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聖女召喚
現れた乙女
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とある神殿内。
神官は、召喚の儀を唱える
美しい水上に描かれた魔法陣は、
眩い光を放ち、その時を待つ
リーン‥
「‥‥ー来たれーーー天よりいでし守の者よーー我が大地を救いたまえ!!!ーーー」
リーーン‥
リーーーーーン!!!!
激しく鳴り響く鈴の音
水上が盛り上がり、
刹那、
パシャリと弾けたーー
「き、
ぃやああああああッ!!!?」
水滴の中から現れたのは
栗色の髪を後ろで高く結び、
黒い瞳をした少女の姿。
黒の瞳は異世界人の印ーー
神官「やった!やったぞ!!
王様!!!成功です!!!
この方が、我々を
この国を救う
聖女様です!!!」
聖女「な、なに‥?!ここ、どこ?!」
王「うむ‥、其方、名は?」
聖女「わ、私ッ!?私は‥高橋 鈴‥ですけど‥。おじさんは‥、誰?」
王「タカハシ リン‥変わった名じゃ‥。
そういえば、
異世界では姓と名が逆じゃったのう‥
ならば、
お前は、聖女リンか。
儂はこのクラウン王国の王、ドルド・クラウンじゃ。
魔王誕生に伴い、
儂らは、この国を、この世界を守る者を召喚した。
それが、お前‥リンじゃ。
聖女リンよ、どうかこの国を、この世界を救ってくれ‥。」
少女は、目の前の光景に、その言葉に目眩がした。
魔王、聖女、異世界‥召喚‥
見慣れた言葉が、目の前の金色の髪と目の美形なおじさんから溢れ出す。
リン「ま、まってよ‥世界を、救う‥??
はは、ファンタジー異世界小説みたいなセリフ‥
って、これって夢?映画の撮影とか?
というかっ!!
‥わたしが‥
聖女‥?!?!
どええええええええええええええーーー!?」
少女は叫ぶ。
なんせここは、自分が憧れていた世界。
こんな事があっていいのだろうか、
これは夢ではないのだろうか、
何もない平凡な日常が、
つまらない日々が、
変わるーーー
声が枯れた頃、
彼女は乱れた息を整えながら、
落ち着いて辺りを見回した。
王様ーードルド・クラウンの
後ろで、こちらを眺める美少年達。
目が合うと、
各々様々な反応をする。
リック「聖女リン・タカハシ‥。変な名前」
第四王子リックが、ポツリと呟いた。
まだ10歳と幼い彼は、
無表情で聖女を見つめる。
その表情は大人びていて、
隣にいたアルベルトは、苦笑いした。
アル「まあ、異世界の名前だからね。衣装も変わっているし、文化も違うんだろうね。」
クラン「あれが聖女様だよね?凄く綺麗‥。アル兄さん!!俺、挨拶してきていいかな?」
アルベルトが、リックの頭を撫で始めたところで、
第3王子クランが、そわそわとアルベルトを期待を込めた瞳で見つめてくる。
第3王子クランーー
リカルドと数ヶ月違いで生まれた彼は、
幼い頃からの剣才であり、
15という若さながら、王国近衛騎士の副団長を任されている期待の王子だ。
だが、頭の出来が少し悪いのか、素直すぎるのか‥少々‥。
アル「クラン、落ち着いて。まだお許しが出ていないでしょ?」
リック「クラン兄‥気持ち悪い‥」
クラン「リックひどい!!う~わかったよ~。
ねえ!リカルドはどう思う?聖女様はとても綺麗だと思わない?あんな透き通った黒い瞳、俺は見たことないよ!」
ルド「‥あぁ。」
つまらない‥。
リカルドは、神殿の泉を眺め、
ひとりの少女の姿を思い浮かべていた。
彼女なら、この泉の上が似合うだろう。
喜んで踊り歌うであろうと。
リック「‥ルド兄さん‥?どうしたの?」
ルド「‥いや、なんでもない。少し考え事をしていただけだ。
俺は戻る。」
クラン「もう戻るの?聖女様に挨拶していけばいいのに」
ルド「‥友人に用があるんだ。」
アル「‥友人、ねえ‥。」
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クランは不思議そうに、
リックは興味をなくし、
アルベルトは目を細めた。
聖女リンは、そんなリカルドの後ろ姿を、
じっと見つめていたのだった。
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