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プロローグ 〜死んじゃって異世界〜
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今日は俺にとって忘れられない大切な日になるはず……だった……
大学を卒業して三年が経つが、社会人になると時が経つのが早い気がする。生まれて一度も彼女がいなかった俺にも、一年前に会社の同僚で同い年の彼女ができていた。
今日は付き合ってちょうど一年。俺は仕事終わりに彼女をレストランに呼び出し、プロポーズをする計画を実行しようと決心していた。
デスクワークにも慣れたもので気が付けば時間は午後五時をまわっていた。彼女には午後七時に駅前で落ち合う予定で、そこから一緒にレストランに行くつもりだ。
会社の自分の机を綺麗に片付けてカバンの中身をチェック。
「指輪は入っているな。よし」
そう、この日の為に用意した彼女に渡す最終兵器だ。これを渡すのと渡さないのとじゃプロポーズの成功率が段違いだと思う。
待ち合わせの時間までまだ余裕があるが、遅れて行くのは絶対に良くないので、急いで会社を出て駅前へ向かった。
思いのほか早く着きすぎてしまい、帰宅ラッシュの駅前で空いているベンチを見つけて座り込む。流石に一時間以上早く着いてしまうと暇で、彼女との一年を振り返ろうと思い携帯を取り出した。
携帯の写真フォルダを開き、彼女との思い出を一枚一枚見ていく。
二人で海水浴に行った写真や、夏祭りに行った写真、動物園に行った時の写真もあり、時系列通り思い出に浸りながら見ていった。
写真を見ていくと彼女が俺とデートに行く時に、必ず違う髪型にしていることに今頃気がついた。
こんなにも毎回違う髪型にしていたのに、その場で気付いてやれなかった自分を殴りたくなってしまい、同時に今日プロポーズしても良いのだろうかという考えまで頭に浮かんでしまった。
プロポーズの言葉はあらかじめ考えておいたが、弱気になったせいか頭から消え去っており、少し不安になってきた。
思い出すのに時間がかかりそうだったのでとりあえず携帯の時間を見た。
彼女が来るまで体感でもあと三十分はあるかと思い時間を見るとーー
携帯の時間は午後五時四十分。何故か俺が駅に着いた時の時刻を示していた。
最悪だ。携帯が壊れている、と思い、同時に今が待ち合わせ時間ギリギリだとまずい、プロポーズの言葉を思い出す時間が無い……と冷や汗をかきながら腕時計を確認した。
腕時計の時間も午後五時四十分、体より先に自分の頭が違和感という言葉を引っ張ってきた。
そしてその違和感はすぐに体でも感じることになった。
「ーーマジかよ」
あたりを見渡すと帰宅ラッシュ中の人達が家に帰りたくないと言わんばかりに、静止していた。文字通り音もなく静かに、そしてブレもなく止まっていた。
俺の人生でこんな出来事は体験した覚えがない。思わず立ち上がってしまった。何故か自分だけが動けることに恐怖を感じずにはいられない。
ふと脳裏をよぎる今日のイベント。そういえば今日は大切な日だ。彼女にプロポーズをしないと……彼女……?
そうだ、俺の彼女はどうなっている? 今彼女はどこにいる? 早く彼女を探さないと!
まずは電話で安否確認をしないといけない。急いで携帯の電話帳にある彼女の電話番号を見つけて、通話ボタンを連打した。よし、通話は出来るみたいだな。右耳に電話をあて、コール音が二回なった。
またしても違和感を感じた。おかしい。コール音は二回鳴り、何故か左耳から彼女の携帯の着信音が聞こえる。正確には俺の後方から着信音が聞こえてくる。だが、彼女が近くまで来ているという安心感から体が軽くなった気がして、俺はすぐに後方を振り返ろうとした。
「……ごめんね……」
左耳からは確かに何十回何百回も聞いてきた、聞き間違えるはずもない彼女の声で囁くように、そして泣いているのか、震えているような声でそんな一言が聞こえた。
一瞬だった気がする。振り返る間もなく体に激痛が走り、四肢が引き裂かれた感覚や心臓を貫かれた感覚があったがそれもまた一瞬。何が起こったのかわからないまま俺の体は崩れ落ちた。
大学を卒業して三年が経つが、社会人になると時が経つのが早い気がする。生まれて一度も彼女がいなかった俺にも、一年前に会社の同僚で同い年の彼女ができていた。
今日は付き合ってちょうど一年。俺は仕事終わりに彼女をレストランに呼び出し、プロポーズをする計画を実行しようと決心していた。
デスクワークにも慣れたもので気が付けば時間は午後五時をまわっていた。彼女には午後七時に駅前で落ち合う予定で、そこから一緒にレストランに行くつもりだ。
会社の自分の机を綺麗に片付けてカバンの中身をチェック。
「指輪は入っているな。よし」
そう、この日の為に用意した彼女に渡す最終兵器だ。これを渡すのと渡さないのとじゃプロポーズの成功率が段違いだと思う。
待ち合わせの時間までまだ余裕があるが、遅れて行くのは絶対に良くないので、急いで会社を出て駅前へ向かった。
思いのほか早く着きすぎてしまい、帰宅ラッシュの駅前で空いているベンチを見つけて座り込む。流石に一時間以上早く着いてしまうと暇で、彼女との一年を振り返ろうと思い携帯を取り出した。
携帯の写真フォルダを開き、彼女との思い出を一枚一枚見ていく。
二人で海水浴に行った写真や、夏祭りに行った写真、動物園に行った時の写真もあり、時系列通り思い出に浸りながら見ていった。
写真を見ていくと彼女が俺とデートに行く時に、必ず違う髪型にしていることに今頃気がついた。
こんなにも毎回違う髪型にしていたのに、その場で気付いてやれなかった自分を殴りたくなってしまい、同時に今日プロポーズしても良いのだろうかという考えまで頭に浮かんでしまった。
プロポーズの言葉はあらかじめ考えておいたが、弱気になったせいか頭から消え去っており、少し不安になってきた。
思い出すのに時間がかかりそうだったのでとりあえず携帯の時間を見た。
彼女が来るまで体感でもあと三十分はあるかと思い時間を見るとーー
携帯の時間は午後五時四十分。何故か俺が駅に着いた時の時刻を示していた。
最悪だ。携帯が壊れている、と思い、同時に今が待ち合わせ時間ギリギリだとまずい、プロポーズの言葉を思い出す時間が無い……と冷や汗をかきながら腕時計を確認した。
腕時計の時間も午後五時四十分、体より先に自分の頭が違和感という言葉を引っ張ってきた。
そしてその違和感はすぐに体でも感じることになった。
「ーーマジかよ」
あたりを見渡すと帰宅ラッシュ中の人達が家に帰りたくないと言わんばかりに、静止していた。文字通り音もなく静かに、そしてブレもなく止まっていた。
俺の人生でこんな出来事は体験した覚えがない。思わず立ち上がってしまった。何故か自分だけが動けることに恐怖を感じずにはいられない。
ふと脳裏をよぎる今日のイベント。そういえば今日は大切な日だ。彼女にプロポーズをしないと……彼女……?
そうだ、俺の彼女はどうなっている? 今彼女はどこにいる? 早く彼女を探さないと!
まずは電話で安否確認をしないといけない。急いで携帯の電話帳にある彼女の電話番号を見つけて、通話ボタンを連打した。よし、通話は出来るみたいだな。右耳に電話をあて、コール音が二回なった。
またしても違和感を感じた。おかしい。コール音は二回鳴り、何故か左耳から彼女の携帯の着信音が聞こえる。正確には俺の後方から着信音が聞こえてくる。だが、彼女が近くまで来ているという安心感から体が軽くなった気がして、俺はすぐに後方を振り返ろうとした。
「……ごめんね……」
左耳からは確かに何十回何百回も聞いてきた、聞き間違えるはずもない彼女の声で囁くように、そして泣いているのか、震えているような声でそんな一言が聞こえた。
一瞬だった気がする。振り返る間もなく体に激痛が走り、四肢が引き裂かれた感覚や心臓を貫かれた感覚があったがそれもまた一瞬。何が起こったのかわからないまま俺の体は崩れ落ちた。
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