ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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38 記憶 side 陸

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「いっただきまーすっ」


風呂場から出た渡は、両手を勢いよく合わせるとテーブルに並べた朝飯を食べ始めた。
シャワーでスッキリしたのか、元気そうだ。
髪を乾かしているときから、腹の虫が煩かったからな。
あれもこれもと頬張り、満面の笑みで「美味しい」を連発。

出来れば、俺がサンマの身をほぐして薬味も好みに合わせてつけ、口まで運んで一口づつ食べさせてやりてぇくらいなんだが。
んなことしてたら、渡のカツカツな胃袋は干上がっちまう。
楽しみは、次回にとっとくか。
カフェテリアで、菊川とかなちゃんのやり取りを好意的にこいつは見てたしな。
断られはしねぇだろう。

白飯のおかわりのために、腰を上げて去っていく背中を眺める。
俺の分もと言ってくれたが、渡の食べっぷりに気持ちが先に満たされいつもより食べんのが遅れていたし断った。
もともとの量が違ってんのもあるが、まだ茶碗に半分以上残っている。
自分の作った飯を渡が美味そうに食べてんの見てると、牙が伸びて食いづらかったのもあんだけどな。

自分が用意した飯が、相手に咀嚼されて喉を通り内側へ入っていく。
それは、まるで自分自身が相手の身体の中に飲み込まれていくような感覚に近く、楔を打ち込み身体を交えてる感覚と似過ぎて厄介なんてもんじゃねぇ。
渡の開いた口に突っ込んでるような錯覚に襲われ、さっきから甘勃ちなんてレベルを超えている。
これをラブレターに例えた千里さんは、まだまだ俺達のことをわかってねぇ。

渡は食べることに集中してるから、並んで食ってても気付かれてる様子はねぇが、下を覗かれたら一発でバレる。
こんなん、節操がねぇあほとしか思われねぇよな・・・まぁ、番になれば隠しようがねぇし、バレることだが。
番持ちのΩは、発情期がなくなる代わりに相手の発情、ノットに応じてヒートになる。
下手すりゃ、つーか今のままじゃ、カフェテリアでノットになるぜ。

頭を冷やして見ることはできねぇもんかと、戻って来た渡の、飯を食べているその横顔をチラッと試しに見てみる。
口に運び、咀嚼し、飲み込む一連の動作。
下腹に籠もっていた熱が突き抜け、とっくに頭をもたげていたペニスが下着に阻まれ窮屈だとガンガン主張してくる。
思わず腰を曲げ、まだ料理が残っている皿に頭から突っ込むとこだった。
がーっ、爆ぜる手前の痛みが限界を超えこめかみまでズキズキ痛む。

俯いたままなんとか平静を取り戻そうとするがうまく行かねぇ。
持っていた箸が折れそうなくれぇ、持て余した力の置きどころに困る。
なんとか不審がってる渡に嗤って誤魔化し、もたもたと飯を再開。

あ"ー、コレが番になると渡にバレんだよなぁ。
酒の席で、親父や親戚連中がニヤニヤ子ども相手に話してたのを思い出す。
「番にしたいと思う相手に出会ったときは気をつけろよ。うっかり渡した食べ物を目の前で食われてみろ。無邪気に喜んでられずに、興奮がそっちに直結してヤバいヤバい」と盛り上がっていたっけ。
正に、その状態だな。
あんときの親父達を眺める千里さんの極寒の眼差しが怖くて、記憶にすげぇ刻まれてる。

生々しいこの感情がどうやったら収まるのか聞いときゃ良かった。
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