【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見た君は

断ち切る方法

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みっともなく全速力で帰宅して、その日は久々に一日中泣き腫らした。

朝起きて、自分の目が馬鹿みたいに腫れていて、鏡の前で酷い顔の自分を情けなく見つめる。冷やしても何をしても腫れが引くことがなくて、俺はしかたなく仮病を使って学校を休むことにした。

ふとスマホの通知が鳴る。八谷と夏樹からのメッセージだ。

『早川おはよ!大丈夫?どうしたの?』
『体調悪い?ゆっくり休んでね。』

いい奴らだよな。なんて考えながら、『ちょっと風邪をひいた。大丈夫だ。ありがとう』と軽く返信をする。

泣いたなんて絶対にバレたくなかった。
俺の気持ちまでバレそうだから。またスナが不快そうに俺を見るんじゃないかって怖かったから。

布団の中で、ぐるぐると何度も同じことを考える。

たぶん、もうやめた方がいい。自分のためにもよくない気がする。

報われないならいっそ、離れた方が。いや、こんな状態でどうやって‥

この想いを断ち切る方法が思いつかない‥


『気になる人ができたんだーー』

ふと、昨日の出来事を思い出す。俺が誤魔化すためにスナに言った言葉。

あぁ、そうだ‥本当にしちゃえばいいじゃん。別の人を好きになればいいんだよ

そしたらスナに嫉妬しないし、親友のまま側にいられて、スナの幸せを願うことができる。全部うまくいくんじゃ‥?

俺はすぐにゲイのマッチングサイトを検索する。何度か検索したことはあったけど、実際に使用するのは初めてだ。

あ、この人スナに似てるかも‥ッて違う。ダメだそんなの。俺が求めているのは、スナの代わりじゃない。ちゃんと恋愛できる人。

昨日のスナの嫌悪に満ちた顔が忘れられない。

俺が好きでも‥嫌な顔しない人‥。


『a:最低なことをしました。』

ふと、アプリでひとつのタイムラインの投稿が目に入った。

『ずっと好きだった人に結婚すると報告されて、勢いでつい告白してしまいました。ずっと隠しておこうと思っていたのに、感情が昂ってしまいました。』

『気持ち悪い。俺の人生を壊さないでくれと言われやっと自分の愚かさに気づきました。好きな人の人生で特別なイベントですら喜べない自分に心底嫌気がさします。親友と思ってくれていたのに関係を無茶苦茶にしてしまった俺は最低です。もうどうすればいいのか分かりません。自分が汚くて醜くて消えたくなります。こんなことならいっそ』


投稿を読み終えた俺は、数秒スマホを手に黙り込んだ後、即座にアカウント登録ボタンを押してニックネームとメールアドレスを登録する。

顔が見えないようにラフなパーカーに着替えて写真を撮って、勢いのままメッセージを打ち投稿ボタンを押した。


『ツナ缶:勇気を出して告白したの、俺はかっこいいと思いますよ。』

メッセージが反映されて、俺はハッとする。
うわ、勢いでゲイマチアプデビュー。これアイコン顔は映してないし、大丈夫だよな?身バレとかしゃれにならんぞ。あぁ、もう、こんなつもりじゃなかったのに‥。

つい、自分が幸せになりたくて行動したんだから、何も謝ることないじゃないか!なんて思ってしまった。こんなのケースバイケースだし、実際問題、その人からしたら迷惑だったのかもしれないけど‥。でも、かっこいいじゃん‥。俺にはできないことだから、すげえって思ったんだ。

俺はコメントを削除するか、少し迷って更新ボタンを何度もクリックする。

まぁ、何か起きたらアカウント削除すればいいし、これぐらいのメッセ送ったってどうってことないだろ‥。

そう思いながらもなんとなく先ほどの投稿が気になって、ゲイサイトをスクロールしてる内に、画面上部にスナのアイコンが点滅して、俺は驚いてスマホを落としそうになった。

『さっさと体調直して来い。』

ただの友人に送る短い文章。なのに、嬉しくて舞い上がる自分が情けない。

俺はギュッとスマホを握りしめる。
俺より、ずっと素敵ですよ貴方は。俺は立ち止まったままで、貴方みたいな勇気もないから。

スナ‥
本当に俺はダメなやつなんだ。すぐにお前の顔が見たくなる。お前の声が聞きたくなる。

俺だけを見て、俺の名前を呼んでほしい。優しい声で俺に笑いかけてほしい。

‥こんなの気持ち悪いよな。

アプリに投稿していたあの人は勇気のある人だ。後からでもちゃんと相手のことを考えてた。そんな素敵な人はきっと前に進める。幸せになれる。

でも俺はあの人みたいに伝えることはしないだろう。伝えたとしても、スナの周りの人間を恨みそうで怖い。だから、その代わりに

お前のこと、頑張ってちゃんと諦めるから。

もう少しだけ、待ってて。お前のこと好きなの絶対に消すから‥ごめんな。

ごめん




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