希望を歌う悪の姫

聖女召喚

兄妹

ペア戦から三年の月日が流れ‥
お話は高等部の入学式の前日に遡ります。





入学式の前の
長期休暇の際、

久々にお父様から呼び出されました。
お父様からの呼び出しは、
これで二度目。

一度目はペア戦後、
禁忌魔法の使用についてのお叱りに‥
どうやら、先生に幻術を使い、
あの魔法が安全であると思わせたようです。
なので、問題にはならなかったようですが‥

本当にお父様は恐ろしい‥


あの後、ミカロス様は無事回復なされて、
今では高等部の先輩。そして、王国騎士の副団長として、同じく団長になられたサラマンダー様と共に、活躍なされています。

たまにサラマンダー様とミカロス様と廊下で顔を合わせることがありましたが、
ミカロス様は
ペア戦の出来事のせいか、顔を真っ赤に染め俯いてしまうのがとても残念です‥。

サラマンダー様はいつも通り怖い顔で睨んできますわ。
ただ殺意などは無くなった気がします。



そうそう、
ペア戦で優勝した事もあり、注目されていたわたくし達は、
中等部の終わりに見事、王国騎士団からのスカウトを受け、

ルドは今、王国騎士団の期待のエースに。


わたくしは、クローリー家からの連絡が来るまでは動けませんので保留状態にして頂いています。




とにかく、この三年、
わたくしは勉学に励み、
人間を追い回し、避けられ、

ショックで
小動物と歌い、
時にはルドと踊り‥

たくさんの学生生活を楽しみました。






父「オニキス‥必ずや、聖女と縁を築け。
うまくいけば、我がクローリー家は、王国の子となる。分かったな？必ずだ。」




御父様の書斎。
内容は王室騎士団の承諾の件だと思っていましたが‥


近々、
聖女召喚が行われるというお話でした。
流石お父様‥どこからそんな情報を仕入れてくるのやら




オニ「‥承知しました‥。」


父「そしてラピス。お前はこのできそこないのサポートに回れ。お前も同じく失敗は許されない。分かっているな？」


「はい、もちろん‥。」


オニ「‥。」



聖女召喚
魔王が誕生した時代に、それに対抗する力を王国が異世界から召喚する。

歴代から乙女が召喚された事から、
聖女召喚と呼ばれています。


そして、聖女様が心に決めた殿方は、
身分関係なく、必ずこの国の王となることが許されるのです。




‥‥


オニ「鬱陶しい。そうは思わないか？ラピス」

一歩先を歩くオニキスお兄様。
また背が高くなられたのかしら‥
随分会っていないから‥



「御父様の命令は絶対ですから」

オニ「は、いくらできそこないとはいえ、次期当主は俺だ。
俺に媚を売っておけ‥。その分の褒美は後々必ずお前に返そう。」


「‥オニキスお兄様‥。
次期当主は必ず、オニキスお兄様になります。それはわたくしも心から願っておりますし、それ以上に、
お兄様には当主としての才能があります。」

オニ「クク‥人を地獄に落とす才能か？」

「‥。」

オニ「まあ、いい。
聖女の件、頼んだぞ‥。
これは、鬱陶しい案件だが、
俺にとって損はない。
ラピス、俺に楯突く邪魔者を全て排除しろ。」

「‥‥承知、しましたわ‥」

オニ「いい子だ。俺は聖女召喚までやる事がある。お前はそれまで、最後の学生ごっこでも楽しんでいろ。

じゃあな」






遠くなる後ろ姿。



馬鹿な人‥。





「‥


わたくしは‥出来損ないなどと思ったことはありませんわ‥オニキスお兄様。」






これから始まる事が、
貴方が行う事が、
とても恐ろしく醜くても‥

わたくしは‥

貴方を恨むことはありません。



小さく呟いた声は、空に消えていくでしょう。





見放されたのなら‥
利用されるだけと分かっていながら‥
こんな家などおいて、出ていけばいいものを‥





オニ「‥



馬鹿な妹だ‥。

こんな家など‥さっさと捨ててしまえばいいものを‥」





本当に‥馬鹿な兄様







聖女召喚


わたくし達クローリー兄妹の
運命が決まる‥