Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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10 寮-Ⅲ

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 鋼は、寝ている千里にスカーフをつけ直し、漆戸への説明のため一時部屋から離れた。詳しい説明は元々する気はない。決定事項のみ一方的に伝えて去ったが、漆戸は慣れたもの。走って帰っている間に聞き返してくることもなく、最速で眠る千里の元へ戻れた。鋼は無言で豆村に場所を譲るよう促し、当然のように千里の顔が一番よく見えるベット際の床に腰を下ろす。豆村は、これほど千里を追い詰めながら番面つがいづらをする鋼の神経を疑いつつ黙ってその後ろに立った。(少しでも異常があれば、念の為病院へ連れて行ったほうが良いだろう)(他のαこの部屋俺のテリトリーに居座るのはムカつくが、ちーちゃんが拒んだ二人きりってのがな)
 目覚めた千里が、目の前に自分しか居ないと混乱するかもしれない。気を失う直前まで拒んでいたのだから、十分有り得る。
 その後、千里は一時間以上目覚めなかった。鋼が、千里への気遣いと異物を自分と千里しか入らせたくない場所に置き続ける苛立ちを天秤にかけ始めたとき、「んん・・・」と千里の口からうめき声が漏れた。豆村は、増してくる鋼からのプレッシャーに嫌気が差していたので、わざと鋼を押し出し千里へ優しく声をかけた。
「穂高、大丈夫か?」
「せ、んせぇ?」
「ここがどこかわかるか?」
「確か・・・部屋に戻って」
 千里は起き上がるのを止められたので、目を回して周りの様子を確認する。寮の部屋なのに豆村がいることに首を傾げ、自分が心配されていることに戸惑う。(自分に何があったのだろう?)その後ろに、豆村を睨んでいる鋼を見つけ徐々に頭の中の靄が晴れてくる。
「・・・疲れて、倒れたのでしょうか?鋼、心配をかけたようだな」
 なんのしこりも感じさせない千里の穏やかな声。豆村と鋼は目を合わせ、千里が部屋に帰ってからの記憶を失くしているようだと一瞬で確認し合う。豆村はそれほど強烈な負荷がかかったことを心配したが、鋼は安堵した。(それで良い。ちーちゃんが覚えていたらさっきの繰り返しになってしまう)
 豆村は、退院初日だから念の為に様子を見に来たら寝ていたのだと説明し、簡単な問診で千里の状態を確認する。千里にストレスをかけたくない配慮だ。特に異常は無く、手を取って調べた脈拍も正常。大きな問題は無いと判断し千里を安心させる。
 まだ二人になにか言いたそうな豆村を、大浴場の利用指定時間が近いことを理由に鋼はさっさと追い出した。入浴準備をしながら、群れ単位の時間指定で統括学園長から許可を得たと説明。「ちーちゃんに御褒美だってさ」と、鋼は明るく話してみせたが、千里は曖昧に頷いて返す。先に渡された御褒美が番避けを隠すスカーフで、次がナンバーズと混浴では矛盾している。きっと鋼が何かしたのだろうと感じたが、そこは素直に騙されておいた。大浴場をゆっくり使えるのは有り難いが、Ωにされたこととは到底釣り合いが取れない。鋼に解かれたスカーフがシワクチャで、自分にはなにかした覚えがない。「貴様の仕業かっ」と怒ったが、珍しく鋼は愁傷な態度で「ごめんなさい」と認めるので肩透かし。番避けを取る間も鋼が沈んだ様子を見せるので、千里は寝ている間に何をされたのかと不安になった。
 連れ立って向かった大浴場は一番乗り。脱衣所は無人だった。千里は、衣服を脱ぐ前に何も障害の無くなった首元に触れる。(ここくらいしか、外す機会はないのだろうな)拘束されない身体をいつまでも触れて確かめたくなるが、そうも行かない。気持ちを切り替え、浴室へ向かった。
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