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11 大浴場-Ⅱ
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待たされて御立腹の女子生徒達が、いつまで「また後ほど」で引いてくれるかわからない。漆戸は、今日こそ具体的な日時を決めようと考えていた。
女子生徒からのお誘いは、鋼のような強者に集中し、千里のように名誉を得たものには本人の資質よりも興味本位で手を出してくる。穂高ナンバーズは、そのどちらも持ち合わせているので千里よりもお誘いが多い。学園を掌握していることもあり、その人気は他の群れや個人と比べて高いのだ。個々にアタックをされては収集がつがず鬱陶しいため、対外を担当する調整役の漆戸が全メンバーの窓口も兼ねていた。こちらで選別すると女子生徒のプライドを傷つけたと吊るしあげられるため、相手側が勝手に争って数を絞ってからこちらに要請してくるのを待つ消極的なやり方。誘いの数をステータスとして考えるαもいる中、鋼が義務的にこなしているのでそのやり方に落ち着いていた。
退院後、鋼にそれとなく「結構申し込みが溜まってまして」と言ってみても「へぇ、お前らも大変だな」と流されて千里に話を持っていこうともしない。(千里の相手は鋼が決めていた)窓口と言っても、こちらから「○月○日○時に指名入りましたー」と鋼に指示をだすような立場では無いからこれ以上話が進まなかったのだ。「それで、どこに行けばいいんだ?」と聞いてきて初めて話が動く。退院後、一言も触れてこなかったのはその頃からヤル気が無かったとか・・・と、嫌な予感がしてくる。それならそれで、早めに断っておいた方が、相手の期待を長引かせるより幾分後処理が楽だったのでは。
「あぁ、ちーちゃんも俺も、今後は一切相手はしねーよ」
(やっぱりぃーっ)
漆戸は鋼にあっさりと肯定され、両拳で水面をバチーンッと力いっぱい殴りつけたくなった。(いやいや、ちょっと待ってくれよ。アイツら、直接乗り込みかねねーよ)そうなると、鋼が漆戸の不手際だと罰してくるのでは。ブルッと先程の攻撃フェロモンを思い出して身体から大きく震えた。なにか手を考えなくてはと焦るのだが、心身共に疲れている漆戸の頭の中は、もう嫌だ、と早々に思考放棄。一晩寝てから考えようと諦めた。
一方の鋼は、答えながらそれを実行することの難しさもわかっていた。優生αを増やすことが良しとされるα至上主義の中で、女性αから申し込まれると基本男性αは断れない。例えば、相手よりも優生な婚約者や恋人がいる場合や、相手が自分よりも圧倒的に弱い場合は断れるのだが、ここで「俺とちーちゃんは結婚したから」と宣言は出来ない。かと言って、理由も言わずに断ることは、強者の鋼ならば出来ても千里は出来ないし。それを鋼が口を出して押通せば、千里だけ目立ってしまう。(なら、広げるか)鋼は、千里のためなら労力を惜しまない。
「あと、お前らも一方的に相手はしなくていい」
「え?」
「俺たちがいない間、随分なめられた態度されてたろ?」
鋼からニッコリと優しげに笑いかけられたが、漆戸はその意図が分からず戸惑うばかり。確かに、「笹部さんが今は無理なら、お前でいい」とか、高みから物を言う女子生徒の相手もさせられ続けて腹が立っていたけれど。ここに来て、急に飴を出されてもこれは自分への優しさからではないよなと疑ってしまう。純粋培養の築花だけが、「笹部先輩が僕たちのことを考えてくださるなんて」と感動している。(一体何を考えているんだ?)
「まぁ、結構いましたけど」
おこぼれの指名の数を、ステータスとして誇れるメンバーはここにはいない。αの能力値も高い上に血統も良いので、学園で出会いも相手も求めていないのだ。鋼から代わりを勤めろと言われていれば従うが、仕方が無いと自分で手を打たれていることには不満しかなかった。気絶している葛籠を除く全員が、次々頷いた。
「今後は、こちらに指名権をもたせる」
「・・・そんなこと、出来ますか?」
学園内に限定しても、αの常識を覆すことなんて許されることでは無い。鋼は、懐疑的なメンバーへ自信に満ちた笑みで答える。
「納得しねーんなら、俺が決闘で勝敗をつける。俺の群れを軽視したことへの制裁とでも取ればいい。俺が負ければ、俺を好きに出来る。俺が勝てば、この学園から出ていってもらう」
ハイリスクハイリターン。そんな博打を打つαが出てくるわけが無かった。
女子生徒からのお誘いは、鋼のような強者に集中し、千里のように名誉を得たものには本人の資質よりも興味本位で手を出してくる。穂高ナンバーズは、そのどちらも持ち合わせているので千里よりもお誘いが多い。学園を掌握していることもあり、その人気は他の群れや個人と比べて高いのだ。個々にアタックをされては収集がつがず鬱陶しいため、対外を担当する調整役の漆戸が全メンバーの窓口も兼ねていた。こちらで選別すると女子生徒のプライドを傷つけたと吊るしあげられるため、相手側が勝手に争って数を絞ってからこちらに要請してくるのを待つ消極的なやり方。誘いの数をステータスとして考えるαもいる中、鋼が義務的にこなしているのでそのやり方に落ち着いていた。
退院後、鋼にそれとなく「結構申し込みが溜まってまして」と言ってみても「へぇ、お前らも大変だな」と流されて千里に話を持っていこうともしない。(千里の相手は鋼が決めていた)窓口と言っても、こちらから「○月○日○時に指名入りましたー」と鋼に指示をだすような立場では無いからこれ以上話が進まなかったのだ。「それで、どこに行けばいいんだ?」と聞いてきて初めて話が動く。退院後、一言も触れてこなかったのはその頃からヤル気が無かったとか・・・と、嫌な予感がしてくる。それならそれで、早めに断っておいた方が、相手の期待を長引かせるより幾分後処理が楽だったのでは。
「あぁ、ちーちゃんも俺も、今後は一切相手はしねーよ」
(やっぱりぃーっ)
漆戸は鋼にあっさりと肯定され、両拳で水面をバチーンッと力いっぱい殴りつけたくなった。(いやいや、ちょっと待ってくれよ。アイツら、直接乗り込みかねねーよ)そうなると、鋼が漆戸の不手際だと罰してくるのでは。ブルッと先程の攻撃フェロモンを思い出して身体から大きく震えた。なにか手を考えなくてはと焦るのだが、心身共に疲れている漆戸の頭の中は、もう嫌だ、と早々に思考放棄。一晩寝てから考えようと諦めた。
一方の鋼は、答えながらそれを実行することの難しさもわかっていた。優生αを増やすことが良しとされるα至上主義の中で、女性αから申し込まれると基本男性αは断れない。例えば、相手よりも優生な婚約者や恋人がいる場合や、相手が自分よりも圧倒的に弱い場合は断れるのだが、ここで「俺とちーちゃんは結婚したから」と宣言は出来ない。かと言って、理由も言わずに断ることは、強者の鋼ならば出来ても千里は出来ないし。それを鋼が口を出して押通せば、千里だけ目立ってしまう。(なら、広げるか)鋼は、千里のためなら労力を惜しまない。
「あと、お前らも一方的に相手はしなくていい」
「え?」
「俺たちがいない間、随分なめられた態度されてたろ?」
鋼からニッコリと優しげに笑いかけられたが、漆戸はその意図が分からず戸惑うばかり。確かに、「笹部さんが今は無理なら、お前でいい」とか、高みから物を言う女子生徒の相手もさせられ続けて腹が立っていたけれど。ここに来て、急に飴を出されてもこれは自分への優しさからではないよなと疑ってしまう。純粋培養の築花だけが、「笹部先輩が僕たちのことを考えてくださるなんて」と感動している。(一体何を考えているんだ?)
「まぁ、結構いましたけど」
おこぼれの指名の数を、ステータスとして誇れるメンバーはここにはいない。αの能力値も高い上に血統も良いので、学園で出会いも相手も求めていないのだ。鋼から代わりを勤めろと言われていれば従うが、仕方が無いと自分で手を打たれていることには不満しかなかった。気絶している葛籠を除く全員が、次々頷いた。
「今後は、こちらに指名権をもたせる」
「・・・そんなこと、出来ますか?」
学園内に限定しても、αの常識を覆すことなんて許されることでは無い。鋼は、懐疑的なメンバーへ自信に満ちた笑みで答える。
「納得しねーんなら、俺が決闘で勝敗をつける。俺の群れを軽視したことへの制裁とでも取ればいい。俺が負ければ、俺を好きに出来る。俺が勝てば、この学園から出ていってもらう」
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