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弥勒過去編(瑛二&白銀)
決意 1
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「なぜ、ここに角無し鬼が・・・」
「何を考えているのだ・・・この当主は」
「角無し鬼を伴うなど、正気の沙汰か・・・」
「もしや契られたとは、言うまいな」
「弥勒の当主が角無し鬼など、狂ったか!?」
翌朝の当主襲名。
僕たちの部隊が全滅したことを受け、弥勒家一同が集まった庭先。
集結の知らせを受けてから。
瑛二は着替えもせずにその場へ向かった。
襲名だから、せめて着替えろと進言したけど笑われるだけ。
皆、瑛二の到着を黙して待っていたが。
瑛二のジャージ姿に、まずはざわめき。
その後ろについてきた僕を見て、更にその場は乱れた。
場の空気が、嫌悪と排斥で唸りを上げる。
それはそうだろうな。
弥勒家は、代々角無し鬼を契らないことに意味を作り、自らを持ち上げていたのだから。
弥勒家の人間が、角無し鬼を同行するなんてあり得ない。
僕が当主だったとき、誰かが契っていれば・・・
良くて、除名。
悪ければ、自決。
それを、当主自ら破るなんて許されない。
時代は先に進んでいても、この弥勒家は不変の掟で縛られている。
最優先されるのは、当主の命。
それがどれほど理不尽であっても、受け入れる。
変わりに当主は、弥勒家の安泰のために一族をまとめ、率先して鬼を討伐する。
鬼などに頼らず、人の手で討つことは、弥勒家初代の命だった。
「・・・瑛二さん、ソレは、どういうことですか」
僕たちの前、庭に平伏していた群れの中から。
白髪の生き字引、利一が代表して瑛二に話しかけた。
僕にも仕えていた者が、僕や視界に入れるのさえ耐えられないと、顔をゆがめ瑛二に尋ねる。
これは、予想していた。
予想できていた。
「あ”?
ソレってのは、俺の後ろの瑛一のことか?」
百人を超える、年上の男ばかりの集団。
それを前にしても、瑛二は変わらない。
開け放たれた廊下に立ち、殺気じみた視線を往なす。
ズラリと並ぶ大人に臆することもない。
僕と違い、何も教育は受けていなかったはずなのに・・・自信を持って対峙している。
場内が、瑛二の言葉に悲鳴を上げ、激昂し、剣さえ抜く者が表れても。
「黙れっ」
一喝。
場を睨みつけた、それだけで。
僕でさえ手を焼いていた、煩さ方の叔父たちも。
口を閉じ、姿勢を正す。
まるで、ずっと瑛二が当主だったみたいだな。
僕が作り上げた当主としての振る舞いを。
瑛二は、自然体で上に立つ。
「弥勒家において、何が一番大事だ?
利一、答えろ」
「弥勒家当主です」
伏して答える利一。
「そうだよな?
それは、俺でも、教えられてきた。
で、今は俺が当主だ。
この俺が、瑛一を角無し鬼にした」
「し、しかしっ」
利一の後ろに控えていた者が、口々に不満をぶつけてくる。
「そんなこと、許されないっ」
「何も知らない次子が、何を勝手なことをっ」
「弥勒家から、鬼落ちを出しただけでもどれだけ大事か」
「まだ、理解されていないのだ」
「無知にも程があるな」
収まらない、収まるわけが無い。
次々溢れる不満と瑛二への不審。
僕という存在への殺意。
僕は、黙って受け止める。
予想していたことなのだから。
昨日まで、僕が率いてきた人間に。
存在全てを否定されても仕方ないことをしたのだ。
「何を考えているのだ・・・この当主は」
「角無し鬼を伴うなど、正気の沙汰か・・・」
「もしや契られたとは、言うまいな」
「弥勒の当主が角無し鬼など、狂ったか!?」
翌朝の当主襲名。
僕たちの部隊が全滅したことを受け、弥勒家一同が集まった庭先。
集結の知らせを受けてから。
瑛二は着替えもせずにその場へ向かった。
襲名だから、せめて着替えろと進言したけど笑われるだけ。
皆、瑛二の到着を黙して待っていたが。
瑛二のジャージ姿に、まずはざわめき。
その後ろについてきた僕を見て、更にその場は乱れた。
場の空気が、嫌悪と排斥で唸りを上げる。
それはそうだろうな。
弥勒家は、代々角無し鬼を契らないことに意味を作り、自らを持ち上げていたのだから。
弥勒家の人間が、角無し鬼を同行するなんてあり得ない。
僕が当主だったとき、誰かが契っていれば・・・
良くて、除名。
悪ければ、自決。
それを、当主自ら破るなんて許されない。
時代は先に進んでいても、この弥勒家は不変の掟で縛られている。
最優先されるのは、当主の命。
それがどれほど理不尽であっても、受け入れる。
変わりに当主は、弥勒家の安泰のために一族をまとめ、率先して鬼を討伐する。
鬼などに頼らず、人の手で討つことは、弥勒家初代の命だった。
「・・・瑛二さん、ソレは、どういうことですか」
僕たちの前、庭に平伏していた群れの中から。
白髪の生き字引、利一が代表して瑛二に話しかけた。
僕にも仕えていた者が、僕や視界に入れるのさえ耐えられないと、顔をゆがめ瑛二に尋ねる。
これは、予想していた。
予想できていた。
「あ”?
ソレってのは、俺の後ろの瑛一のことか?」
百人を超える、年上の男ばかりの集団。
それを前にしても、瑛二は変わらない。
開け放たれた廊下に立ち、殺気じみた視線を往なす。
ズラリと並ぶ大人に臆することもない。
僕と違い、何も教育は受けていなかったはずなのに・・・自信を持って対峙している。
場内が、瑛二の言葉に悲鳴を上げ、激昂し、剣さえ抜く者が表れても。
「黙れっ」
一喝。
場を睨みつけた、それだけで。
僕でさえ手を焼いていた、煩さ方の叔父たちも。
口を閉じ、姿勢を正す。
まるで、ずっと瑛二が当主だったみたいだな。
僕が作り上げた当主としての振る舞いを。
瑛二は、自然体で上に立つ。
「弥勒家において、何が一番大事だ?
利一、答えろ」
「弥勒家当主です」
伏して答える利一。
「そうだよな?
それは、俺でも、教えられてきた。
で、今は俺が当主だ。
この俺が、瑛一を角無し鬼にした」
「し、しかしっ」
利一の後ろに控えていた者が、口々に不満をぶつけてくる。
「そんなこと、許されないっ」
「何も知らない次子が、何を勝手なことをっ」
「弥勒家から、鬼落ちを出しただけでもどれだけ大事か」
「まだ、理解されていないのだ」
「無知にも程があるな」
収まらない、収まるわけが無い。
次々溢れる不満と瑛二への不審。
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