【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見た君は

好きなもの

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「それで夏樹。今日はどうしたんだ?皆んなと食べないなんて珍しいじゃん。」

昼休み。隣には薄茶色の髪を揺らす美少年がお弁当を膝の上に乗せて、緊張した面持ちで口を開く。

「う、うん。聞きたいことがあって‥。あ、あのさ早川。スナの好きなもの‥知ってたりする‥?」

「スナの?」

「ッ、あ、あれだよ、べ、別に深い意味はなくて‥少し前に助けてもらった事があったからお礼というかその‥」

「‥」

把握。
珍しく俺だけを昼食に誘った夏樹。やはりこういう展開かと肩を落とした。

校舎の隅にある庭園は、ロマンチックなお花のお姫様ロードみたいになっていて、ちらほらと昼飯を食べにきた生徒で賑わっている。

そんな花々に囲まれた色素薄い系の美少年。頬を染めてうるうるとした瞳で俺を見つめている。

「うーん‥そうだな‥」

スナの好きなものか。猫。シルバーのアクセサリー。落ち着いた場所。辛いもの。印象に残る音楽。水族館の大きな水槽。実はぬいぐるみとかふわふわした物が好き。

考えている内に中学の頃の思い出が頭によぎり、スナの笑った顔を思い出して心が温かくなった。

ほんと、スナは思い立ったらいつも俺を連れて、色んな場所に行くものだから、毎日楽しくて新鮮で、

そう、俺は新鮮だったけど、スナは地図を見なくても分かるほどに得意げに道を知っていて、まるで誰かと行き慣れているみたいな。


「な、なんでもいいッ!ぼ、僕‥その、スナともっと仲良くなりたくて‥。」

俺の制服の端を掴む仕草は、自分の容姿が武器だって知ってるからこそできる所作だ。普通に可愛くて思わず頭を撫でそうになるのを我慢する。

夏樹とはそんなに話したことはない。ただのツンデレだと思っていたが、ちゃんと考えて行動できる奴だった様だ。頑張ってる姿は応援したくなる。

それと同時に、自由にアピールできる夏樹の環境と行動力がただ羨ましい。

雪の中で愛おしそうに微笑むスナの顔が脳裏に浮かんだ。

俺にはそんな勇気がないから。


「‥あー‥そういえば最近上映してるアクション映画?の続編が観たいって言ってたぞ。チケットでも奢って一緒に観てやれば喜ぶんじゃね?」

「ッ!ほ、ほんと!そっか‥アクション映画‥続編ってことは‥先に予習しとかないと‥ッ!早川、ほんとにありがとう!」

「おう。」

どうせ俺には必要のない情報だし。
そう、俺が誘ったとしてもスナの中じゃただの友人同士の遊び程度で終わる。それならまだ可能性がある夏樹の方が需要があるじゃないか。

それに、少しぐらい邪魔をしたって‥

「えへへ、相談してよかった‥!そうだ!スナってどんな食べ物が好きかな?映画の後にーー。」

花が咲いたように微笑む夏樹に罪悪感が湧いてくる。

ズキリ、ズキリと胸が痛んで、気持ち悪い。
あぁ、なんだこれ。さっきまでぽかぽかしてたのに、今度は痛いや。

が楽しそうに笑い合うところを容易く想像できる。

映画館で2人っきり。手を握るとか?それか映画後に2人で感想を話すんだ。盛り上がって意気投合して、帰り際に次の約束を交わす。

嫌だな、

「早川?大丈夫?」

「え‥あぁ、ごめん。なんだっけ?」

「えっと、スナの好きな食べ物‥いや、こういうのぐらい自分で聞かないとだよね‥。が、頑張るぞ!」

「あ、あぁ、そうだな?頑張れよ夏樹~。」

「うん!ありがとう早川!」


笑いながらも夏樹の笑顔から目を逸らす。自分が醜くて嫌になりそうだ。

その後は上の空のまま予鈴がなって、夏樹と一緒に教室に戻る。

「なになに2人で内緒話?ずるいで夏樹くん?」と夏樹は鈴鹿に詰め寄られていたが、俺はいつも通り何事もなく席に着いた。

俺は馬鹿だ。ライバルに協力するなんて。想像するようなこの後の展開がおきても、全部自業自得だ。そう何度も心の中で呟き、無駄な想像を繰り返しては悲しくなってくる。

一瞬、背後から視線を感じて、ズキリと胸が嫌な音を立てた。いつもなら喜ぶところだけれど今は話せるような状態じゃない。
俺は悪いと思いながらも無視をして、気を紛らわせるように窓の外を眺める。

痛い。苦しい。辛い。


こんな気持ちになるなら‥言わなきゃよかったな。
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