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第一章 魔法士学校編
第四話 はじめてのおつかい
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ーー狭い部屋を出てまだ十秒くらいしか経っていないのだが……
「暑い……暑すぎて死ぬ……」
外が死ぬほど暑い。いや実際死にはしないと思うのだが、死ぬほど暑いと表現するしかないくらいに俺の頭はまわっていないのか、それとも語彙力がないのか。
体感では四十度以上はある気がする。遠くを見ると地面の上にモヤモヤとした蜃気楼のようなものも見える。まるで砂漠にでもいるかのようだった。
汗はとっくにかいているし止まる気配もない。人体の五十パーセントから六十パーセントは水でできていると聞いたことがある。そして二十パーセントの水を失うと死に至るらしい。
死ぬ程暑いという表現はあながち間違ってはいないということか。実際死に近づいているのだから。
いやそれどころではない。何か水分を補給できるものを確保しなくては……
しばらく歩きながら辺りを見回していると、ちょうど売店を発見した。発見したのだが……
「……遠い」
遠くにあると思われる売店はそれはそれは小さく見えた。どれだけ歩けばいいのか。
十分程歩いて到着。そしてこの売店、何故だが分からないがすごく違和感を感じる。綺麗に並べられた白くて丸いものが、まるで俺を見ているかのようにじっと動かない。まさかこれは……
「あ、いらっしゃいませお客様! まんじゅう何個欲しいんですか?」
「まんじゅう専門店かよ!」
おっといけない、ツッコミをしている余裕はない。本当は飲み物が欲しかったが、とりあえずまんじゅうを買って一度ルナさんのところに戻ろう。このままだと本当に倒れそうだ。
「……に、二個下さい……」
「二個ですね、かしこまりました!」
しかしこの店員さん、元気な娘だな。この暑さだぞ、何故耐えられるのだろうか。
見事なまでの接客スマイルが眩しい。体感温度が五度くらい上がった気がする。
店員の女の子がまんじゅう二つを袋に入れて最高の笑顔で渡してきた。
「お金はこれで……」
恐る恐るルナさんお手製の偽造通貨である金色のお金を店員に渡す。
すると、何やら店員さんはまじまじとお金を見つめること数秒、驚いた顔をしてこう言ってきた。
「お客様! 大変失礼いたしました、まさか帝国貴族のお方だったとは! まんじゅう二個とは言わず全部もらってください!!」
「帝国貴族?」
俺貴族だったの? 死んで生き返ったら平社員が貴族に出世したって、何階級昇級したんだよ。
それとも見た目が貴族に見えたのだろうか。そうだとしたら悪くない気分だが、白シャツに黒のズボンの今にも倒れそうな奴が貴族に見えるって、この国の貴族は大丈夫なのか?
「このお金ってそんなに価値があるのですか?」
「とんでもない、小国を一個まるまる買えるくらいの価値はありますよ。この金貨は真ん中に太陽の刻印が刻まれています。信仰対象である太陽は帝国の象徴であり、これは国王様や帝国貴族の方しか持つことは許されないのです!」
「ーーってそんなことはご存知ですよね、申し訳ございませんっ!!」
早口で喋る店員の言葉に耳を傾けても全然頭に入ってこなかったが、ひとつだけ聞き取れたのは小国が買えるくらいの価値がこの金貨にあるということだ。
なんだか恐ろしいことになってきそうな予感がしたので、とりあえずルナさんのところに帰ることにした。
まんじゅうは全て持って帰っていいと言われたが、気が引けるので二個だけ頂いていこう。
「ありがとうございました。また来ます」
「また来てください、今後ともごひいきに!」
店員さんと別れたあと、来た道を戻ること五分、ふとルナさんにパシリにされている事を思い出した。
そういえば死にかけのこの状況も、金貨のことも全部ルナさんのせいなんだよな。
ルナさんの家の前でまんじゅうを二個とも食べてやろう、そうしよう。
さらに五分後、家の前に到着。そして着いたと同時に持っていたまんじゅうを一口食べてみた。
「うまい……」
うますぎる。同時に涙が出てきた。食べ物で感動して涙が出たのは生まれて初めてだった。
一個目を食べ終わり二個目を食べようとしたが……
涙が止まらない。それどころか滝の様に出てくる。いくらなんでも異世界での初めての食べ物とはいえ、まんじゅうくらいで感動してここまで涙が出てくるはずがない。このままでは脱水で死んでしまう。
ルナさんの分のまんじゅうを食べるのを諦め、家の扉を開けた。
「ルナざぁぁぁん、だだいばぁぁああぁ!!」
「あっ、彼方さんおかえりなさい。意外と早かったんですーーって何で泣いてるんですか? もしかして私のところに早く帰りたくて、寂しくて泣きながら帰ってきたんですかぁ?」
「もう、可愛いですねぇ! よしよし、ハグしてあげましょう! こちらへどうぞ!」
帰った途端に滝の涙を流す俺に対し、何の不信感も抱かない神様の、ふざけた発言にツッコミを入れようと思ったが、そんな気力も体力も水分もなく、神様のたわわな二つの果実を枕の代わりにするように倒れ込み、そのまま意識を失ったーー
「暑い……暑すぎて死ぬ……」
外が死ぬほど暑い。いや実際死にはしないと思うのだが、死ぬほど暑いと表現するしかないくらいに俺の頭はまわっていないのか、それとも語彙力がないのか。
体感では四十度以上はある気がする。遠くを見ると地面の上にモヤモヤとした蜃気楼のようなものも見える。まるで砂漠にでもいるかのようだった。
汗はとっくにかいているし止まる気配もない。人体の五十パーセントから六十パーセントは水でできていると聞いたことがある。そして二十パーセントの水を失うと死に至るらしい。
死ぬ程暑いという表現はあながち間違ってはいないということか。実際死に近づいているのだから。
いやそれどころではない。何か水分を補給できるものを確保しなくては……
しばらく歩きながら辺りを見回していると、ちょうど売店を発見した。発見したのだが……
「……遠い」
遠くにあると思われる売店はそれはそれは小さく見えた。どれだけ歩けばいいのか。
十分程歩いて到着。そしてこの売店、何故だが分からないがすごく違和感を感じる。綺麗に並べられた白くて丸いものが、まるで俺を見ているかのようにじっと動かない。まさかこれは……
「あ、いらっしゃいませお客様! まんじゅう何個欲しいんですか?」
「まんじゅう専門店かよ!」
おっといけない、ツッコミをしている余裕はない。本当は飲み物が欲しかったが、とりあえずまんじゅうを買って一度ルナさんのところに戻ろう。このままだと本当に倒れそうだ。
「……に、二個下さい……」
「二個ですね、かしこまりました!」
しかしこの店員さん、元気な娘だな。この暑さだぞ、何故耐えられるのだろうか。
見事なまでの接客スマイルが眩しい。体感温度が五度くらい上がった気がする。
店員の女の子がまんじゅう二つを袋に入れて最高の笑顔で渡してきた。
「お金はこれで……」
恐る恐るルナさんお手製の偽造通貨である金色のお金を店員に渡す。
すると、何やら店員さんはまじまじとお金を見つめること数秒、驚いた顔をしてこう言ってきた。
「お客様! 大変失礼いたしました、まさか帝国貴族のお方だったとは! まんじゅう二個とは言わず全部もらってください!!」
「帝国貴族?」
俺貴族だったの? 死んで生き返ったら平社員が貴族に出世したって、何階級昇級したんだよ。
それとも見た目が貴族に見えたのだろうか。そうだとしたら悪くない気分だが、白シャツに黒のズボンの今にも倒れそうな奴が貴族に見えるって、この国の貴族は大丈夫なのか?
「このお金ってそんなに価値があるのですか?」
「とんでもない、小国を一個まるまる買えるくらいの価値はありますよ。この金貨は真ん中に太陽の刻印が刻まれています。信仰対象である太陽は帝国の象徴であり、これは国王様や帝国貴族の方しか持つことは許されないのです!」
「ーーってそんなことはご存知ですよね、申し訳ございませんっ!!」
早口で喋る店員の言葉に耳を傾けても全然頭に入ってこなかったが、ひとつだけ聞き取れたのは小国が買えるくらいの価値がこの金貨にあるということだ。
なんだか恐ろしいことになってきそうな予感がしたので、とりあえずルナさんのところに帰ることにした。
まんじゅうは全て持って帰っていいと言われたが、気が引けるので二個だけ頂いていこう。
「ありがとうございました。また来ます」
「また来てください、今後ともごひいきに!」
店員さんと別れたあと、来た道を戻ること五分、ふとルナさんにパシリにされている事を思い出した。
そういえば死にかけのこの状況も、金貨のことも全部ルナさんのせいなんだよな。
ルナさんの家の前でまんじゅうを二個とも食べてやろう、そうしよう。
さらに五分後、家の前に到着。そして着いたと同時に持っていたまんじゅうを一口食べてみた。
「うまい……」
うますぎる。同時に涙が出てきた。食べ物で感動して涙が出たのは生まれて初めてだった。
一個目を食べ終わり二個目を食べようとしたが……
涙が止まらない。それどころか滝の様に出てくる。いくらなんでも異世界での初めての食べ物とはいえ、まんじゅうくらいで感動してここまで涙が出てくるはずがない。このままでは脱水で死んでしまう。
ルナさんの分のまんじゅうを食べるのを諦め、家の扉を開けた。
「ルナざぁぁぁん、だだいばぁぁああぁ!!」
「あっ、彼方さんおかえりなさい。意外と早かったんですーーって何で泣いてるんですか? もしかして私のところに早く帰りたくて、寂しくて泣きながら帰ってきたんですかぁ?」
「もう、可愛いですねぇ! よしよし、ハグしてあげましょう! こちらへどうぞ!」
帰った途端に滝の涙を流す俺に対し、何の不信感も抱かない神様の、ふざけた発言にツッコミを入れようと思ったが、そんな気力も体力も水分もなく、神様のたわわな二つの果実を枕の代わりにするように倒れ込み、そのまま意識を失ったーー
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