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イベリスの見た景色 2
しおりを挟む――飲みかけのジュースなんか渡して、先輩ってば何がしたかったのかなぁ……。
教室までの廊下を小走りで進みながら、さっきの出来事を思い浮かべる。
プレゼントがどうこうって言っていたけど……そんなにウチにあれ飲んでほしかったとか? うーん、だったら貰ってすぐに先輩に返しちゃったのはよくなかったかなぁ。せめて一口飲んでからとか……で、でも一口飲むって言ったって……。
先輩から差し出されたあの紙パックが脳裏に浮かぶ。特に強く印象に残っているのは、飲み口であるストロー部分。
ひ、一口飲むってことは、あのストローに口をつけるってことで……そ、それってつまり……か、間接キスってことに……。
「あぅ……」
思わず変な声が出ちゃうほどの恥ずかしさが、頭の中を埋め尽くした。
ほ、ほんとに先輩はどういうつもりだったんだろう? 無自覚だったのかな……それとも、間接キスになるって分かってて渡してきたとか?
も、もしわざとだとしたら……それはつまり……つまり――
「ま、まさか先輩――ウチと間接キスがしたかった……とか!?」
いや……まさかね? ないって。ないない。先輩がそんな大胆なこと……ないよね?
これは今日の部活で先輩に真意を聞くべきか……『先輩はウチと間接キスしたかったんすかぁ?』って冗談っぽくなら言えるかも……で、でももしそれで肯定されちゃったりしたら……そしたら、も、もしかして今度こそ間接キスすることになっちゃったり……!?
う、ウチはいったいどうすればいいの!?
うまくまとまらない思考のまま、ふらついた足取りで教室までたどり着く。
「あれ、なずちゃん顔真っ赤だけど、どしたの?」
「ふぇ!?」
席に座ったウチに、隣の席からそんな指摘が飛んできた。
しまった――と思った時にはもう遅く、
「あ、いや、これは……」
「むむ、この反応……まさかなずちゃん、ラブでロマンスなことがあったりして!?」
「えっ! それほんと常盤さん!」
「うそっ!? ちょ、詳しく教えてよ、なずな!」
隣だけでなく、前からも後ろからも興味津々な様子の友達が食い付いてきた。
「ち、ちがっ、こ、これはそのっ」
必死に否定しようとしたけど、三人とも聞く耳を持ってはくれない。どうもウチに何かあったという前提でしか話をするつもりはないようだ。やっぱり、女子ってそーゆー話題が大好物なんだな……まぁ、ウチも女子なんだけど。
結局、残り僅かな昼休みでは足りなくて、三人を誤魔化すのに放課後の部活直前まで時間がかかってしまったのであった。ウチがこんな恥ずかしい思いをする羽目になるだなんて……せ、先輩があんなことするから……っ。
ううぅ……せ、先輩のバカぁ――っ!
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