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俺から見た君は
ずるい
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◇
「え、早川、掃除当番なの?今日違う人じゃなかった?」
「田中な、あいつバイトあるから代わってくれって頼まれちゃってさ。」
「そうなん?待っとくけど?」
「いや、大丈夫。スナと2人で先帰ってて!今日寄りたいとこあるしさ。」
「そう‥?なら、そうする。また明日早川!行こうスナ。」
「‥」
「おう!じゃあな~」
放課後になってもまだ気が重いままだった俺は、掃除当番を言い訳に2人の誘いを断ってしまった。
田中から無理やり掃除当番をもぎ取ったのは秘密だ。
昼飯から帰ってきてから、ずっと八谷が俺に対して何か聞きたそうにしていたし、聞かれるのがめんどくさかったのもある。
「‥はぁ、くそ。」
考えすぎて少し休みたくなった。
俺はスナをデートに誘えない。でも、夏樹や他の人たちは
スナを堂々と想ってもいいんだ。
いやただの当てつけ。性格悪すぎだろ俺。
現実を目の当たりにしたら、どんどん自信がなくなっていく。終わりが見えない苦痛が襲ってきて、不安で押しつぶされそうだ。
いっそのこと、この想いを伝えられたら、楽になるのだろうか?
スナの一番になりたいーー。
あの日、ちゃんと告白していれば、
俺のこの行き場のない想いにけじめをつけられたのだろうか。
「あれ?早川くんやん。」
ゴミをまとめて運んでいると、中庭付近でジャージを着たピンク髪に呼び止められる。
「おう、鈴鹿か‥部活?」
「そうやで。今サボり中。最近春の試合だなんだで忙しくて。スナくんと絡まれへんし辞めたろかなって考えてんねんけど、スナくんが俺がバスケしてるとこカッコいいって言ってくれたから‥しゃあなしで頑張ってるとこ。」
不機嫌になったり、頬を染めるふりをしたり、表情豊かに振る舞う鈴鹿は面白い。だけど、その笑顔の裏にある本音がいつも見えそうで見えなかったりする。見透かされてるように細められた瞳に、不安になって俺は笑顔でそれを隠しながら適当に振る舞う。
「そっか、いいじゃん、頑張れよ~。」
流れのまま足早に笑顔で立ち去ろうとすると、がしりと腕を掴まれた。なんだよ、びっくりした‥。
「‥昼休みさ、夏樹くんと何話してたん?」
「‥あー、」
「どうせ、スナくん絡みやろ」
俺が鈴鹿のことを苦手と思ってしまうのにはもう一つ理由がある。
こいつは、好意を隠す気がないんだ。
「え、ーっと‥まあ、それもあるけど普通に世間話だよ。」
苦手だ。スナのことを好きだって当たり前のように言うから。俺がおかしいみたいに感じてしまうから。
「ずるいわ‥」
「鈴鹿‥?」
途端、俯いてそう呟く鈴鹿。どことなくその表情は暗い。
「ハチくんもそうやけど、夏樹くんもずるい‥。」
「おい‥近いって」
「なぁ、皆んなして、ずるいと思わん?」
「はぁ?」
至近距離で詰めてくる鈴鹿を避けて後ろに下がっていると、校舎のコンクリートの壁にドンと背中が当たって焦る。こいつ追い詰めるのうますぎかよ。
「なんかスナくんのこと考えてたらムラムラしてきた‥」
「おいおいおい」
「一発ヤッとく?」
つーと撫でられた首筋にぞわっと鳥肌が立つ。
「ひぃ!?文脈おかしいだろ!なんでそうなるんだ!やめろ馬鹿!?」
つか、やっぱりお前のライバル候補の中に俺は入ってないんだな!悲しいし悔しいし怖いしで頭がパンクしそうだっての!
「ぷっ、あはは!早川くんガチ焦りやん!ほんまからかい甲斐あるわ!」
「お前なぁ‥」
「ふふ‥早川くんは、友人ポジやからなんか安心して話してまうわ。スナくんは見る目あるね。てか、そういう早川くんは好きな人おらんの?」
鈴鹿の一言に心臓が嫌な音を立てた。
すぐに浮かんだスナの顔。
「‥、」
「ありゃ、その反応は図星?ええ~めっちゃ気になるやん!知らんかったんやけど!どんな人!教えてえや!」
なんだか、すごく嫌な気分だ。
軽々しくそう口にする鈴鹿に、虚しくなって、
俺は気付けば真顔で口を開いていた。
「‥
誰にも渡したくないし、誰にも触れられたくないぐらい好きな人‥でも
絶対結ばれない人。」
ポカンと、鈴鹿が口を開けたまま固まって。
あぁ、こいつでも分かりやすい表情できるんだなんて他人事みたいに思ってた。
「、‥えぇ‥な、なにそれ、人妻にでも恋してるん‥?」
「まぁ、そんなとこ」
「な、なんか、意外やね。」
「そうか?俺も恋する普通の高校生なんだけど?」
にひっと頭に手を組んでいたずらっ子のように笑ってみせると、さらに驚いた顔をする鈴鹿。
「ッ、早川くんって思ってたより、ミステリアスなんやね。いつもふざけてるから分からんかったけど、そんな顔もできるんや。ちゃんと男の子してるやん。」
「はは、やっと俺の魅力に気づいたか。」
「そやね。なんか危険な匂いがしてムラムラするとこやったわ!」
「おい‥」
「ふふ、冗談やって。あ、やば。そろそろ部活に戻るけど、人妻との恋頑張ってな!ほなね!」
「あぁ、部活頑張れよ~
はぁ‥。」
皆んなして俺になんでもかんでも聞くなっての。
俺だってスナのこと‥
俺、比べてばっかだ、
俺はゴミを捨てて、手を洗ってからとぼとぼと教室へと戻る。
誰もいない教室は静かで、俺はまたため息をつきながら足を踏み入れた。刹那、銀の髪がさらりと揺れて、俺は目を見開く。
え、嘘。
「‥スナ?」
「遅かったなー‥、待ちくたびれた。」
「え、早川、掃除当番なの?今日違う人じゃなかった?」
「田中な、あいつバイトあるから代わってくれって頼まれちゃってさ。」
「そうなん?待っとくけど?」
「いや、大丈夫。スナと2人で先帰ってて!今日寄りたいとこあるしさ。」
「そう‥?なら、そうする。また明日早川!行こうスナ。」
「‥」
「おう!じゃあな~」
放課後になってもまだ気が重いままだった俺は、掃除当番を言い訳に2人の誘いを断ってしまった。
田中から無理やり掃除当番をもぎ取ったのは秘密だ。
昼飯から帰ってきてから、ずっと八谷が俺に対して何か聞きたそうにしていたし、聞かれるのがめんどくさかったのもある。
「‥はぁ、くそ。」
考えすぎて少し休みたくなった。
俺はスナをデートに誘えない。でも、夏樹や他の人たちは
スナを堂々と想ってもいいんだ。
いやただの当てつけ。性格悪すぎだろ俺。
現実を目の当たりにしたら、どんどん自信がなくなっていく。終わりが見えない苦痛が襲ってきて、不安で押しつぶされそうだ。
いっそのこと、この想いを伝えられたら、楽になるのだろうか?
スナの一番になりたいーー。
あの日、ちゃんと告白していれば、
俺のこの行き場のない想いにけじめをつけられたのだろうか。
「あれ?早川くんやん。」
ゴミをまとめて運んでいると、中庭付近でジャージを着たピンク髪に呼び止められる。
「おう、鈴鹿か‥部活?」
「そうやで。今サボり中。最近春の試合だなんだで忙しくて。スナくんと絡まれへんし辞めたろかなって考えてんねんけど、スナくんが俺がバスケしてるとこカッコいいって言ってくれたから‥しゃあなしで頑張ってるとこ。」
不機嫌になったり、頬を染めるふりをしたり、表情豊かに振る舞う鈴鹿は面白い。だけど、その笑顔の裏にある本音がいつも見えそうで見えなかったりする。見透かされてるように細められた瞳に、不安になって俺は笑顔でそれを隠しながら適当に振る舞う。
「そっか、いいじゃん、頑張れよ~。」
流れのまま足早に笑顔で立ち去ろうとすると、がしりと腕を掴まれた。なんだよ、びっくりした‥。
「‥昼休みさ、夏樹くんと何話してたん?」
「‥あー、」
「どうせ、スナくん絡みやろ」
俺が鈴鹿のことを苦手と思ってしまうのにはもう一つ理由がある。
こいつは、好意を隠す気がないんだ。
「え、ーっと‥まあ、それもあるけど普通に世間話だよ。」
苦手だ。スナのことを好きだって当たり前のように言うから。俺がおかしいみたいに感じてしまうから。
「ずるいわ‥」
「鈴鹿‥?」
途端、俯いてそう呟く鈴鹿。どことなくその表情は暗い。
「ハチくんもそうやけど、夏樹くんもずるい‥。」
「おい‥近いって」
「なぁ、皆んなして、ずるいと思わん?」
「はぁ?」
至近距離で詰めてくる鈴鹿を避けて後ろに下がっていると、校舎のコンクリートの壁にドンと背中が当たって焦る。こいつ追い詰めるのうますぎかよ。
「なんかスナくんのこと考えてたらムラムラしてきた‥」
「おいおいおい」
「一発ヤッとく?」
つーと撫でられた首筋にぞわっと鳥肌が立つ。
「ひぃ!?文脈おかしいだろ!なんでそうなるんだ!やめろ馬鹿!?」
つか、やっぱりお前のライバル候補の中に俺は入ってないんだな!悲しいし悔しいし怖いしで頭がパンクしそうだっての!
「ぷっ、あはは!早川くんガチ焦りやん!ほんまからかい甲斐あるわ!」
「お前なぁ‥」
「ふふ‥早川くんは、友人ポジやからなんか安心して話してまうわ。スナくんは見る目あるね。てか、そういう早川くんは好きな人おらんの?」
鈴鹿の一言に心臓が嫌な音を立てた。
すぐに浮かんだスナの顔。
「‥、」
「ありゃ、その反応は図星?ええ~めっちゃ気になるやん!知らんかったんやけど!どんな人!教えてえや!」
なんだか、すごく嫌な気分だ。
軽々しくそう口にする鈴鹿に、虚しくなって、
俺は気付けば真顔で口を開いていた。
「‥
誰にも渡したくないし、誰にも触れられたくないぐらい好きな人‥でも
絶対結ばれない人。」
ポカンと、鈴鹿が口を開けたまま固まって。
あぁ、こいつでも分かりやすい表情できるんだなんて他人事みたいに思ってた。
「、‥えぇ‥な、なにそれ、人妻にでも恋してるん‥?」
「まぁ、そんなとこ」
「な、なんか、意外やね。」
「そうか?俺も恋する普通の高校生なんだけど?」
にひっと頭に手を組んでいたずらっ子のように笑ってみせると、さらに驚いた顔をする鈴鹿。
「ッ、早川くんって思ってたより、ミステリアスなんやね。いつもふざけてるから分からんかったけど、そんな顔もできるんや。ちゃんと男の子してるやん。」
「はは、やっと俺の魅力に気づいたか。」
「そやね。なんか危険な匂いがしてムラムラするとこやったわ!」
「おい‥」
「ふふ、冗談やって。あ、やば。そろそろ部活に戻るけど、人妻との恋頑張ってな!ほなね!」
「あぁ、部活頑張れよ~
はぁ‥。」
皆んなして俺になんでもかんでも聞くなっての。
俺だってスナのこと‥
俺、比べてばっかだ、
俺はゴミを捨てて、手を洗ってからとぼとぼと教室へと戻る。
誰もいない教室は静かで、俺はまたため息をつきながら足を踏み入れた。刹那、銀の髪がさらりと揺れて、俺は目を見開く。
え、嘘。
「‥スナ?」
「遅かったなー‥、待ちくたびれた。」
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