転生者、月と魔法とプロポーズ

Rio

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第一章 魔法士学校編

第一話 プリンみたいです。

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 ーー何か聞こえる。確かに聞こえる。それに体を揺さぶられている気がする。

「彼方さん、起きてくださーい。聞いてますかー彼方さん?」

 女性の声がする。若い女性の声だ。彼女の声ではないし、お袋の声でもない。しかし女性との接点が彼女とお袋だけだなんて俺の人生どうなってんだよ。

「鼻と口をおさえて呼吸できないようにしたら起きてくれるかな」
「おっ、起きてます起きてます起きましたーっ!」

 可愛らしい女性の声でとんでもないことを言うもんだから、死の危機を察知して体が思わず勝手に起き上がっていた。

 俺の目の前にいたのは予想はしていたが女性だった。そして予想していなかったことに、その女性、いやその女の子はあまりにも可愛らしく、どこか懐かしさすら感じた。

 身長は160センチくらいだろうか。肩までかかる綺麗な銀色の髪で、まつ毛は長く、大きな目、小さな唇にすらっとした体。百点といっても過言ではないだろう。俺の彼女の方が上だけどな。

 だがそんなことはどうでもいいと思えるくらいの衝撃が目に飛び込んできた。この女、服を着ていない……だと……?

「あの……すみません、どうして服を着ていないのでしょうか? 目のやり場に困るのですが……」

「愚問ですね! 服が無いからに決まっているじゃないですか!」

 あまりにも堂々と、何故か自慢げに言うので、こちらがおかしいのではないかという錯覚に陥りそうだった。

 しかしながら今までの人生、大学受験の為に中学と高校の六年間を勉強に捧げ、しかも大学入学後も勉強そしてバイトの日々を送っていた俺には、女の子には無縁で、ましてや女の子の裸なんて見たことがなかったのでどうしていいのかわからない。困ったな……

 ちなみに彼女の裸はもちろん、キスすらしていないヘタれですが何か?

「そうですかぁ彼方さん。彼方さんは女の子の裸を見たことがないくらい勉強漬けだったんですね!」

「初めて女の子の裸を見た感想をどうぞ!」

「柔らかそうでプリンみたいです。ごちそうさまでした」
 ーーって違う違う、そうじゃない。この女の子、今俺の心の中を読んでいなかったか? それとも俺が声に出していたのか?

「声に出していませんよ。私が彼方さんの心の中を読んでいるんです!」

 またしても堂々とこの女の子は得意げにサラッと恐ろしい宣言をしてきた。

「周りを見渡してみてください!」

 不意に女の子に言われたとおりに辺りを見渡すとそこには、と言うより俺たちがいる場所はあまりにも窮屈で何もなかった。

 床は六畳程の広さしかなく、ドアは女の子の後ろに一箇所、上に目をやると天井はなく、先の見えない永遠に続いているような暗闇が広がっていた。

 この状況は……もしかしたら誰かに監禁されている? これは事件なのでは? という考えに至り、女の子に尋ねようとしたが、みたこともないたわわな物体が二つ見えてしまい、思わず目線を下に落としてしまった。

 今俺が取るべき行動はーー
 1.女の子が主犯かもしれないので自分の服を差し出して刺激しないようにする

 2.全裸だし被害者の可能性があるから自分の服を着させて事情を聞く

 どちらにせよ服を着てもらわないことには話が進まない。

「俺の上着で良ければ着てください」
 スーツを着ていたので女の子に羽織らせる。身長差はおそらく10センチ以上はあるだろうし、上だけでも大事なところは隠せるだろう。

「ありがとうございます! 彼方さんって優しいんですね。でもこれはこれでいやらしくないですかぁ? チラリズムってやつですかぁ?」

 上着を着てくれたおかげで直視はできるようになったが、いやらしくないかと言われるといやらしい気がする。口に出してくれたせいで余計に意識してしまう。

「と、とにかく、まずはあなたの名前を教えてください」

「私はルナっていいます! 十八歳です! 可愛いでしょう?」

 名前しか聞いてないのに年齢まで教えてくれた上に、変な質問までしてきた。可愛いけど。

「口に出さなくても聞こえますよ、ありがとうございます!」

 そういえば心を読まれているんだっけ。迂闊に考え事が出来ない、恥ずかしい。ていうか何で心が読めるんだよ。バケモノか?

「失礼ですね、私はバケモノじゃなくて神様ですよ、神様!」

 子供のようなむくれ方をしたまま、子供がつくような嘘を言ってきた。十八歳にもなって。

 だが心が読める以上、この女の子が言っている嘘も信憑性が増してきている。

「では、俺たちはどうして二人でこんな狭い部屋にいるのでしょうか?」

「その質問を答える前に、私からも一つ彼方さんに聞いておきたいことがあります」

 この状況を打開できる質問をしたつもりだったが、目の前の女の子、ルナさんが逆に質問をしてきた。

「彼方さん、あなたは現世で彼女にプロポーズをする直前に殺されて異世界に来たことを覚えていますか?」

「ーーえ?」

 思わず口から出た一文字。ルナさんは何を言っているのだろうか? 冗談を言う子だからなぁと、そう思いたいのだが、ずっと笑顔だったルナさんはこの時だけは真面目な顔をしていた。

「やはり覚えてないですか。わかりました……では目を瞑って下さい!」

 俺の心の中を読んだのか、ルナさんの真面目だった顔に笑顔が戻り、気のせいか少し照れているような気がする。顔もあからんでいる。

「目を瞑らせて何をするつもりですか?」

「そんな事はお気になさらず、早く目を閉じて下さい!」

 ルナさんはすごく楽しそうである。だが怪しい。怖い。誰か助けてくれ。

「何を怖がっているんですか? 目を瞑るだけですそれだけ! それだけであなたの望む展開になりますから!」

「……分かりました、この状況を打開出来るのなら協力します」

 とりあえず今までのやり取りで悪い人ではなさそうだと思い、この自称神様の指示に従ってみることにした。

 ーー目を閉じる。



 そういえば何秒閉じればいいのだろうか。聞こうと口を開こうとした瞬間、唇に柔らかいものがあたっている感触がした。

 思わず目を開けてしまい、その目に飛び込んできた光景は生涯忘れる事はできないだろう。

 会ったばかりの自称神様のルナさんが俺の顔の前、ゼロ距離まで小さい顔を近づけてていた。しかしゼロ距離なのは顔ではなく俺とルナさんの唇だった。




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