転生者、月と魔法とプロポーズ

Rio

文字の大きさ
3 / 19
第一章 魔法士学校編

第二話 ファーストキス

しおりを挟む
 いったいどのくらいの時間が経ったのだろうか、俺はただただ呆然としていた。

 キスをされたのは一瞬だったが、長いように感じた。はじめてのチュウというやつか。しかし思った以上に破壊力がある。そう、例えるなら頭を誰かに後ろから石で殴られたようなーー

「いってぇぇぇぇぇーーーー!!!!」

 頭が割れるように痛い! 痛すぎる! そして頭の中の脳に直接ヤカンの沸騰したお湯を注ぎ込まれているような、なんとも形容し難い痛みに悶えるしかない。

 一方、悶え苦しんでいる俺の姿を見ながら、自称神様のルナさんはというと

「彼方さん彼方さん。キス……してしまいましたね! どうですかはじめてのチュウは? 何か感想とかないんですかぁ? どんな味だったとか色々あるでしょう?」

 この神様は苦痛で悶えている俺を目の前にして何を言っているのだろうか? 殴ってやりたい。ファーストキスの味なんて激痛でそれどころではない。

「大丈夫です、痛みはすぐに治りますよ! 頭の中もスゥーっとなってきたでしょ?」

 そう言われた途端に不思議と痛みは引いてきて、頭の中もスッキリとした気になってきた。

 頭が冷静さを取り戻したら、今度は人生初の体験がフラッシュバックしてきた。自称神様とのファーストキス……

 思い出したら罪悪感でいっぱいになってしまった。そもそも俺には彼女がいる。事故とはいえ、不意打ちだったとはいえ、先程の体験が紛れもなくファーストキスである。

「……ごめん……俺、最低だ……」

 彼女への罪悪感が言葉になって出てきてしまった。我ながら情けない。しかも彼女とは手を握ったことすらないのに、こんな得体の知れない神様とだなんて……

「彼方さん、そんなにガッカリしないでくださいよぉ! 私だって傷つくんですよ! それに……私だって一応初めてだったんですよ!」

 ルナさんも初めてだったらしい。顔を真っ赤にして恥ずかしがりながら言う自称神様の姿を見て、思わず一瞬だけドキッとしてしまった。

「……どうして突然……その……したんですか?」

「キスの事ですか? それはですねぇ……私を彼方さんの中に注ぎ込む為です」

 すごくいやらしい言い方をしてくるルナさんに対して、なんて言ったらいいのか言葉を選んでいると、すぐに言葉を付け足してくれた。

「正確には私の記憶や知識を彼方さんに分け与える為にキスをして注ぎ込んだって感じです」

 言っている意味が分からないと言いたい。言いたいのだが、どうやら本当に何かを注ぎ込まれているらしい。何故かルナさんの言っている意味を理解できてしまっている。

「記憶や知識を与えられた事は理解できました。ですがその……キ、キスでないとダメだったのでしょうか?」

 そう言うとルナさんは、体をモジモジさせながら照れくさそうに

「私だって誰とでもキスするわけじゃないですよぉ! その……彼方さんなら……いえ、なんでもないです」

 何か小声で言っていたが聞き取れなかった。多分どうでもいい事だろう、多分。

「話を戻しますね! 彼方さんには記憶と知識を与えました。今から彼方さんには魔法士を目指してもらいます!」

 魔法士という言葉が理解できているのはやはり知識を注ぎ込まれているということだろう。どうやら魔法士とは資格の一種らしい。学校に行って勉強して資格を取れば魔法士になれる。なるほど、頭が勝手に理解していっている。すごいなこれ。

「なるほど分かりましたよ。簡単に魔法士になってもらう為に試験や魔法の知識を注ぎ込んでくれたのですね」

「全然違います、何を言っているんですか彼方さん。そんな事をしたら不正とみなされて死刑になりますよ」

 違うのかよ。ドヤ顔で言ったのに恥ずかしい。て言うか試験の不正が死刑ってどんだけ罪重いんだよ。あ、待って、試験で死刑……プフッ

「ーーあー、三十点です彼方さん。良かったですね! これが試験なら本当に死刑でしたね!」

「……うるさい」

 そういえば心を読めるのを忘れていた。しかし、正直心を読まれるのが一番厄介だ。今みたいに渾身のギャグを頭の中で考えるだけでルナさんには筒抜けになるからなぁ。

「今のが渾身のギャグですか……彼方さん、私彼方さんが魔法士になれるのか不安になってきました」

 すごくバカにされている気がする。だが学生時代は神童と呼ばれていた俺だ、テストに関してはどんな問題だろうと自信はある。

 それに資格だって実際何個か持っている。ほとんど使っていないゴミのような資格ばっかりだが……

「ーー申し訳ないのですが、魔法士試験は彼方さんの想像しているような試験ではなく、魔法の実技試験ですし、下手したら死にます!」

 ……なるほど、よし決めた。ここから一歩も動かないぞ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の取材中、異世界の大地の女神と接触する。 そのまま半ば強制的に異世界へと転生させられた彼は、惑星そのものと同化し、“星骸の主”として不死の存在へと変貌した。 だが女神から与えられた使命は、この世界の生命を滅ぼし、星を「リセット」すること。 凛人はその命令を、拒否する。 不死であっても無敵ではない。 戦いでは英雄王に殴り倒される始末。しかし一つ選択を誤れば国が滅びる危うい存在。 それでも彼は、星を守るために戦う道を選んだ。 女神の使命を「絶対拒否」する不死者と、裏ボス級の従者たち。 これは、世界を滅ぼさず、統治することを選んだ男の英雄譚である。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...