Ωにしちゃってゴメンナサイ

三日月

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11 大浴場-Ⅱ

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 千里を見送った鋼は、「さてと」と気分を変えるために独りごちる。ゆっくりと振り返り、浴槽の内側で固まっている面々を見下ろすとその醜態に顔を顰めた。
「おいおい、何やってんだよ?ちょっと漏れたのに触れただけでそのザマかよ?」
 情けねぇなぁとぼやいてその場に腰を下ろす。(座るのかよ・・・すぐに追いかけたいんだろ?気分転換に使うな。こっちはお前と目を合わせるだけでやべぇんだよ。行け、今すぐ行け)胡麻は、相変わらずこちらに全く気遣いを見せない様子に半目。しかも、この煽り方は八つ当たり臭いとピンとくる。こちらを口ではバカにしているが、本気でそうは思っていないから(そこまで反応を気にしないという意味で)すぐに飽きて他のことを考えだしたのが顔に出ていた。
 胡麻は、湯の浮力に助けられながら強張って力の入らない身体で縁まで移動。段差に肘を置いてやれやれと息を吐いた。(なんかよくわかんねぇうちに『いつもの二人』に戻ってたけど、冷血帝の顔を千里に見せたのは不本意だったんだろうな。まぁ、今までよく隠せていたとは思うぜ)
 この顔を知っているのは、千里に悟らせるなと厳命されてる群れの新旧メンバーと敗北した相手に限られている。それでも、初等部から数えれば、途中で転校していった負け犬を除いてもそこそこの数が冷血帝とやりあって惨敗してきた。わざわざ内密にしろと口約束すら交わした覚えはないが、鋼の容赦の無い裏の顔を告発した生徒はひとりもいない。わざわざ悔し紛れにバラしても、良いことなんかある分けがない。オーバーキル対応を自ら2度も経験しようなんて、イカれてる。鋼に心酔する築花くらいのものだ。
 胡麻は、度々千里と話してるだけで鋼の理不尽な怒りを買ってきた。千里が見ている前だから力は抜かれていたんだろうけれど、それでも痛いものは痛いし、なかなかフェロモン酔いから復活出来ずに寝込んだこともある。これまで冷血帝の豪腕を目の当たりにしたときは、攻撃フェロモンを相手に限定して放っていたので被害はなかった。のたうち回って吐いたり、立ったまま気を失ったり、腰が抜け這って逃げようとした顔面に蹴りを入れられている様を見て、「うわー、御愁傷様」と相手への仲間意識も手伝い不憫に感じていたのだが。(んー、次元が違ったんだなぁ)今回、その片鱗を浴びて自分の認識がぬるいことがよくわかった。(取り敢えず、今後の負け犬共にはもう少し優しくしてやろう)どうやら千里とその他まではいかなくても、千里と群れのメンバーとその他の3種類で一応の差がつけられていたらしい。
 格下の千里に尾を振り、ニコニコとお菓子をばら撒く『お菓子の王子様』の一面しか知らなかった相手は、鋼を完全に侮っている。待ち受けられても危機感など無く、最初は調子づいてイキって周りの胡麻たちにも噛みつこうとしてくる輩が多かった。大概、最後は恐慌状態に陥り暫く学園に出てこれなくなるのだが。あれはどう見ても詐欺だ。ここまで化けていることをひた隠しにされていた千里を怒らせたのは自業自得。こちらは、鋼の命令で千里に漏らさないよう最善の努力と必達を求められてきたのに自分でうっかりバラすとかバカじゃねーの。今の胡麻は、体調に反してざまぁねぇなぁと気分が良い。
 一方の千里を尊敬する木曽は、鋼の二次災害を恐れて止まったまま動かない。しかし、胸の奥は熱く萌えていた。(おぉ、やっぱ穂高先輩すげぇわ。あんな笹部先輩に話しかけるなんて死地に挑むようなもんだろう。あと、水をかけて去ってくとかどんだけ度胸あるんだ。堂々と意見する穂高先輩は、やっぱ最強だぜ)推しの勇猛果敢な行動に、興奮していた。
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