【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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甘い土曜日③

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「まずは何からするの?」

俺はスナに問いかける。スナが顎に手を置いて、悩んだそぶりで口を開いた。

「んー、そうだな。昨日少し調べたんだけど、本に書いてあることとか、ネットに書いてあること‥早川に、試してみてもいいか?その、嫌なことはしないから」

本当に、調べたりしてるんだ‥。
なんだか、新しいスナの一面を知って、不思議と得意な気分になる。


「いいよ。‥俺、スナとなら‥」

ボソリと俺はそう告げて、驚いた表情から優しい笑顔に変わるスナに頬を赤くした。

どきどきと胸が高鳴る。どんなことをするのだろうか?質問大会とか?自分のことやスナのことを話してみたり?

そんなことを呑気に考えていた俺は、

後々、後悔することになるーー。



「じゃあ、さっそく始めるか」

「うん、なにすーー」

「まずは‥

病み上がりだし、今日はゆっくり休もう。風太ーー。」

「っ、へ?」

チュッと額に柔らかい感触がして、俺は目が点になる。
え、今、き、きす‥てか、な、名前で読んだ‥?

「名前で呼ばれるとドキドキするかどうか。俺の名前も呼んでみて、″風太″?」

おの前にしゃがんで、首を傾げるスナはテレビのどんな俳優さんよりかっこよくて。
名前を呼ばれるたびに、ドキドキと心臓が飛び出しそうになる。

なにが、おこってるんだ?
これ、夢か?

「な、‥え?は?」

「ほら、早く‥」

少し拗ねたように急かすスナ。
スナの名前を‥?恋人みたいに呼び合うのか?

俺が?

俺はゆっくりと口を開く。

「み、みこと‥」

震えながら、小さくそう告げると、目の前のスナがニコリと笑った。

「なに?風太」

「っ、!?!?」

平然と俺に微笑むスナに俺は心の中で叫んだ。
だ、ダメージ食らってるの俺だけじゃん!?
なんだよ、これ‥思ってたのと違う‥!
恋愛初心者の俺にとって、ハードモードすぎて、心臓が爆発しそうだって‥。

「そうだ!映画でも観るか?あ、でもそろそろ親御さん帰ってくるよな‥」

思いついたように目を輝かせて、途端にしょぼんとするスナ。俺は少し高鳴っていた鼓動が落ち着いて、子どもみたいなスナにクスリと微笑んだ。

「大丈夫‥母さん休日はばあちゃんの家に顔見せに来いって言われてて、いつも泊まりなんだ。」

「そっか‥はやっ‥風太は寂しくねえのか‥?」

心配そうに俺を見つめるスナの目元を見て、俺は目を細める。

「ふふ、俺もう子どもじゃないし、慣れてるよ。てか、呼びにくいならいつも通りでいいよ、みことくん?」

「っ、‥やだ‥俺も名前で呼びてえ‥」

ぷくっと頬を膨らませて、また拗ねたような表情に戻ってしまったスナに俺は首をかじげる。
俺も‥?どういう意味だろう。

「‥」

「うわ!?‥、スナ!?な、なにこの体勢‥」

急に俺を持ち上げるスナに驚く。
そのままぎゅっと背後から抱きしめられて、俺は首筋に触れるスナの熱い息にぶわりと震えた。

「みことだって‥そう呼べよ‥。バックハグすると、ドキドキするかどうかの検証‥」

「どんな本見てるんだよ!?」

少女漫画じゃあるまいしっ!
いや、‥まさか、勉強の本って‥

「なぁ‥手繋いでもいいか?」

「そ、それも本に書いてあったのか?」

「‥あぁ‥」

絶対に少女漫画読んでる‥!

「くっ、いいよ‥ほら」

俺はもうなんとでもなれ!という気持ちでぶっきらぼうに手を差し出す。

スナの気持ちが少女漫画展開で分かるっていうのなら、いくらでも付き合ってやるっ。


「ぷっ、早川の心臓、すげえドキドキ鳴ってる‥」

小馬鹿にしたように笑うスナはたぶん俺の反応を楽しんでいて。

俺は余裕のあるその姿に、少し弱気になった。

やっぱり‥俺だけなんじゃ。


「っ、う、うるせえ!」

「なぁ、触ってみてここ」

ふいに耳元でそう呟かれて、俺はくすぐったくて身じろぐ。

「な、なに、っ、」

そっと握った手が、スナの心臓に触れる。
大きく振動する感覚がして、俺は目を見開いた。
スナの心臓もーー。

「友達相手にはこんなふうにならないよな?」

「う、うん。たぶん‥」

「そっか‥」

考えるように微笑むスナは、すごく綺麗で。
心臓がもたないかもしれない。と、俺はそんなことを考えていた。


「俺、今すげえ心があったけえんだ‥。満たされてるって感じがする。
なぁ、明日少し行きてえ場所あるんだけど、一緒に行かねえか?ちゃんと体調が回復したらだけど。」

スルリとスマートに恋人繋ぎになった手を見ながら、俺はスナの言葉に歓喜した。


「い、行きたい!スナ!‥みことと久しぶりにふたりきりで‥あ‥」

「ふはっ、そうだな、デートに行こう?風太」

「な、‥!デッーー」

その後はふたりでコメディ映画を観て、たくさん笑った。

夜になれば、ほとんど回復していて、軽い夕食を作って2人で食べる。
手伝ってくれたスナが野菜を切ってくれて、一緒にキッチンに並ぶのはすごく楽しかった。

スナには一緒に入ろうとまた誘われたけど、自覚しろと今回は別々で風呂に入った。
2人でベッドで思い出やお互いの事を語り明かす。

ふいに頬に触れた体温が心地よくて、俺は目を閉じた。

その日、俺は幸せで。
他のことを全部忘れていた。

俺たち以外の誰かが、何を考えているかなんて全く想像もしないまま、幸せな明日を夢見て眠りについた。

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