鬼ごっこ~あのこがほしい~

三日月

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弥勒過去編(瑛二&白銀)

朝焼け 1

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「仕事空けは、キツイっ」
「お帰り」

昼前には彰姫と別れ、僕は家事をこなし。
いつものように、学校帰りの瑛二を出迎えていた。
昨夜は仕事で帰りも遅く。
瑛二にとっては、長い一日だっただろう。

「御飯は届いているから、先に食事を・・・」

パンッ

鞄を受け取ろうと手を伸ばし、即座に払われる。
・・・え?
驚く僕の目に映ったのは、ワナワナと震える瑛二。
顔が、真っ青だ。

「瑛二、どうか・・・」
「触るな」

ギリギリと歯を食いしばり、睨みつけられる。
明確な、拒絶。

「白銀、お前、どこで喰ってきた?」

憎悪、嫌悪、殺意、焦燥、喪失。
瑛二から今まで受けたことの無い感情に、目を瞬く。
瑛二の視線は、僕の顔、唇に注がれていた。

「彰姫に・・・」
「そうか・・・
彰姫サンの血を飲んで来たのか。
そんなに、俺に抱かれるのは嫌か」

それは、それは・・・
答えられない。
抱かれるのは嫌じゃなかった。
抱かれたい僕がここにいる。
でも、言葉にするには・・・

「好きにしろっ」

何も言い返せなかった僕の前を。
瑛二は立ち去っていく。

怒らせた。
瑛二を、僕は、怒らせた。





その日から。
逆戻り。

むしろ、当主を押し付けているから悪化している。

瑛二は僕を見てくれない。
以前のように、避けられる。
角無し鬼として、戦場への追随も許されない。

家のことも、人を戻され。
何もするな、関わるなと拒否される。


「どけ」

玄関での出迎えも、毎回追い払われる。
冷たい苛立ちをその声にぶつけてこられる。
それでも僕は、姿だけでも見たくてそこで待つ。

人間だった頃、障子を開ければすぐそこにいたのに。
嫌われたくなくて。
追いかける勇気もなくて。
言葉だけ交わして、最期を迎えた。

だからせめて、毎朝、毎夕。
仕事があれば、夜中まで。
僕は玄関で待ち続けている。

せっかくつけてもらった名前さえ。
呼ばれない。
それが角無し鬼にとってどれほど辛いことなのか。

魂を預けた相手に、存在を否定される恐ろしさ。
生きているはずなのに、なぜここにいるのかわからない。
どうして生き続けているのか分からない。
自分の存在価値、意義がゼロになる。

角無し鬼は、自死行為さえ契り相手に束縛される。
以前は、瑛二が絶食を理解していなかったから逆手にとれていた。
今は、自分で死ぬ方法がない。
殺さず生かさず、ただ在るというだけの自分。
もう、無くしてしまいたいのに。
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