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しおりを挟む「俺はッお前を連れ戻すためだけにここに入学した。それ以上の目的はない。好きだーー、美鈴。ずっと、お前のことが好きだった。」
俺の目の前で、俺の家族が、別の誰かにそう告げた。
平日の昼下がり。学園の食堂のど真ん中で、騒ぎの中心にいる人物達を俺は呆然と見つめる。
自分と関係のある話のはずなのに、何故か自分だけが蚊帳の外の様な気分になるのは、俺の夫であるはずの彼が、俺に一切の関心も抱いていない為だろうか。
急激な少子高齢化共に未婚化が進み、危機状態なこの時代。
男子の身体をも特殊な妊娠可能薬で出産を可能にし、同性愛は日常で常識の一部になった。
ただ稀に、偏見を持つ者もいるが、そこは人それぞれ生まれ持っての好みの問題だと思う。
そんな中、発足された新しい制度。
【First Wedding School】。略してFWS制度は、
主に結婚願望のある、身寄りや出会いの無い16才以上19歳未満の子ども達が、AIによってマッチングされた相手と、仮結婚という形式で、実質同棲をしながら学問を学べる制度である。
それ専門の学園へ通いながら、マッチングされた仮夫婦は同じ寮部屋で暮らし、高等部を卒業する時点で、結婚するか否かを自身らで決めるのだ。
卒業後の結婚継続率は約70%。希望制で強制では無いが、仮だとしても離婚歴がつくことから遊び半分で参加する奴はそうそういない。
でもこれは‥
「ねえ‥これ、誰か止めなくていいの?」
「よかった‥僕の相手は本気で」
「シッ、あの子が可哀想でしょ!」
「ッ‥」
抱きしめ合う2人の男女。
俺は俯いてぎゅっと拳を握りしめる。
こんなものは、想像していなかったんだ。
だって、そうじゃないか。結婚をして、誰かの家族になりたかった。それが目的だ。その為の制度で学園だろ。なのに‥このザマだ。
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