転生して暗殺者してたら、主人公の復讐相手になっちゃった件

海月 ぴけ

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「ゔ、あ、あ″あああ‥よくも‥よくもッお前らを殺してやるッ絶対に殺してやるッ」

俺を細腕でポカポカと叩くガキ。キッと涙目で睨みつけられて顔を引っ掻かれたので、今すぐ地面に転がしてやろうかと力を込める。だけどその手が頼りなく震えていることに気づいて、俺は一度よいしょと軽く抱き直した。

「許さない‥ッ絶対に、お前をッ」

何度も顔を引っ掻かれて、体を殴られてそれでも好きにさせる。抵抗しない俺に気づいてか、ガキが俺の顔を間近で見つめると一瞬目を見開いて、少ししてからぎゅっとマントを握りしめて大人しくなった。

「ゔう‥殺すッ‥父上‥っ、ふえ‥」

そうだよな。こんな小せえのに、父親を目の前で殺されたらそうなるわな。
泣きじゃくるガキに目を細めてその頭に触れようと手を伸ばしたその時だ。
刹那、バタバタと複数の足音がして、俺は冷や汗を垂らす。まずい。非常にまずい。この足音は‥

ボスだ。

「おいガキ」

「殺すぅ、ゔ、お前をっ、殺してっ、」

俺が声を発したからか、ガキがまたキッと俺を睨みつけて反抗しようと口を開くが、正直それどころじゃない。

「いいから聞けッ!?死にてえのか!?」

「ひあっ‥」

至近距離で大きな声を出したからか、びくりと大きくガキの体が跳ねる。情けなく歪む顔に少し罪悪感をおぼえたが、今はそんなこと構ってはいられない。

「俺に復讐したいなら勝手にすればいい。けど、その調子じゃお前、復讐する前に殺されるぞ」

「ッ!」

俺の目をまっすぐ見て口をキュッと結ぶ小さな体。そこはちゃんと話を聞くんだな。根は素直な良い子なのかも。それに一言で自分の状況を理解できるなんて聡明なガキだ。俺はよしっと言うとその頭を一度撫でて、首元につけていたネックレスをガキに装着する。

「俺を殺してえなら‥死にたくねえなら、それを絶対に外すな。いいか?今から一言も話すんじゃねえぞ。」

魔法具が一瞬光って、ガキの姿が変わっていく。銀の髪は水色に。青の瞳は灰色に。変化の魔法効果のかかった魔道具だ。これで身分は隠せるはず‥。

小さく頷くガキ。また潤んだ瞳から苦しそうに涙が溢れて、俺は久方ぶりに心の奥底の感情という部分が揺れ動いた気がした。

思い出したのは前世の記憶だ。
あの平和な国でも、俺は恵まれた家庭に生まれたわけじゃなかった。片親に育児放棄。幼い頃は苦労したし、周りの連中が羨ましくて恨めしかった。大人になるにつれて少し余裕ができたが、その後の人生もよかったとは言いきれない。腐ったものは腐ったまま、何も成し遂げられず気づけば二回目の人生ときた。

慣れたものだ。この世界でもまた虐げられて、裏切られた。ただこの期に及んで他人に期待なんてしない。反対に目の前で人が死にそうになっていたって俺は無関心を貫く。そうやって生きていた方が楽だから。そう思っていたはずなのに。何故か今になって心がざわつく。

この子はまだ腐ってない。無垢な子どもだ。子どもってのは無邪気に夢を描いて、泣く時は親や先生に怒られたり、喧嘩したり、駄々こねる時ぐらいでいいはずだ。俺がそう望んだように‥。

「‥アル‥、どういう状況だ‥説明しろ。」

刹那、ドアが勢いよく開いて、黒いフードが何人も部屋に入ってくる。

ガキは驚いたのか怯えて俺の首筋に顔を隠してしがみついた。それでいい。そのまま何も喋るなよ。

「はい、ボス。ターゲットの暗殺を執行。ただし、仲間のひとりが裏切りを。」

「‥ニルバか‥」

ニルバーー。そう呟く男。そういえばそんな名前だったか。いつもフードを外さず顔を隠していたし、任務以外でほぼ関わりはなかったな。
俺の背後を見て顔を顰める先頭の男は、
フードを外して、俺をギロリと睨みつけた。月明かりがその顔を照らす。
黒髪に赤い目の美しい顔が顕になって、俺を静かに見つめる。その重くのしかかるような圧迫感に、俺はごくりと唾を飲み込んだ。

「‥ターゲット外の王族と思われる人物を私情で殺したと思われます。逃げられぬよう気絶させましたが、どうしますか?」

落ち着け。大丈夫だ。
俺は任務を失敗したことがない。だからボスには信用されているはずだ。

「チッ、王族とはやっかいだな‥お前はどうして止めなかった‥?」

「っ、」

言い訳‥をしたってこの人には通用しない。黙ったままの俺を見て、苛立ったように視線を移す。

「‥その子どもはなんだ」

ボスがそう呟いた途端、首元のガキがぎゅっと力を強く込める。ボスの圧が伝わっているのか緊張が走った。

「‥どこかの貴族の子どものようです‥。混乱に乗じて迷い込んだのかと‥。怯えているのか、今は口が聞けぬ状態です。」

「‥それで‥?」

「っ、両親も、もう殺されているでしょう‥。野放しにして情報が漏れるのも心配です‥」

「なら、殺すか‥?」

淡々と話す低い声に、心臓がバクバクと音を鳴らす。だめだ。落ち着け。口を開け。


「、俺が面倒を見ます‥。」

「お前が‥?」

一切の間もなく返されて、俺はぐっと拳を握りしめる。
そりゃそうだ。この世界では14才から職に就ける。ギルド登録だって同じだ。俺はまだ12のガキで、ひとりじゃ普通の働き口も無いだろうし、自分を養うだけで精一杯。

実は貯金を貯めていましたとか、今日暗殺業から足を洗おうとしていたとか、この人は何も知らない。いや、知られていたら生かしてはもらえなかっただろう。俺は事故で死んだと見せかけて、こっそりと組織から逃げる算段を立てていたのだから。それももう意味がないんだけど。



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