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聖女召喚
親交のダンス
しおりを挟むルド「っー、イッーー何をする!!」
わたくしはルドを自らの膝から転がり落とし、
スッと立ち上がると、クラン様の前に歩み寄る。
ルド「おい‥聞いているのか!?」
クラン「っ、な、なに‥?」
少し近づいただけですのに、頬を真っ赤になさるこのお方は、とても可愛らしくて‥
「お初にお目にかかります。クラン様。わたくしラピス・クローリーと申しますわ。以後、お見知り置きをーー」
制服のスカートを少し持ち上げ、礼をする。
クラン「クローリー‥君がアル兄を‥。うん、よろしくラピス。知ってるだろうけど、俺はクラン・クラウンだよ。」
やはりクローリー家の名は、王家では知り渡ってますのね。
にこりと握手を求められ、その手をとる。
「よろしくお願いしますわ。ところでーー
クラン様はダンスはお好きですか‥?」
ルド「おい!ラピスッ!?」
ルドの焦った声が聞こえてきますが、レディに失礼な殿方は無視ですわ。
クラン「‥?嫌いではないけど‥どうして?」
「ふふ、では一曲、わたくしと踊ってくださいませんか?」
王家の方という意味もありますが、
なんともうぶで可愛らしいこの方と、是非
親交を深めたいのです。
クラン「へ!?こ、ここで?いやでも俺、そこまで上手くないし‥」
「ご心配なく!ダンスとは楽しむものです。さあ、こちらへ!」
ひらけた方へと、クラン様の手を引いて走る。
振り返ると不機嫌なルドの姿と、こちらを唖然と見つめる聖女様。
そして、わたくしに引っ張られ、焦るクラン様がいて‥
わたくしは、クラン様の手を強く握る。
クラン「ちょっ!?まってまって!!音楽もないし、俺本当は苦手で!?うわっ!?ち、近い‥よ‥。やっぱりやめよ!俺、いつも緊張して足踏んじゃうし‥」
「ふふ、わたくしごときに緊張なさるのですか?レディの誘いを断り‥更にレディの前で情けない弱音を吐きだすなんて‥見損ないましたわ‥それでも紳士ですの?」
にこりと微笑んで毒を吐くのは、お兄様に似たからで、決してわたくしの本質では無いと思いたいですわ。
クラン「うぐ‥君、顔に似合わず厳しいね‥。」
少し緊張がとけたのか、震える手が止まって
やはり、プライドが高いところは、ルドそっくりですわ。
「音楽が欲しいのなら、わたくしが歌いましょう。踊りが苦手なら、わたくしがリード致しますわ。なんせわたくしは完璧なレディですから!!」
ルド「どこが完璧だ‥お前はただの変人だ。」
「‥ルド、煩いですわ‥
クラン様、礼義など今は必要ありませんし、求めてもいません。わたくしは、堅苦しいものが1番嫌いなのです、だから
感情のままに楽しく踊りましょう?
わたくしはクラン様と仲良くなりたいのです。
わたくしと、踊っていただけますか‥?」
ルド「‥俺の時は無理やりだった癖に‥」
当たり前ですわ。
ルドは素直で可愛らしくありませんもの。
無理矢理が1番手っ取り早いのです。
クラン「うん‥わかった‥。踊ろうラピス!」
ほら、真っ直ぐな彼は、微笑んで
わたくしの手を握ってくれます。
「ふふ、ありがとうございます。ルドはーーリン様と踊られてはどうです?
レディを一人残すなんて‥最低野郎ですわよ?」
リン「ふえ!?」
ルド「き、さ、ま‥ッ」
ルドが今にも怒り狂いそうなので、
わたくしはクラン様にそっと寄り添います。
クラン「ッ!!お、おお俺ーー」
「ひとつ おちて はじまる
よろこびの ねを」
クラン「っ!!」
わたくしの歌声と共に、小動物達が動き出す。
兎は草木を揺らし、
栗鼠達は木の幹に木の実を落とします。
小鳥はその綺麗な声をのせて
シャラリーーコンコンーーチロロローー
クラン「う、わぁ‥すごい‥凄いよラピス!!」
ゆっくりとリズムをとり、音楽を奏で、歌いながらわたくしはクラン様に微笑みました。
クラン様はとても楽しそうで、まるで子どもの様にはしゃいでいて、
くるくると森を回っては、
クラン様の楽しそうな笑い声が響き渡ります。
ルド「‥」
リン「た、たのし、そうですね?」
ルド「‥踊りたいか‥?」
リン「っ!?い、いいんですか?」
ルド「はあ‥ダンスの経験は?」
リン「ご、ごめんなさい‥小学生のタップダンス以来で‥」
ルド「‥?まあ、いい。来い。リードする。」
リン「は、はい!!!」
ルドは聖女様の手を優しくとります。
流石、本物の王子様。
エスコートは完璧ですわ。
聖女様も、その姿にうっとりとしています。
ふふ‥やはり仲良くなるには、ダンスが1番ですわね‥。
クラン「‥。ねえ、色々分かってて俺をダンスに誘ったんだね。」
突然、表情が大人びて‥わたくしを見透かしたようにそう言うクラン様。
この方‥おとぼけているようで、よく回りを見ているようですわね。
少し侮っていた様ですわ。
「‥ふふ、何のことですの?」
クラン「ううん。なんでもない。リンも楽しそうだし、俺も楽しいし!君って凄いねって事!!ほら!もっと回ろう!!」
ギュッと引き寄せられ、グルグルと世界が回る。
「あまり無理をなさると、あとで気持ち悪くなりますわよ?」
クラン「大丈夫!ほら!回って回って!!」
まあ、楽しそうだから‥いいですかね。
その後、目が回ったクラン様がダウンしてしまわれましたので、
ダンスはお開きになったのでしたーー
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