鬼ごっこ~あのこがほしい~

三日月

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弥勒過去編(瑛二&白銀)

会いたい 2

窓から身を乗り出した瑛二。
今はその瞳に僕が映る。
人間だった僕とは、似ても似つかない美しい鬼。
僕は人で無くなった。
鬼には老いもなく、ただ砂となって消えるだけ。
まだあどけない少年と青年の狭間。
どんな大人になるんだろう。
これから瑛二の成長が見れないのは残念だな。

会えた

そんな感慨も取り払われて。
願いが叶い、気持ちが解けていく。
ホッとして、頬が緩む。

「・・・」

月の光に浮かぶ僕を見て。
ゴクリと、瑛一の喉がなる。
顔が、強張っている。
恐れさせたいわけじゃない。
僕は、瑛二に嫌われたくない。

「危害は加えない。
この刀で、僕に厳罰を」

当主に引き継がれる鬼斬りの刀”夜露”を見せる。
今の僕にとっては、脆弱だけど。
防御しなければ、肉は切れる。
血が流れ続ければ、死ねるだろう。

「・・・ハッ、本当に、瑛一でいやがる」

刀を受け取り、瑛二は僕に背を向け部屋の中へ戻ってしまった。
僕だと、わかってくれたのか?

「あ、の、瑛二?」
「さっさと入って来い。
雨戸も閉めろ」

声に、緊張が無くなった。
僕が始めて鬼と退治したとき。
こんなに早く、立て直せただろうか。

浮かび上がり、窓から室内へ侵入。
畳の上に足を下ろし、僕は戸惑う。
あの場で斬られる覚悟だったのに。

瑛二は振り向き、布団に腰を下ろす。
その瞳には、もう、怯えさえなかった。

「鬼落ちした人間は、鬼のままなのか?」
「戻れた例を聞いたことはない」

胡坐をかく瑛二の正面。
畳の上で正座する僕。
こんなに、まっすぐ見てくれている。
瑛二が近くて嬉しい。

泣きそうになりぐっと堪える。

「・・・と、すると、俺が当主ってことか」

刀から手を離し、何かを考え込んでいる。
謝りたい衝動を、殺す。
僕が謝ったところでどうなる。
瑛二の当主継承はすでに決定事項。

瑛二に、瑛二に。
弥勒家を背負わせてしまう。

「その声、その浴衣、この刀。
瑛二とわかれば納得できるな・・・」

ふーっと低く息を吐き。
瑛二は僕を見つめなおした。

「・・・浴衣?」
「あ”、わからずに着てるのか?
昔夏祭りに行ったときと同じ柄だろ?
現物がどこに行ったかさえわかんねーヤツ」

あぁ、だから、コレを僕は選んだのか。
紺の地に、不断長久( 絶えることなく長く続く)の紗綾形。
父の浴衣を仕立て直し、最後に行った夏祭り。
瑛二と出かけた楽しい思い出、そのときの浴衣。
死に装束にはもったいないな。

「触れてもいいのか?」
「・・・?」

鬼に、触れる??
そんなこと、考えたことすらなかったが・・・
とりあえず、頷く。
瑛二の考えていることは、顔を見ていても読み取れなかった。

僕の左頬に瑛二の掌が触れる。
何かを確かめるように、そっと触れてくる。
覗き込むように、僕を見る瞳。
一体何を考えているんだろう。

「不思議なもんだな。
全然造りは違うのに、声は瑛一のままなんて」
「声?」
「雨戸越しに聞こえた声。
俺が障子越しに聞いてた声と一緒だった。
瑛一の悪ふざけかと思ったけど・・・んなことするほど、俺ら仲良くなかったしな」

そこで、黙り込む。
何を考えている?
僕を通して、違う何かに意識は飛んでいる。
でも、もう、道は決まっている。
僕が、決めてしまっている。

瑛二に殺されたい
最初に斬られる鬼になりたい

あぁ、もう、十分だな。
顔を合わせて、更に話まで出来たんだ。
僕は、瑛二の手を取り刀へ導く。

「神宮寺家では、鬼落ちした血縁者には、死の処罰を持って対処する。
僕は、人の記憶が残っていたからその相手を選べた。
どうか、瑛二のその手で殺して欲しい」
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