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12 食堂-Ⅱ
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「やだなぁ、ちーちゃん!俺が一人で寮に残すわけないじゃん」
はいはい、行き先変更~と食堂に向かって背を押される。(俺が、鋼の家に???)親しくなっても、鋼は一度も千里を実家に招いたことは無かったので全く想像がつかない。あの『苛烈姫』の姉もいるだろうし、病院で謝罪された父親の福もいるだろう。そこに、鋼。この実際に見知った3人だけでも、落ち着いた年越しが出来るとは思えない。断ろうとする千里の背後から、鋼が両肩を掴んでその耳元に顔を寄せてくる。
「ちーちゃんは俺の妻なんだから、俺の家はちーちゃんの家だよ」
鋼は周りに聞こえないように、こっそりと囁く。千里は、「うぐっ」と感情が出ないように堪えてなんとも複雑な顔になった。
(妻、妻と、何度も言うなっ)
婚姻届は、意識が朦朧とした中で書かされたものだ。有効性なんてある分けがない。しかし、穂高の家には戻れず、正直頼るところが笹部家しかないのだ。まぁ、原因が鋼なのだから、そこは鋼に責任を取ってもらうということにもなるし致し方ないのだと千里は無理矢理こじつけている。なりたくもないΩにさせられた恨みより、まずは現実を生きていかねばならない。既に、笹部家からは毎月の文房具やお菓子を買うお小遣いまで頂いてしまっている。多少の貯金はあったのだが、通帳も印鑑もどうやら鋼の実家に他の荷物と一緒に運ばれているようで手元には無い。(荷物の確認もしたいし、一度は行かなければならないのだ)と、今回も理不尽で不本意なことでも自分に言い聞かせてなんとか折り合いをつける。
鋼は、千里が否定しなかったことに気を良くして後ろから強引に頬ずり。(ちーちゃんも、妻って思ってくれてるんだなぁ)
「やめんかっ」
「えー、なんでだよ~」
他の生徒は、「今日も仲良いね~」と温かい目で見守り、喜んでじゃれ合う二人に道を開ける。中には、睨んだり、下心丸出しの目で伺ってくる女子生徒もいたが、鋼が目を細めて挑発すると俯いて道を譲った。二人が食堂に着くと、席を確保していた築花が手を振りながら走ってくる。
「おっはようございます!本日も、築花は先輩方のお役に立ちますっ」
千里は、やる気に満ちた挨拶につられて笑いながら挨拶を返し、鋼は「よしよし、期待してるぜ」と豪快にその頭を撫で繰回す。嬉しい悲鳴を上げてはしゃぐ築花。(うっひゃあ、今日の笹部先輩、ご機嫌マックスだぁ)その後ろで控えている峯森は、このまま良い一日でありますようにと深く願う。鋼の機嫌が良ければ、築花の機嫌も良くて助かるのだ。別れてから、延々と「頭撫でられた~」と自慢してくるのを聞かされるくらいなんともない。
朝食はビュッフェ式。出入り口脇に、簡易的な手洗い場が確保されている。4人は手を洗ってから、それぞれ好きなものを好きなだけ自分のトレイの上のプレートに盛り付け、ドリンクも選んでから席に戻った。
「あの、漆戸先輩から洗濯物を預かっていましたので、そちらの席に引っ掛けてあります」
ランドリーの持ち運び用に使っている鋼と千里のそれぞれのカバンが、椅子の背にぶら下がっていた。
「ありがとう、峯森」
「いえ、洗ったのは漆戸先輩なので」
部屋が変わり、千里はこれからは自分でするつもりでいたのだが、退院した初日に洗濯機に入れていた洗濯物を漆戸から当たり前のように干して畳んで返された。他の生徒が使用するには、微妙に早い時間に回っていたので千里か鋼のものだと察して動いてくれたらしい。それ以降も、毎日当たり前のように大浴場で「ついでですから」と回収されている。
はいはい、行き先変更~と食堂に向かって背を押される。(俺が、鋼の家に???)親しくなっても、鋼は一度も千里を実家に招いたことは無かったので全く想像がつかない。あの『苛烈姫』の姉もいるだろうし、病院で謝罪された父親の福もいるだろう。そこに、鋼。この実際に見知った3人だけでも、落ち着いた年越しが出来るとは思えない。断ろうとする千里の背後から、鋼が両肩を掴んでその耳元に顔を寄せてくる。
「ちーちゃんは俺の妻なんだから、俺の家はちーちゃんの家だよ」
鋼は周りに聞こえないように、こっそりと囁く。千里は、「うぐっ」と感情が出ないように堪えてなんとも複雑な顔になった。
(妻、妻と、何度も言うなっ)
婚姻届は、意識が朦朧とした中で書かされたものだ。有効性なんてある分けがない。しかし、穂高の家には戻れず、正直頼るところが笹部家しかないのだ。まぁ、原因が鋼なのだから、そこは鋼に責任を取ってもらうということにもなるし致し方ないのだと千里は無理矢理こじつけている。なりたくもないΩにさせられた恨みより、まずは現実を生きていかねばならない。既に、笹部家からは毎月の文房具やお菓子を買うお小遣いまで頂いてしまっている。多少の貯金はあったのだが、通帳も印鑑もどうやら鋼の実家に他の荷物と一緒に運ばれているようで手元には無い。(荷物の確認もしたいし、一度は行かなければならないのだ)と、今回も理不尽で不本意なことでも自分に言い聞かせてなんとか折り合いをつける。
鋼は、千里が否定しなかったことに気を良くして後ろから強引に頬ずり。(ちーちゃんも、妻って思ってくれてるんだなぁ)
「やめんかっ」
「えー、なんでだよ~」
他の生徒は、「今日も仲良いね~」と温かい目で見守り、喜んでじゃれ合う二人に道を開ける。中には、睨んだり、下心丸出しの目で伺ってくる女子生徒もいたが、鋼が目を細めて挑発すると俯いて道を譲った。二人が食堂に着くと、席を確保していた築花が手を振りながら走ってくる。
「おっはようございます!本日も、築花は先輩方のお役に立ちますっ」
千里は、やる気に満ちた挨拶につられて笑いながら挨拶を返し、鋼は「よしよし、期待してるぜ」と豪快にその頭を撫で繰回す。嬉しい悲鳴を上げてはしゃぐ築花。(うっひゃあ、今日の笹部先輩、ご機嫌マックスだぁ)その後ろで控えている峯森は、このまま良い一日でありますようにと深く願う。鋼の機嫌が良ければ、築花の機嫌も良くて助かるのだ。別れてから、延々と「頭撫でられた~」と自慢してくるのを聞かされるくらいなんともない。
朝食はビュッフェ式。出入り口脇に、簡易的な手洗い場が確保されている。4人は手を洗ってから、それぞれ好きなものを好きなだけ自分のトレイの上のプレートに盛り付け、ドリンクも選んでから席に戻った。
「あの、漆戸先輩から洗濯物を預かっていましたので、そちらの席に引っ掛けてあります」
ランドリーの持ち運び用に使っている鋼と千里のそれぞれのカバンが、椅子の背にぶら下がっていた。
「ありがとう、峯森」
「いえ、洗ったのは漆戸先輩なので」
部屋が変わり、千里はこれからは自分でするつもりでいたのだが、退院した初日に洗濯機に入れていた洗濯物を漆戸から当たり前のように干して畳んで返された。他の生徒が使用するには、微妙に早い時間に回っていたので千里か鋼のものだと察して動いてくれたらしい。それ以降も、毎日当たり前のように大浴場で「ついでですから」と回収されている。
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