サキュバスくんと運命の人間共っ!

海月 ぴけ

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ふいに、パチンと叩かれる腕に僕は眉を顰める。

「っ、たぁ!」

何するんだこのコウモリリスゴリラ野郎!!
よくも僕のか弱い手を叩きやがって!

「ヨル!レンは顔を見られるのが苦手なんだよ?人の嫌がることをしちゃダメ!もう、さっきから人を傷つけてばっかじゃん‥どうしていつもそうなの‥」

あぁ、もううざったいな。さも自分が傷ついたかのような顔をするこの男。こういうところが嫌いなんだよ。僕だって、苦手だなんて知らなかったもん。そうならそうとすぐに言ってよね。

「ふん!」

もう付き合ってらんない!勝手に仲良しごっこでもしてればいい。
僕は友達なんていらないし、群れないでもひとりで生きていけるし!
ずっとそうしてきたし!

覚えておけよ。お前らなんて精力を搾り取ったら、利用して捨ててやるんだから!皆んな


大嫌いだ。







『ふえ‥母様‥母様‥』

母様が死んで、施設に預けられて。知らない世界の恐怖と不安と悲しみで、僕は毎晩毎晩、夢の中に閉じこもって泣いていた。

『ふえ‥ぐす‥ゔえ』

『っ!』

どこからか聞こえる声。誰かが泣いている。僕よりも泣いている‥。僕の方が悲しいはずなのに、それはとても切なげで小さくて。
僕は小さい羽をパタパタと動かして、そっと、その背中に寄り添った。

『大丈夫ーー大丈夫だよ。』


毎日、毎日僕の夢の中にやってくる少年に寄り添って抱きしめてあげる。そうしていると、ある日その子が僕に話しかけてきた。

『っ‥ねぇ、皆んな僕から離れていくんだ‥ーーは、ずっと、一緒にいてくれる?』

深い黒髪が、俺の服を必死に引っ張るものだから、
その小さな手をぎゅっと包み込む。
この子には僕がいないとダメなんだ。
僕じゃなきゃだめ‥特別な子‥。あぁ、嬉しいな。もう僕ひとりぼっちじゃない。君といると寂しくないよ!毎日が楽しくて、僕涙なんか止まっちゃった!

『うん、お前が望むならずっとーー』

一緒にいるよーー。

『っ、約束、だよ!』

『!約束!?』

約束!?それって一途の契約ってこと?!ふわぁ!は、その人からしか精力を貰わないっていう素敵なサキュバスの契りなんだぁ。狼族でいう番。人族でいう婚姻を結ぶ儀式のような憧れのロマンチックなこと。

まだ僕は未熟だから魔法の契約はできないけれど、僕がいつか母様みたいな本物のサキュバスになったらね‥君と契約してあげる!魔王様と母様のように君だけをずっとーー、ずっとっ!

『久しぶり!会いたかった!』

施設から引き取られて、あの少年とは夢の中で会えなくなった。でも、昼寝をしていると久しぶりに夢の中で君を見つけたんだ。少し背が伸びた君。特別な君。大好きな君。僕は駆け寄って、その少年が映る液晶のようなものに手を当てる。

『ねえ!ここだよ!ねえってば!』

いつもと違う夢。少年に触れることができなくて、僕は一生懸命画面に向かって叫ぶ。

『あ、あの‥えとっ、ふわ!?』

『ずっと‥ずっと会える日を待ってた‥』

それはきっと僕に向けて言ってる言葉。僕も同じ気持ちで嬉しくなって、でもパッと画面が変わって、少年が誰かを抱きしめている映像が目に入った。ぎゅっと心臓が苦しくなって困惑する。

僕とは違うふわふわの茶髪。大きな黒い瞳。白い肌が、ぽっと赤く染まって、

ねえ、間違ってるよ?その子は僕じゃないよ?

そう言いたいのに、目の前の光景に体が動かなくなった。

『っ!あの‥ぼ、僕も‥嬉しい‥!あのね、柚ね、大きくなったらーーのお嫁さんになる!!』

茶髪が少年な腕の中で幸せそうにそう告げる。彼の胸に擦り寄る姿に僕はギュッと拳を握りしめた。

やだ、やめてよ。

『っ!ほんとに?!これからもずっとずっと一緒?!』

っやめてよ!その子は僕のなのに!

『うん!ずっと一緒だよ!!』

いやだ‥やめてってば‥君は‥僕の‥僕だけの特別な‥

何度も画面を叩く。彼を呼ぶ。違うんだって叫んで、それでも彼は一度も僕を見なかった。

『っ、嬉しい!大好きだよ!柚!!ーー』

彼のその一言を聞いて、頭を殴られたような衝撃を受けた。大好きだった笑顔がぼやけていく。
嘘つき。
違うもん。僕も本当じゃなかったもん‥
好きじゃないもん‥可哀想だから一緒にいてあげただけだもん。

『嘘つきっ、嘘つき‥僕のこと一番大好きだって、僕とずっと一緒にいるって‥約束したのに‥また、僕‥

ひとりぼっちだよ‥?』

いっぱい涙が出て、それでも
もしかしたら戻ってきてくれるかも。そしたら、ちょっとは怒ってその後は許してあげる。なんて。
早く会いにきてよ。僕待ってるよ‥ずっと‥待ってるよ‥。

何年も何年も経って、いつまで経っても、その子は僕のところには帰ってこなかった。



「‥本当に馬鹿だよね。人間なんて僕達より欲深くて嘘つきなんだから。まぁ、僕だって本気じゃなかったけど!少しだけ情をかけてやっただけだし?」


あれから結局、途中で授業を抜け出して、屋上で昼寝をした。だってあのゴリラリス、休み時間になる度に、餌共に謝れとか反省しろとかうるさいんだもん。

僕の親衛隊とかいう奴らが間に入ってくれたから助かったけど、毎日人間達に囲まれるのにも疲れちゃう。まぁ僕は可愛いし?母様似で超絶美人だし?微笑んだだけで隣の席の真面目眼鏡くんは真っ赤になってトイレに駆け込んじゃう。それぐらい色気を纏ってるから周りが放っておけないのも仕方ないんだけどね。


「ふぁ~」

それにしても今朝から懐かしい夢ばかりみるな。僕が人間を信じなくなった理由。人間でいう黒歴史ってやつだね。

でも、あの経験がなかったら、僕は今頃、悪い人間に騙されちゃってる気がするし、感謝しなきゃ。

まぁ、あんなやつ本気じゃなかったんだけどね!僕は優しいから同情しちゃった!


「、お腹すいたな‥」

辺りは夕焼けに染まっていて、少し薄暗い。
寮部屋に戻ればゴリラリスがずかすが僕の部屋に勝手に入って絡んできそうだし、今日決行するはずがどうしよう。


ふと、屋上の柵を見ると、人影が庭園の方に向かって行ったのが分かった。

「あれば‥餌1号と‥ゴリラリス‥?」



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