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ボドゥ=マナへ…

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 第一植民星:火星にて
火星は人類がはじめて植民地にした惑星である。人の生息域にはドーム型のバリアが張られ空気をその中に留めている。このバリアは強力な砂嵐からも人々を守っている。火星の暗黒街は違法取引の穴場として知られ、警察も手を焼くほどだ。
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 火星の街をローバーが走り交い、様々なロボットが歩き回り、買い物をしたり爬虫類のようなペットを散歩させる。貨物船や旅客船がバリアドームの上を飛び交う。市民は派手な服を身にまとい生活を営む…
 そんな表向きの街の裏には暗黒街が広がっている。貧しいものたちがひしめくこの暗黒街は治安が悪く、住人たちは植民地化プロジェクト初期に使用された狭いコンテナ型仮住居を積み立てた、いつ倒れるかも分からないようなタワーに住み、何とか少ない金で生活をやりくりしているようだ。
 その暗黒街の中にあるぽつんとたたずむひとつの建物がある。ドーム型の決して大きくはないその建物は植民地化プロジェクト初の渡航の際に運搬され使用された珍しい住居施設だ。壁面には消えそうな文字で「PROJECT-SP-001」と印字されている。
 この建物の中では覆面の男と青年が何やら会話していた。
「そこでだ、お前さんにこの仕事を依頼したくてな…お前は俺が知る限り一番の腕利きの盗人だからな」と幾何学模様の仮面を身につけた男、
「盗人なんてそんな物騒なもんじゃなくて、快盗だよ」と作業着を着た青年、
そうだったな、と覆面の男はぼそっと言うとズボンのポケットからタバコを取り出し仮面をずらしてそれを咥えた。青年は飛行機のような機械の下に潜り込み、作業し始めた。
「それにしても、ボドゥ=マナってどんな場所だ?」青年は顔だけを機械の下から覗かせながらそう言った。
「ボドゥ=マナは結構侵入し辛いので有名だ。何しろボドゥ=マナまるごとボドゥっていう奴らが征服してて、見つかりゃすぐに殺されちまうらしい」
「そんなとこにお前の欲しい、コスモスの宝玉、とやらがホントにあんのか?」機械の下に再び潜った青年の声は反響して聞こえた。
 すると覆面の男はふと立ち上がった、
「そりゃもちろん。お前も思わず俺に渡したくなくなるような美しいお宝だ。こっちの金持ちに売れば数千億ピット(ピットとは人類の共通通貨で10ピットでパン一斤が買える)で売れるさ。お前への報酬も頑張って上げた方だぜ」
青年は機械の下から出てくると覆面の男へ歩み寄り手を差し出した、
「分かった、そんぐらい簡単に盗み出すよ。」二人が握手を交わし、覆面の男が去ろうとしたとき青年が男に笑顔で呟いた、
「値下げしてやってんのはこっちだかんな」覆面の男は薄笑いすると青年の肩をポンポンと叩いてこう言った、
   「よろしく頼むぜ、シルバーピジョン」


 
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