ヒロインに転生したけど地味に生きたい

さといち

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朝、学園に着いた私は早速抵抗魔法について殿下に話をすると、

どうやらすでにお兄様から連絡があったらしく、

今日のお昼の休憩時間にでも魔法を掛け直そうということになった。

流石お兄様、仕事が早い。

私が朝食を食べている時にでも連絡を済ませたのだろう。




そういえば、エリアナさんは…と思って教室を見渡すものの、まだ来ていないようだった。


何時もなら早い時間に来ていて殿下に言い寄ってたりしているのに…


まあ、きっとただの遅刻だろう、とその時は思っていた。




お昼の時間になり、私たちは生徒会室にいる。

今、生徒会室ここには私と殿下の他に、宮廷魔術師の方と、ウェルミナもいる。


私に掛かっている魔法が効いていないかもしれない、ということで、

ウェルミナにも掛けてある抵抗魔法も大丈夫かどうか一緒に確認するらしい。




結果は、やはり弱まっているということだった。

でもウェルミナや殿下の方は何も問題なかったという。


この差は一体何なのか。


魔術師の方に話を聞くと、どうやら殿下やウェルミナよりも、私の方に頻繁に呪力が掛けられているらしく、

その度に抵抗魔法が発動し、それが何度も続いていくうちに魔法が疲弊してしまったのではないか、ということだ。


魔法が疲弊って…そんなことがあるのか…


「魔法も万能ではないのですね…」


そう呟けば、残念だがその通りだ。と殿下は弛く笑った。


とりあえず、私には以前よりも強めに掛けてもらい、魔道具も強化していただいた。

ウェルミナや殿下も、念のためと同じように抵抗魔法を強化したようだった。



これで一応は安心だと油断していたのかもしれない。






異変は生徒会業務が終わり、これから帰ろうとした時に起こった。








ドゴォーーン!!



「「「!!??」」」


いきなり学園全体が揺れたような地響きがしたと思ったら、

瞬間、生徒会室の扉がスパーン!!と開かれた



「皆、無事か!?」


バタバタと慌てて生徒会室の扉を開け入ってきたグランツアー先生が、

焦った表情で荒く息を乱している。

「先生?急にどうしたのですか?」


今生徒会室にいるのは殿下と、ウェルミナ、そして私の3人だけだ。


書記と会計である2人…ケイン様とフレイ様は先に帰っていた。


「君たち3人だけか?あとの2人は?」


「ちょうど先程帰りました。」


「くっ、…無事ならいいが…」



大きな地響き、

何時も冷静な先生がこんなに取り乱すほど、

尋常では無いことが起きているのは間違いない。






次いだ先生の話に私達は驚くしかなかった。





「東の森で大多数の魔獣が現れたそうだ。しかも、その魔獣が街や王都まで足が延びているという」



「な!?…何故…急に…?」


「原因はまだわかっていない。ただ、その魔獣がこの学園付近にも発見されたと連絡があった」


「…!!ケイン様とフレイ様は…!?」


そうだ、学園付近ということは、帰宅途中で魔獣に襲われている可能性がある。


「……、大丈夫…とは保証できないだろうな…」


そんな…と落ち込む私達に、先生は申し訳なさそうに表情を歪めた。



「先程の地響きで、もしや生徒会君たちが襲われてやいないかと思ったんだが…」


3人君たちだけでも無事で良かった。

そう言う先生に、何とも言えない顔になる。


今、宮廷魔術師や騎士団が総出で魔獣の討伐に向かっているとのこと。


先生は、このまま外に出るのは危険だから、とりあえずこの生徒会室に待機するようにと指示を出すと、

自分は先程の地響きの事もあるし、学園内を見回りに行くと言って教室を出て行く。 




ケイン様やフレイ様もそうだけど、アマリアや、他のクラスメイト達、…それにお兄様達家族は無事なのだろうか。



まるでファンタジーのような展開になっていることに不思議に思いつつも、皆の安否の方が気にかかる。


ウェルミナも同じ事を考えていたのだろう、私達はお互いに顔を見合せ、自然に二人で寄り添っていた。


「皆の無事を祈ろう」

殿下はそう言って私達を励ます。

さっき先生が出ていこうとした時に、自分も様子を見に行きたかったに違いない。

殿下は行こうとして私達を振り返り、そのまま残ることに決めた。

私とウェルミナの女二人でだけで残すのは心配になったのだろう。


殿下の誠実さ、優しさがよくわかる。



そんな殿下だからこそ、私とウェルミナは自然にお礼の言葉を紡いだ。







それからどれくらい時間がたっただろうか、グランツアー先生が戻って来た。


他の先生方も一緒に見回っていたらしい。


確認したところ、学園内に魔獣はおらず、先程の地響きは騎士達の魔獣との戦闘による衝撃波だったということだそうだ。


衝撃波であれほどの地響き…相当激しい戦闘に違いない。

余程強大な魔獣相手だったのだろうか。


とりあえず、一旦は魔獣は収束したという。だが…と先生は殿下に視線を合わし…


「…殿下、一つ聞きたい事があります」


先生は私とウェルミナを一瞥し、また殿下に視線をもどした。


「…何だ?では言えないのか?」


「いえ…エリアナ嬢の事なんですが…」


エリアナという名にヒクリと殿下の顔が歪む。


「エリアナ嬢の話なら、二人が聞いても問題ない。」



だから話してみろ、と殿下は言う。

確かに、彼女に関して言うなら、私達は聞く権利はあるだろう。


そう思ってウェルミナを見れば、やはり同意らしく、私達はお互いに頷きあった。



「私達からも、聞かせて下さい。グランツアー先生」




少し思案したあと、先生は私の顔を見て、得心したようにそうだな。と言った。


「確かに、ユリーナ嬢も無関係なことではないか。それに、君たち二人は高位の出だったな。」

ならば大丈夫だろう、と話を続ける



「まずは、単刀直入にお聞きします。殿下、貴方は陛下から密命でエリアナ嬢の監察を請け負ってますね?」


「「!」」


「…それで?」


驚く私達を他所に、殿下は特に表情が変わる事もなく話を促す。


「彼女は……聖女ですか?」

「…いや、まだ確定はできないが、私は違うと考えている。」


「…それではおかしいですね…」


「何が言いたい」


「いえ、討伐していた騎士団の方から連絡があったのですが、
エリアナ嬢がいきなり現れて、自分は聖女だと。
そしてその場で光魔法を使い魔獣を浄化させたらしいのです」



「「「!?」」」


「それは本当の話か?」


「ええ、目撃者も多数いるようで、間違いないかと。ただ、聖女に関しては機密な事のため、とりあえずその場で箝口令をしいたようです」


「…そうか、」





その後、負傷者は数人出たものの、大事には至らなく済み、
学園から出ても大丈夫ということで、私達は解散となった。


殿下は陛下にエリアナさんについて話を聞きに行くからと王宮へ向かい、


私達はお互いの家の迎えが来るまで待機することになった。



「…ユリーナ、貴女はゲームのこと、どこまで知ってる?」


「私は、実はゲーム事態やったことなくて、前世の妹がやっていたのを見ていただけだから、ストーリーとかは全然。」


「…そうだったの」


じゃあ、その格好は?と聞いてくるウェルミナに、私は苦笑いして返す。

「ヒロインポジションなのはわかっていたから、なるべく地味に生きたいなって。あまり目立つのは好きじゃないから」


ヒロインの性格設定とかも無理だったからね。と言えば、

私もそう思う。とウェルミナも苦笑わらった。


でも…とウェルミナは続ける。

「私はゲームフルコンプしたのだけど、ヒロインは最後までユリーナ1人だけだったわ」


エリアナのようなキャラはモブですら居なかった筈だとウェルミナは言う。


「…私は別に、聖女になりたかった訳じゃないから、私自身は何とも思わない。他に聖女になる人がいるならそれでいいと思ってる。」

だけど、と言葉を切った所で生徒会室にお兄様達が来たので、迎えが来た事がわかり、


私達の話はそこで終わりそれぞれ帰路についた。



お兄様に心配されながら馬車の中で私は考える。

確かに聖女になりたかった訳じゃない。お兄様達も、例え魔法がなくなっても私は家族のままだと言ってくれたのだから。


だから他に聖女に成りうる人がいるならそれでいいと思うのは本心だ。

だけど、と思う。

それがエリアナさんだというなら話は別だ。

彼女は私の力を奪うだけでなく、殿下やウェルミナを呪って苦しめた。


そんな、人の心を自身の思い通りにしようと企む人間に、神聖でもある聖女になってほしくない。



彼女から何とか魔力を返してもらう事は出来ないだろうか…


でも。現状、きっと陛下も魔獣を浄化した事実でエリアナさんが聖女だと思っているかもしれない。


もしかしたら殿下が否定してくれるかもしれないが、大体にして結果が全てになってしまう事が多いものだ。




そしてその不安は確実のものとなってしまった。



翌日、エリアナさんが聖女であるとして殿下の婚約者に決定したという情報が流れたのだった。




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