緒に住むのは確定やもんな。
お菓子作ってるときに言ってもえぇんやろうけど、思い出したときに話しといた方がえぇやろう。
俺がまたお返し自体を忘れても、陸が教えてくれるやろうし。


「あんな、学園祭のお礼で桂木君にお菓子作る約束してたん思い出してん。
あれから休んだままで、すっかり忘れてた。
今度学校に行くとき、シフォンケーキ焼いて持っていく予定やねん。
陸の家、シフォンケーキの型は無かったし、俺の家で焼くかおかんに持ってきてもらおうかな」


手を借りて立ち上がったんやけど、手はギュッと握られたまま。
このまま手を繋いで歩くんやなぁって動こうとしたんやけど、陸はその場で固まって動かへん。


「・・・陸?
どうしたん?」

「・・・桂木か」

「うん。
今度は、桂木君の口に合わせてほろ苦いのにしようかなぁって。
お菓子の材料は、陸の家に無くても俺の家に揃ってるやろうけど、ダークチョコだけは買いに行かなあかんわ。
桂木君には、俺が陸のこと好きなんバレてるし、番になれたでって報告もした方がええかな。
昨日も、心配せんで大丈夫やでって返したんやけど、本当ですか?って念押しされてん。
学園祭、一緒に回ってたときは俺元気やったし、腑に落ちひんのやろな」


陸は遠い目でぼんやりしてたし、考えごとがあったんかな。
不意に、フッて笑ってな。


「そんなに心配してんなら、番になったら直ぐに教えてやれよ。
あと、シフォンケーキ、俺は作ったことないから一緒に作っていいか?」


ゆったりした笑顔のまま、俺に協力まで申し出てくれた。
せやんな、せやんな。
陸は妬いたりせぇへんよなぁ。
めっちゃ余裕があるん、わかってたけどちょっと寂しく感じてまう。
俺、顔には出さんようにしてな。
勿論ってお願いしてん。
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