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急激な少子高齢化共に未婚化が進み、危機状態なこの時代。
男子の身体をも特殊な妊娠可能薬で出産を可能にし、同性愛は日常で常識の一部になった。
ただ稀に、偏見を持つ者もいるが、そこは人それぞれ生まれ持っての好みの問題だと思う。
そんな中、発足された新しい制度。
【First Wedding School】。略してFWS制度は、
主に結婚願望のある、身寄りや出会いの無い16才以上18歳未満の子ども達が、AIによってマッチングされた相手と、仮結婚という形式で、実質同棲をしながら一般高等部の学問を学べる制度である。
FWS専用の高等学校へ通いながら、マッチングされたパートナー達は、同じ寮部屋で暮らし、高等部を卒業する時点で、結婚を継続するか否かを自身らで決めるのだ。
卒業後の結婚継続率は約70%。希望制で強制では無いが、結婚を拒否した場合は離婚歴がつく。
遊び半分の者が集わないように、様々なシステムや審査があるのも特徴だ。
俺としても、お互いの将来を真面目に考えられる奴の方がいいからありがたい。
「以上で、入学式を終わりますーー。」
「はいはい、まだ騒がない!新入生の皆んな!パートナー分けがあるから、事前に伝えてあったクラスの看板の前へ集まって!」
校長の話が終わり、起立礼、着席の合図と共に、講師と思われる茶髪の男性が、騒がしい生徒達を誘導する。それに従って、俺も自分のクラスの方へと足を進めた。
確か今年のクラスは3クラスあって、俺はその中でCクラスだ。
クラスに格差は無く、パートナーと共にランダムに選ばれる。
イコール、このCクラスの中に俺のパートナーがいるという事になるわけだが、誰だ?どいつが俺のパートナーだ?
「いや~、このクラス可愛い子多くね?ラッキー」
あのチャラそうな赤髪か?
「あの、先生‥私お手洗いに行ってもいいですか?」
具合が悪そうな三つ編みの子か?
「‥はぁ」
鬱陶しそうにため息をついているあの眼鏡か?
それとも
「‥」
隣のクラスをじっと見つめる男。
染めて傷んだ金髪と赤色のピアスがキラキラと光っている。彼の異常なほど冷めた雰囲気が、どこかイラついているように感じて俺は首を傾げた。
何故、今から家族ができるのにそんな表情をするのか、先程からじっと動かずに一点だけを見つめている。何を見てるんだ?
俺は気になって、彼の視線の先を追う。
「凄くドキドキするね~。私のパートナーどんな人だろ?」
Bクラスと書かれた看板のすぐ側で、友人と話す黒髪の生徒。動くたびにサラサラとした髪が揺れて、周りの男達が見惚れているのがわかる。
まさか、あの子を見ているのか?
クラスは違うからパートナーにはなれない。それなのに、どうしてそんな切なげな目で彼女を見るのだろう。
まるで、彼女に恋しているかのような。
嫌な予感がした。
「それじゃあパートナーを発表する。呼ばれたら順にパートナーと共に2列で並んでいけよ~。まずはーー」
順に呼ばれていく生徒達。パートナーが分かると、照れたような反応をする奴もいれば、焦ったように苦笑いしてる奴もいる。
後者はきっと異性愛者だったのだろう。
パートナーは同性の男の生徒で、そいつはやれやれといった顔をして、慣れたように焦るパートナーに話しかけ場を和ませていた。
あんな風に反応されたら‥俺は彼のように対応できるだろうか。
急に不安がのしかかってきて、俺は息が詰まりそうになる。流れるように名前が呼ばれていき、自分の番が近づいてきて、俺はゆっくりと深呼吸して胸を落ち着かせた。
もうすぐだ。もうすぐ‥
「染谷 白哉(そめたに しろや)」
俺に家族ができるーー。
「パートナーは、」
ずっと、ずっと望んでいた事。
もうこれからは一人ぼっちじゃないんだ。
だって、たった1人の俺の大切な
「東條 蓮(とうじょう れん)‥って、何処行くんだ東條ッ!?」
大切、な
刹那、スッと俺の横を通り過ぎていく金髪の男。講師が彼に向かって東條と、そう叫んだ。その瞬間、俺の心はざわざわと不穏な音を立てる。
パートナーは俺だと分かっていたはずだ。だって俺はもう動き出していたし、名札だってつけている。それなのに、俺の事を一切見ようとしなかった。嫌な予感が現実となって押し寄せてくる。
「美鈴ーー。」
隣のクラスの方へと向かっていく彼が、名前を呼ぶ。もちろん、俺じゃない。
会場にいる全ての人が注目して、その展開を見届けようとしている。彼の呼ぶ声に反応して、黒髪の少女が驚いたように目を見開いた。
「蓮ッ!?どうしてここにいるの!?」
「美鈴‥帰ろう。こんなところにいちゃだめだ。」
こんなところ、彼から出たその言葉に周りの生徒がコソコソと不満を呟いている。
「っ!?ちょっとッそんな言い方しないで!どうしてついてきたのよ!?」
「美鈴が勝手に出て行くから‥おばさん達も心配してる。」
「ッ何よ今更ッ‥どこで何しようと私の勝手でしょ‥。それにっ、蓮には関係ない。」
「関係あるよ。俺、美鈴が好きだから」
「え‥」
男子の身体をも特殊な妊娠可能薬で出産を可能にし、同性愛は日常で常識の一部になった。
ただ稀に、偏見を持つ者もいるが、そこは人それぞれ生まれ持っての好みの問題だと思う。
そんな中、発足された新しい制度。
【First Wedding School】。略してFWS制度は、
主に結婚願望のある、身寄りや出会いの無い16才以上18歳未満の子ども達が、AIによってマッチングされた相手と、仮結婚という形式で、実質同棲をしながら一般高等部の学問を学べる制度である。
FWS専用の高等学校へ通いながら、マッチングされたパートナー達は、同じ寮部屋で暮らし、高等部を卒業する時点で、結婚を継続するか否かを自身らで決めるのだ。
卒業後の結婚継続率は約70%。希望制で強制では無いが、結婚を拒否した場合は離婚歴がつく。
遊び半分の者が集わないように、様々なシステムや審査があるのも特徴だ。
俺としても、お互いの将来を真面目に考えられる奴の方がいいからありがたい。
「以上で、入学式を終わりますーー。」
「はいはい、まだ騒がない!新入生の皆んな!パートナー分けがあるから、事前に伝えてあったクラスの看板の前へ集まって!」
校長の話が終わり、起立礼、着席の合図と共に、講師と思われる茶髪の男性が、騒がしい生徒達を誘導する。それに従って、俺も自分のクラスの方へと足を進めた。
確か今年のクラスは3クラスあって、俺はその中でCクラスだ。
クラスに格差は無く、パートナーと共にランダムに選ばれる。
イコール、このCクラスの中に俺のパートナーがいるという事になるわけだが、誰だ?どいつが俺のパートナーだ?
「いや~、このクラス可愛い子多くね?ラッキー」
あのチャラそうな赤髪か?
「あの、先生‥私お手洗いに行ってもいいですか?」
具合が悪そうな三つ編みの子か?
「‥はぁ」
鬱陶しそうにため息をついているあの眼鏡か?
それとも
「‥」
隣のクラスをじっと見つめる男。
染めて傷んだ金髪と赤色のピアスがキラキラと光っている。彼の異常なほど冷めた雰囲気が、どこかイラついているように感じて俺は首を傾げた。
何故、今から家族ができるのにそんな表情をするのか、先程からじっと動かずに一点だけを見つめている。何を見てるんだ?
俺は気になって、彼の視線の先を追う。
「凄くドキドキするね~。私のパートナーどんな人だろ?」
Bクラスと書かれた看板のすぐ側で、友人と話す黒髪の生徒。動くたびにサラサラとした髪が揺れて、周りの男達が見惚れているのがわかる。
まさか、あの子を見ているのか?
クラスは違うからパートナーにはなれない。それなのに、どうしてそんな切なげな目で彼女を見るのだろう。
まるで、彼女に恋しているかのような。
嫌な予感がした。
「それじゃあパートナーを発表する。呼ばれたら順にパートナーと共に2列で並んでいけよ~。まずはーー」
順に呼ばれていく生徒達。パートナーが分かると、照れたような反応をする奴もいれば、焦ったように苦笑いしてる奴もいる。
後者はきっと異性愛者だったのだろう。
パートナーは同性の男の生徒で、そいつはやれやれといった顔をして、慣れたように焦るパートナーに話しかけ場を和ませていた。
あんな風に反応されたら‥俺は彼のように対応できるだろうか。
急に不安がのしかかってきて、俺は息が詰まりそうになる。流れるように名前が呼ばれていき、自分の番が近づいてきて、俺はゆっくりと深呼吸して胸を落ち着かせた。
もうすぐだ。もうすぐ‥
「染谷 白哉(そめたに しろや)」
俺に家族ができるーー。
「パートナーは、」
ずっと、ずっと望んでいた事。
もうこれからは一人ぼっちじゃないんだ。
だって、たった1人の俺の大切な
「東條 蓮(とうじょう れん)‥って、何処行くんだ東條ッ!?」
大切、な
刹那、スッと俺の横を通り過ぎていく金髪の男。講師が彼に向かって東條と、そう叫んだ。その瞬間、俺の心はざわざわと不穏な音を立てる。
パートナーは俺だと分かっていたはずだ。だって俺はもう動き出していたし、名札だってつけている。それなのに、俺の事を一切見ようとしなかった。嫌な予感が現実となって押し寄せてくる。
「美鈴ーー。」
隣のクラスの方へと向かっていく彼が、名前を呼ぶ。もちろん、俺じゃない。
会場にいる全ての人が注目して、その展開を見届けようとしている。彼の呼ぶ声に反応して、黒髪の少女が驚いたように目を見開いた。
「蓮ッ!?どうしてここにいるの!?」
「美鈴‥帰ろう。こんなところにいちゃだめだ。」
こんなところ、彼から出たその言葉に周りの生徒がコソコソと不満を呟いている。
「っ!?ちょっとッそんな言い方しないで!どうしてついてきたのよ!?」
「美鈴が勝手に出て行くから‥おばさん達も心配してる。」
「ッ何よ今更ッ‥どこで何しようと私の勝手でしょ‥。それにっ、蓮には関係ない。」
「関係あるよ。俺、美鈴が好きだから」
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