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ペア戦開幕
傷口
しおりを挟むルド「ここに座れ。」
お馴染みの控え室のソファーに強引に座らされる。
隣に座ったリカルド様は、わたくしの血塗れの汚らわしい腕をとり、瞳を閉じた。
ルド「光よ‥彼女に聖なる癒しを
ライトヒーリングーー」
刹那、温かい光が、わたくしの手を包む。
回復魔法‥使う事が出来たのですね‥。
徐々に回復していく傷よりも、
目の前で祈るようにわたくしの腕を包むリカルド様をずっと見つめていました。
ルド「ふぅ‥これでいいな‥。」
そっと離れた腕。
少し寂しさを覚えて目をそらす。
ラピス「平気でしたのに‥」
ルド「あ〝ぁ?」
ラピス「‥いえ、ありがとうございますわ‥。」
ルド「ふん、お前は矛盾している。
レディには叩くなと言うわりに、
女の肌が傷つくのは平気だと‥?
は、馬鹿げているな。
傷物にでもなれば、将来お前を引き取る男もいなくなるだろう。
なんせ、お前は顔だけの良い変人だからな。」
ラピス「‥それは、褒められてますの?それとも貶されていますの?」
ルド「‥いや‥そんなの事を言いたかったんじゃない‥」
急に黙り込むリカルド様。
その表情は困惑していて、
わたくしは首を傾げた。
ルド「ただ‥
‥はあ、俺は心配したんだ。お前ごときを心配し、傷ついた時、怒りを覚え不安さえも覚えた。」
ラピス「リカルド様‥?」
‥何故そのような‥
リカルド様は勝ちたかっただけ。
それが望み。ただそれだけ。
わたくしは、偶然にその目指すべき道の道具になっただけです。
勝手に友人だと、そんな馬鹿げた事を想像して、
本当はいつものわたくしの心遊びでしたのに‥。
なのに
ルド「‥。とにかく‥お前は‥
俺にとって‥少しは大事なものということだ‥。
仕方ないが、認めてやる。
お前は、この王族であるリカルド・クローリーの友人だ。
ルドと相性で呼ぶ事を特別に許す。
わかったな。
これからは自分を大事にしろ。
いいな?友人ラピスよ。」
ありえませんわ‥。
ずっと1人だとそう思って生きてきました。
誰かに必要とされるのは、利用される時だけだと、
だけど、
自分を‥大切に‥
ラピス「は、い‥リカルド様‥。」
ルド「違うだろ‥お前は王族の、そして友人の命を背くのか?」
だって、こんな‥
こんなわたくしが
幸せになっても‥いいのですか?
ラピス「‥る、ど‥。ルド。」
ルド「ふ‥なんだ?ラピスーーー」
ラピス「ふふ‥呼んでみた、だけですわ‥
そして、改めまして、
優勝、おめでとうございます、ルド」
ああ、
これが嘘だとしても
利用する上での優しさでも
今はかまわない。
少しだけこの温度に溺れましょう。
ルド「ああ、お前もなラピス。」
差し出される右手の拳
私は、そっと、その拳にこつりと左手のそれを当てたのでした。
ーーーー
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