Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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8 食堂

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「ありゃあ、一体なんなんだっ」
 鋼と千里と食堂で別れ、漆戸は未だ顔色の優れない胡麻を誘い部屋へ戻った。葛籠が扉を閉めるなり、鋼のいない場所では三割凶暴化する胡麻が声を荒げる。イライラと親指の爪を噛み、ガンガンベッドの足を蹴るのは完全なる八つ当たりだ。
「おいおい、備品を壊すなよ?」
 万一激情に任せて折られたら、始末書を管理人に提出し寮の掲示板に晒される。穂高ナンバーズの名前を貶めることは、品行方正を良しとする千里が嫌うことで、つまりは鋼の怒りを買うことに直結するのだ。胡麻がどうなろうと自業自得だが、その怒りが自分にまで波及するのはかなわない。
「うっせーっ」
 先程鋼に攻撃された胡麻は、抑えきれない怒りのフェロモンを撒き散らす。何かと鋼の標的にされやすい胡麻だが、今回のような手も足も出ない状況はフラストレーションの溜まり具合が段違いなんだろう。なかなか気持ちが収まらない。葛籠は、いつかの自分と重ねているのか半笑いで見守る。それを胡麻に気付かれると、スッと目を逸らし椅子に腰掛け背を向けた。
 鋼の群れは、リーダーの鋼への絶対服従を強いるがそれ以下の群れの上下関係に強い縛りを課していない。他の群れなら、上位の胡麻が下位の葛籠に八つ当たりすることは黙認されるが、その行為が鋼の機嫌を損ねる確率もあるので胡麻は葛籠の態度に対して舌打ちで留めた。
「前から千里をバカ丸出しで庇護してたが、俺は記念品をよく見ようとしただけだぞ??なんであそこまでされなきゃなんねーんだ、あ"ぁ"?」
「笹部さんのやることに、イチイチ理由なんて考えるな」
 鋼の行動に一貫性が無いのはいつものことだ。漆戸は、さっさと座れと下段ベッドを視線で指定。くそっと舌打ちした胡麻は、口角を痙攣させながらもそれに従う。ここに誘われたからには、なにか話があるのだろうとベッドの縁に腰掛けた。
「で?」
「で、は、俺のセリフだ。何が二人にあったか分からない内は、下手なことはするなと念押ししてただろう。興味本位で、笹部さんの尾を踏むな。誰がフォローすると思ってるんだ?」
 胡麻のおかげで、千里への庇護が強くなったことを確認出来たのは棚ぼただったと思う気持ちもあったが、今の言葉も漆戸の本音だ。群れのメンバーが鋼にとって目障りな行動をとると、副リーダーの漆戸は監督不行届で睨まれる。アレで、胡麻ひとりの被害で済んで、本当に良かった。あの怒り方は誰が見ても異常だ。
 これまで、散々フォローされて来た胡麻は面白くなさげに鼻をフンと鳴らしそっぽを向く。やっとここで漆戸に念押しされていたことを思い出したようだ。千里と一対一なら気安い関係の胡麻は、千里が親しい態度を望むこともありその加減をつい誤ってしまう。いくら自分が認めたリーダーが服従している相手だとしても、鋼を介した関係性は千里との付き合いが長いせいで認識が希薄になりがちなのだ。
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