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池内が半年かけても信者になれなかったのなら、三谷にそれより早く信者になれる採算は無い。
単独では、早期に『オメガバース』に近付くことが難しい。
三谷は、増援を望んで叔父を通して薬師一族に現状を報告したが、並行して流出ルートとその元締めを洗うことを優先しているので監視継続の回答しか貰えなかった。
現物の隠し場所は、幹部しか出入りしていない三階が怪しい。
これは、池内も同意見。
『オメガバース』は、その残り香を纏っていた教祖の動線のどこかに確実に存在しているのに手をこまねいているのは被害者が増えるのを見過ごすことと同じではないか。
池内やその部下の張り込みで、教祖がこの一ヶ月外に出ていないことは確認済みだ。
必ず、この何処かにある。
三谷は自宅で間取り図を何度も確認。
なんとしても現物を回収、被害を最小限に防がなければ。
三階への経路は、エレベーターと階段。
窓からは目立つし、カメラの数も多い。
潜入捜査の素人ではお手上げ⋯とくれば。
「任せとけ」
昨日別れるときに、散々手を引いてくださいとお願いしたと言うのに電話に出た池内は快く応じてくれた。
なにせ3度も借りがあり、三谷の功績は本人が思っている以上に大きい。
翌日の真夜中。
三谷を連れて池内が向かったのは、三種の器があるビル⋯の、隣のマンション屋上。
監視用にマトリが一室を借りていたため、こちらは堂々と正面から入れた。
屋上で何をするのかと訝しむ三谷の前で、池内は2メートル向こうのビルに軽々と飛び移り、命綱を三谷のために投げてよこした。
驚きながらも三谷が飛び移ると、池内は屋上の扉を特殊器具で解錠。
監視カメラは三階までがやたら多いのだと話して、死角をついて四階の通気口から三階の換気設備を設置するための天井と四階の隙間に導いてくれた。
「ここまで二回来たけど、俺じゃどこに隠してるのかが全くわからなかった」とタネを明かされたが三谷は唸るしかない。
やはり本職は凄過ぎると感嘆したら、マトリにも色々いるんだと笑われた。
このビルに教祖と黒作務衣の四人が住んでいることは池内チームが事前に確認済み。
扉は全て自動施錠。
マスターキーは幹部が手放さない。
池内が、半年手をこまねいていた要因の一つはこの固い防御だった。
けれど、三谷は直接部屋に侵入しなくとも、匂いの濃淡である程度の保管場所は掴める。
あくまで薬の回収を急ぐ薬師一族と意見は異なるが、意識が朦朧とした少女に『オメガバース』がいつ直接使用されるかわからない。
人命優先だと訴える三谷に、叔父は現物の場所が確実に割り出せたなら強引でも捜査令状を出させると渋々了承。
今夜忍び込むことに強く反対されたが、三谷を止めることはできなかった。
池内に、四階のエレベーター前にあった通気口コミの見張りを任せる。
三谷は、狭い通路に身体をねじ込み、口に細いペンライトを咥えながら渡された道具で換気設備の修理口の蓋を開ける。
ダクトやコードが這う、ホコリまみれの三階天井裏は、仕切りのないワンフロアになっていた。
靴を脱いで、早速そこに足をつける。
腰をかがめ、服の裾で口元を多い、右手には証明を極細に落としたペンライト。
池内には、あまり時間をかけるなと言われている。
一歩一歩、頭の中の間取りと照らし合わせ、部屋ごとに床の埃をある程度避けて階下の匂いを確認する。
同じ作業を繰り返す内、明らかに匂いが濃い部屋を見つけた。
三谷は、頭の中で大凡の場所を確認し池内の元へ戻った。
単独では、早期に『オメガバース』に近付くことが難しい。
三谷は、増援を望んで叔父を通して薬師一族に現状を報告したが、並行して流出ルートとその元締めを洗うことを優先しているので監視継続の回答しか貰えなかった。
現物の隠し場所は、幹部しか出入りしていない三階が怪しい。
これは、池内も同意見。
『オメガバース』は、その残り香を纏っていた教祖の動線のどこかに確実に存在しているのに手をこまねいているのは被害者が増えるのを見過ごすことと同じではないか。
池内やその部下の張り込みで、教祖がこの一ヶ月外に出ていないことは確認済みだ。
必ず、この何処かにある。
三谷は自宅で間取り図を何度も確認。
なんとしても現物を回収、被害を最小限に防がなければ。
三階への経路は、エレベーターと階段。
窓からは目立つし、カメラの数も多い。
潜入捜査の素人ではお手上げ⋯とくれば。
「任せとけ」
昨日別れるときに、散々手を引いてくださいとお願いしたと言うのに電話に出た池内は快く応じてくれた。
なにせ3度も借りがあり、三谷の功績は本人が思っている以上に大きい。
翌日の真夜中。
三谷を連れて池内が向かったのは、三種の器があるビル⋯の、隣のマンション屋上。
監視用にマトリが一室を借りていたため、こちらは堂々と正面から入れた。
屋上で何をするのかと訝しむ三谷の前で、池内は2メートル向こうのビルに軽々と飛び移り、命綱を三谷のために投げてよこした。
驚きながらも三谷が飛び移ると、池内は屋上の扉を特殊器具で解錠。
監視カメラは三階までがやたら多いのだと話して、死角をついて四階の通気口から三階の換気設備を設置するための天井と四階の隙間に導いてくれた。
「ここまで二回来たけど、俺じゃどこに隠してるのかが全くわからなかった」とタネを明かされたが三谷は唸るしかない。
やはり本職は凄過ぎると感嘆したら、マトリにも色々いるんだと笑われた。
このビルに教祖と黒作務衣の四人が住んでいることは池内チームが事前に確認済み。
扉は全て自動施錠。
マスターキーは幹部が手放さない。
池内が、半年手をこまねいていた要因の一つはこの固い防御だった。
けれど、三谷は直接部屋に侵入しなくとも、匂いの濃淡である程度の保管場所は掴める。
あくまで薬の回収を急ぐ薬師一族と意見は異なるが、意識が朦朧とした少女に『オメガバース』がいつ直接使用されるかわからない。
人命優先だと訴える三谷に、叔父は現物の場所が確実に割り出せたなら強引でも捜査令状を出させると渋々了承。
今夜忍び込むことに強く反対されたが、三谷を止めることはできなかった。
池内に、四階のエレベーター前にあった通気口コミの見張りを任せる。
三谷は、狭い通路に身体をねじ込み、口に細いペンライトを咥えながら渡された道具で換気設備の修理口の蓋を開ける。
ダクトやコードが這う、ホコリまみれの三階天井裏は、仕切りのないワンフロアになっていた。
靴を脱いで、早速そこに足をつける。
腰をかがめ、服の裾で口元を多い、右手には証明を極細に落としたペンライト。
池内には、あまり時間をかけるなと言われている。
一歩一歩、頭の中の間取りと照らし合わせ、部屋ごとに床の埃をある程度避けて階下の匂いを確認する。
同じ作業を繰り返す内、明らかに匂いが濃い部屋を見つけた。
三谷は、頭の中で大凡の場所を確認し池内の元へ戻った。
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